030 三番金泉寺 [ Jul 26, 2015 ]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

極楽寺から三番金泉寺まで、遍路地図によると2.6km。本日1番の長丁場である。しかも炎天下、油断することはできない。幹線道路から離れて裏道を行くようだが、極楽寺を出たところから「四国のみち」の道しるべがあるのでそれほど迷うことはない。

しばらくは坂道を登って行く。両側が造成中の墓地になっており、立てられている幟(のぼ)りには「極楽霊園」と書いてある。何で極楽寺霊園じゃなくて極楽霊園なんだろうと思う。よく考えれば、古くから続いているお寺さんが、檀家以外のために墓地を提供するというのも妙な話である。あるいは極楽寺とは関係がないのかもしれない。まだほとんどが空き地で、整備されるのは先のようだ。

極楽霊園を過ぎると下り坂で、その坂をしばらく下ると住宅街を抜ける道と合流する。ここまでは多少木陰があったけれど、ここからはさえぎるものは何もない、炎天下の一本道である。午後2時過ぎのじりじりと音を立てるような日差しが、正面から容赦なく照り付ける。一番から十番くらいまで、吉野川を遡上するので進路はずっと西、この時間が最もきついのであった。

さすがにのどが渇いて、自動販売機のある日陰で一息入れる。この経路では、自動販売機は何台か登場するのだが、残念ながら座って休むところが出てこない。三番くらいで音を上げていたら、とても八十八は回れないということである。汗を拭いても、水分を補給したのでさらに汗が吹き出してきた。

汗を拭き拭き歩いていると、行く手に人工地盤の上を通る高架道路と、それと直角に交わる大きな通りにぶつかる。行き先標示はすぐには見つからないが、よく探すと右に曲がって高架下トンネルに向かう方向に、先ほどから続いている「四国のみち」の標識があった。帰ってから調べたら、トンネルの上を通っているのは高速への取り付け道路であった。

トンネルの中は日が当たらないし、風が吹き抜けてすごく涼しい。それまでずっと炎天下を歩いて来たので、生き返るような気持ちになった。トンネルをくぐると三番札所への案内が出て来る。もうすぐである。

信号を直進してしばらくすると、舗装道路から右に折れる細い道に「→金泉寺」の表示がある。その方向を見ると、田んぼの脇の畦道を通って行くようだ。道を覆って草が伸びているのは気になるが、これからたびたび登場するという「遍路道」であろう。まずは経験ということで、この道を歩いてみる。

舗装道路とちがって、足元が必ずしも平らでない。進むほどに草の伸びが激しくなっており、足の先が見えない。配水設備のような建物の脇を抜けて、林の中に続く階段を登ると、三番金泉寺の境内の横から入ることになる。この遍路道から入ると、山門をくぐらないで着いてしまうので注意が必要だ。

金泉寺への道は、この日一番の長丁場。西日が正面から激しく当たる中、黙々と西に向かう。

案内の通り遍路道を進むと、ちょっと草叢がうるさいです。

三番札所は亀光山金泉寺(きこうさん・こんせんじ)。亀光山の名前は、このお寺の大檀那で、伽藍の整備に多くの寄進をされた鎌倉時代の亀山天皇(南朝の祖である)のお名前をいただいたものという。また、二番極楽寺の項で触れたように、源義経がこの寺で一休みして屋島に向かったので、「弁慶の力石」など義経関係お約束の旧跡も境内にある。

極楽寺は山門を入ってから本堂まで、結構な距離(と階段)があったのだけれど、こちら金泉寺はコンパクトである。遍路道から入ってきた境内の中央に本堂が、東側に大師堂があり、西側に納経所がある。山門まで行くのが一番距離があるくらいで、疲れた体にはありがたいことであった。

この金泉寺で、初めて観光バスの団体遍路と遭遇した。それも2組続けてである。ちょうど私が遍路道から境内に入った時に、一組目の団体が手水場を使っているところだった。これはしばらく待つしかなさそうだと思って、本堂の向かいあたりに置かれているベンチで汗を拭きながら、境内に置かれている自動販売機で購入した午後2本目のペットボトルで一息入れた。

ところがこの遍路団体、引率者の指示にしたがってフルコースで読経を行うのであった。それこそ、三帰三竟十善戒から何から全部である。かなり待っても、まだ般若心経まで行かない。ここであせっても仕方がない。お手本を見せてもらっていると思ってベンチに座って終わるのを待った。本式にやると結構長い時間がかかるということを身を持って知ったのであった。

ようやく団体さんが大師堂に移動したので、本堂の前に移動してお札を納め、読経する。二番極楽寺で一通り読経して様子がつかめたので、開経偈、般若心経あたりを中心にやらせていただく。次は大師堂だが、読経フルコースの団体さんがまだ中にいる。どうやら読経は終わったようだが、室内装飾やら長寿祈願の黄金の井戸について説明が続いているようだった。

まだ時間がかかりそうだと思ったその時、山門から境内に二組目の団体さんが参入してきた。どうやら3、40人はいるようである。とっさに思ったのは、早く納経帳にご朱印をいただかないと、すごく待つことになるのではないかということだった。大師堂のお参りは後にして、先に納経所へ向かう。

納経所では先客が3人くらいいて、机の上にはすでに7、8冊の納経帳が積まれている。これは後回しにされるかもと思っておそるおそる納経帳を差し出すと、「やっておきます」と受け取った後、団体さんのより先にご朱印をいただけたのはありがたかった。かなりほっとして、大師堂に向かう。

二組目の団体遍路さんは一組目よりもリラックスしたグループのようで、みんなが本堂のお参りに集まっているのに、おじいさんが三人くらい、テントの下、日陰になっているあたりでくつろいでいた。菅笠・白衣の遍路装束に身を包んではいても、読経もしないでいいのかと思うが、まあひとそれぞれである。「納経帳はスタンプカードではありません」と書かれてしまう訳がよく分かった。

金泉寺本堂。納経所は左手の奥にある。観光バスの団体遍路2組とがっちゃんこしてしまった。


金泉寺大師堂。中に入った団体遍路がなかなか出てこなかったのは、長寿に霊験あらたかという「黄金の井戸」を見ていたためらしい。

大師堂のお参りをすませ、山門を出て右が四番大日寺への経路で、遍路地図によれば5.0kmの道のりである。まだ時刻は3時20分。納経の終了時間は午後5時なので、気候がよければもう少し足を伸ばしてもいいのだけれど、さすがに炎天下の5kmはきつい。この日のお遍路はこれにて終了とする。

JR板野の駅が500m南にあるので、住宅街を抜けて歩いて行く。板野は行きに降りた坂東の2つ先の駅で、特急が停車する。当初計画では午後5時ちょうどの高松行き特急を予定していたので時間には余裕がある。うまいこと銭湯でもあれば、大汗をかいたのでひと風呂浴びていけたらいいなと思っていたのだけれど、普通の住宅ばかりでそれらしき建物は見当たらない。

15分ほど歩いて駅のあたりに出る。電気屋はあるが、サウナとかスーパー銭湯とかは出てこない。とうとう駅に着いた。駅前にはWEBでおなじみの遍路宿「ばんどう旅館」がある。「日帰り入浴できます」とか書いてないかなと覗いてみたが、そんなことは書いてなかった。

駅舎に入る。窓口にはすでにカーテンが引かれていて、「窓口営業時間3時20分まで」と書かれている。ちょうど金泉寺を出た頃に閉まったことになる。そして時刻表をみると、3時台は43分に高松行の特急がある。時間はすでに3時40分である。あわてて自動販売機に1000円入れる。1000円で買える一番高い切符を買って、飲み物を買う暇もなくエスカレーターなしの自力階段を登った。

ホームまで行くと、10人ちょっとの乗客が特急を待っていた。間に合ってひとまず安心したが、あちらから来る特急電車をみると、なんと2両編成である。今度は座れるかどうかが心配になったが、何とか板野からの乗客分くらい空席があった。車掌さんに言って不足分の乗車券と特急券を買って、ようやく一息つくことができた。

車内では汗まみれになった長袖シャツを脱いでTシャツ1枚になる。このTシャツはお遍路用に購入したmizunoの速乾シャツで、水分を放出してべたつかないのでありがたい。一方、長袖の木綿シャツは直射日光の下で日焼けするのを防ぎ体力を温存できるのだけれど、吸った汗を含んだままなのでいつまでも着ていると重いしべたべたである。

そうこう考えると、お遍路で歩く際には軽くてすぐ乾く素材のものを身に着けるべきだなあとしみじみ思った。そのようにして、さっそく次の遍路遠征計画を考え始めたのは、結構自分に向いているのかもしれないと思ったのでありました。

[経路]極楽寺 14:15 →(2.6km) → 14:55 三番金泉寺(参拝・納経)15:20 → 15:35 JR板野駅

この日の遍路は、板野駅まで。特急停車駅ですが、3時20分までで窓口業務は終了しておりました。左手は遍路宿「ばんどう旅館」。

今回の遠征で購入した納経帳、経本、数珠。門前一番街@霊山寺。費用はちょうど6000円。

[Sep 26, 2015]