025 石射太郎・高宕山・八良塚 [Dec 29, 2013]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

2013年のうちにもう一度山歩きに行きたかったが、昨年は雪が早くて12月20日過ぎには丹沢も奥多摩もアイゼン必携になってしまった。一昨年は冬至の日に三条の湯まで林道を歩いたのだが、ちょっと無理そう。冬場は軽アイゼンを持って行くけれど、ないと歩けないと最初から分かっていれば原則として回避である。

ならば房総である。いろいろ調べたら、鹿野山マザー牧場の奥、石射太郎山から高宕山にかけては富士山も望めるいい景色で、急登ありやせ尾根あり梯子・鎖場ありのスキルフルなコースであるらしい。電車・バスだと移動に時間がかかりすぎるので自動車利用で、高宕山からは八良塚(はちろうづか)を経由して戻る周回縦走コースを歩くことにした。

いずれも標高400mにも満たない低山で、縦走といっても大したことはないだろうと思っていたのだが、もちろんそんなことはなかったのである。

WEBに載っていた高宕第一トンネル前の駐車場へ。まだ朝8時だが、すでに1台先客がいる。この駐車場までは林道を2kmほど上ってくるので、道幅が狭いのではないかとちょっと心配したが、WEBで見るより広く問題はなかった。トンネルより先は車両通行止で、駐車スペースにはかなり余裕がある。

トンネルの右に石射太郎山への登山口がある。ここが急登という触れ込みだったが、それほどきつい坂ではなく、ゆっくり登れば息は切れない。登山道の脇を見ると垂直に削られた後がある。昔の石切り場である。関東大震災で被害を受けるまで、房総では鋸山と並ぶ採石場だったとのことである。

もともと山の名前も「石を射た」という意味で、昔から採石は盛んだったようである。遠くから見ると、この山だけは中腹が裸の石でよく目立つ。鋸山は南面すべて石切り場の跡という独特の風景であるが、おそらく港までの輸送の遠近で鋸山の方が規模が大きくなったのだろう。

登山口から20分も登るとマザー牧場からの道と合流し、間もなく山頂である。丹沢や奥多摩に行き慣れていると、この「あっさり感」がたまらなく楽しい。本当の山頂は危ないので立入禁止の柵がある。頂上直下はちょっとした広場になっていてベンチが置かれている。前面が開けていて、山並みが幾重にも連なっている。

ベンチの横には廃屋がある。窓ガラスが割れて、少しだけ残っている。もう何十年も放置されているようだ。中を除くと押入れのようなスペースも残っているから、倉庫ではなくおそらく売店のような建物だったのではないだろうか。景色がいいので昔はずいぶんと人が集まったに違いない。(その後WEBを調べたところ、サルを餌付けするための建物だったらしいが、詳細は不明である。)

しばらく展望を楽しんだ後、高宕山に向かう。この道は「関東ふれあいの道」として、環境省が指定した自然歩道であり、丹沢や奥多摩ともつながっている。自然歩道なので基本的にはなだらかな坂道なのだけれど、ところどころで石が露出している。それが霜解けでつるつるして、足下が大変すべりやすい。注意しながら先に進む。


最初の目標地、石射太郎(いしいたろう)山。頂上付近は立入禁止のようです。


高宕山へは「関東ふれあいの道」、基本的になだらかな起伏が続きます。

石射太郎山から自然歩道を一時間ほど。下が滑りやすいのと思ったより起伏があるので気を使ったが、まずまずのペースで高宕観音に到着。参道は長い石の階段である。左右を狛犬と、苔むした金剛力士の石像が守っている。あまり日が差さない森の中なので、ちょっと異様な雰囲気だ。

階段は標高差で7、80m近く登るのではないかと思うくらい長い。日陰のためと人があまり通らないためか、苔むして滑りそうである。その上に奥行きがあまりないので、足を全部乗せるのが困難である。ここは慎重に登らないと、滑ってケガでもしたら大変である。

と思っていたら、にぎやかなトレランの団体が何組かやってくる。狭いし滑りそうなので道を譲ると、当然のように追い抜いて行く。譲っているのだから当り前と思っているのだろうが、走るのは勝手なのだから、譲るのは当然という考えはいかがなものか。だいいち危ないと思うから譲るのだ。

いいペースで走っているのに、前が詰まってペースダウンするとつらいのは分かる。だからといって、追い抜き困難な道を走るのに自分が一番優先されると思う姿勢が腹立たしい。もともと登山道は走るためのものではない。次はわざとゆっくり歩いてやろうと思う。

高宕観音堂は切り立った岩の壁にへばりつくように建てられている。「立ち入らないでください」と書いてあるので外から見ると、中は天狗のお面や神具(仏具)などが置かれている。落書きもあるところをみると、入ってしまう人はいるようだ。お堂の前面からは、東京湾までの山並みが一望できる。

観音さまを抜けると、いよいよ高宕山である。WEB情報のとおり、梯子と鎖(ロープ)が出てくるが、それほどのことはない。ここまではトレランの連中は来ないので、静かでいい。西側は切り立った崖なので注意しなければならないが、注意しながら最後の梯子を上ると、頂上である。ここには雨乞いに使用されたという錆びた鉄の釜が置かれている。

腰を下ろすところもない狭い場所だが、展望はすばらしい。五合目の下まで雪が積もった富士山がきれいに見える。その右側には、山頂が白くなった丹沢山塊が見える。あの様子では、今日丹沢を歩くのは無理だったなあと改めて思った。左の方に薄く見えるのは伊豆大島だろうか。房総もこのあたりまで来ると伊豆大島まで意外と近い。

何しろ狭いので、10分ほど景観を楽しんで早々に梯子を下りた。時刻はまだ10時過ぎ。次の八良塚に向かう途中で小腹が空いてきたので、志組方面の表示のある分岐のベンチに座って、かにパンとコーヒーで軽くお昼にする。お昼の間に3組とすれ違った。トレラン組はもう来なかった。


苔むした石造りの阿形吽形が守る高宕観音の参道。同じく石でできた階段を延々と登ります。


高宕山からは、富士山や丹沢山塊がきれいに見えました。

関東ふれあいの道から八良塚(はちろうづか)への分岐に着いたのは11時半。まっすぐ進むと1kmほどで豊英(とよふさ)ダムとなるが、そこから駐車場に戻るのが超大回りとなる。八良塚への道は県民の森の管理で、ハイキングコースにもなっているので大丈夫だと思っていたのだが、案に相違して大変な道であった。

そもそも八良塚は、この一帯で最高の標高(それでも342mだが)なのである。加えて房総の山独特の急傾斜の連続であり、足下が石で滑る上に片側は切り立った崖というところもあった。50mくらい下まで一枚岩のつるつるトラバース道では手掛りが何もなく、あきらめて戻ろうかと思ったくらいである。

いまから振り返ると、ここの部分では誰とも会わなかったから、もし崖から落ちたら当分助けは期待できなかった。単独行のこわいところである。ああいう場合は潔く撤退して、時間をかけて遠回りすべきであった(後知恵だが、ロマンの森の日帰り入浴で時間をつぶしてバスを使えば、歩きは残り4kmくらいに圧縮できた)。

登り下りを2度ほどこなすと、標識に金つるべと書いてある休憩ベンチに着く。まだ分岐から1時間しか歩いていないのに、大変に神経を使って疲れた1時間だった。ここからの下り道はやっぱり足下が石でびびったが、先ほどとは違って鎖が張られていたので写真に撮る余裕があった。

すでに時刻は1時を回っている。8時スタートで4時間半予定のコースだが、休憩時間を入れてもコースタイムに近い。しかもまだ先は見えない。山の神というお社を過ぎ、何度目か分からない登り下りをなんとかがんばる。丹沢の下山よりもたくさん下っているような錯覚を覚えるほどである。

WEBでは208mピークという地点が目安となるのだが、どこだか分からないうちに急坂の下りとなる。どんどん下って、水音が聞こえてきた。もう沢が近い、登らなくてもいいという気がしてくると、ようやく林道との分岐点に出た。2時10分前になっていた。

展望のない登り下りをずっと続けていたせいで、思わず逆方向に進みそうになる。落ち着いて掲示板をよく見ると、駐車場へは下りてきた登山道から右方向である。北向きに歩いているとばかり思っていたのに、いつのまにか南に向かって歩いていたのである。

滑りやすいトラバースにせよ方向感覚を誤る登山道にせよ、標高の高い低いと山歩きの難易度はあまり関係ないんだなあと改めて感じた。低い房総の山だからといって簡単ということはないのである。そういえば、もう少し先の清澄山近くでは、高齢者のグループが道に迷って遭難騒ぎを起こしたことがある。

駐車場までの林道は、落石や倒木がいっぱいな上に路肩は深い谷底なので、車両通行止めである。素堀りのトンネルがあるなど結構手間をかけて作ってあるので、きっと森林作業の際には使うのだろうが、車を通す前には整備が必要なようである。林道を15分ほど歩いて駐車場に戻る。朝と違って、駐車場は一杯になっていた。


金つるべあたりの鎖場。傾斜がきつい上に足下が石で滑るので、ちょっとこわい。


車両通行止めの林道には、倒木や落石がいっぱい。

この日の経過
高宕第一トンネル駐車場 8:10
8:35 石射太郎山 8:50
9:40 高宕観音 9:45
9:55 高宕山 10:10
10:45 志組分岐(昼食) 11:05
11:30 八良塚分岐 11:30
11:50 八良塚 11:50
12:20 金つるべ 12:30
13:10 山の神 13:15
13:50 林道分岐 13:55
14:15 駐車場

[Jan 31, 2014]