010 ギリヤーク2014川越公演 [Dec 7, 2014]

夏が終わったと思ったら、もう冬である。12月といえば、ギリヤーク師の川越公演である。冬だから当たり前だが、カレンダーをめくったとたんに寒くなった。温暖な千葉県でさえ寒いのだから、寒暖の差が激しい埼玉・川越はいかばかりであろう。身を刺す北風に震えながら、ギリヤーク師は大丈夫だろうかと心配しつつ、7日の日曜日を迎えた。

この日の足は車。昨年奥さんを連れて行ったら、昼ご飯を食べたカレー料理屋がいたくお気に召して、また行きたいというのである。前の晩に千葉ニュータウンでは霰が降ったのでちょっと不安はあったのだが、とりあえず天気は快晴、雪が積もっているなんてこともなかった。

産直にある観光用駐車場に車を止めて、まずはカレー屋さんへ。観光客で込み合っているうなぎ屋さんの2軒隣にある。店の前は、1年前はもう営業していない旅館のようだったが、今年行ってみると駐車場になっていた。ドアを開けて入ると、去年と同じ女の人が「いらっしゃいませ」と出迎えてくれた。スリランカの人のようだが、日本語はぺらぺらなのである。

私はキーマカレーとチキンカレーを辛口で、奥さんはキーマカレーと野菜カレーを普通で、それぞれセット。セットには、ナンとライス、手羽先の焼いたのとひき肉を棒のように伸ばしたカレー風味つくねみたいなのが付く。食後にマンゴーラッシーをいただいて、一人1200円くらい。お腹いっぱいの上に、カレーが効いて大汗をかいていよいよ会場に向かう。

会場に着いたのは20分前。トイレの前で、ギリヤーク師が準備運動中であった。手足を伸ばしたり振ったりしながら、「じょんがら最後まで踊るぞ」と自分に気合いを入れている。何と言っても御年84歳。1時間足らずの舞台とはいえ、相当集中しないと最後まで持たないのは明らかである。本番前に精神集中するのは当然のことであろう。

待つことしばし。観客はすでに50人ほど集まっている他、参拝する人達が不思議そうにパンフレット(例のコピーのやつ)を見ている。そして、いったん外に出てから、成田山川越別院の正門をくぐって入ってきた。例のカートを引いて、そして川越公演はいつもうれしそうなのである。この日は、例年にも増してうれしそうに見えた。

成田山が二時に鳴らす太鼓の音を背に、おもむろに準備にかかる。最初の頃は風があったのだがそれもおさまって、まずまずの好天。おそらく気温は10℃に達していないので寒いには違いないが、12月の川越でこれ以上を望むのは無理だろう。1曲目は「じょんがら一代」、エア三味線で踊る曲である。触れの声も元気。今日は期待できそうだ。

秋の新宿公演では、この曲の半ばで行き詰ってしまい、「念力」の振りで踊ったりしてたいへん苦しんでいたのだけれど、この日は絶好調。エア三味線のアドリブは延々と続き、ついには本堂の方に走って行ってしまった。天気にも恵まれて、師匠のコンディションも好調のように見受けられた。


絶好のコンディションの中、ギリヤーク師登場。いつもにも増して、うれしそうだ。


新宿公演では今ひとつだった「じょんがら一代」がこの日は絶好調。本堂の方まで走って行ってしまった時には、「念仏」と間違えたかと思った。

ノリノリのじょんがら一代に続いて、「よされ節」である。まず最初に、剃髪した若いお坊さんのところに行く。よされ節の踊りに誘うのはたいてい常連の女性なのだが、珍しいことである。ギリヤーク師は前日から川越入りしていたそうだから、あるいはお世話になったお坊さんなのかもしれない。

そしてメインは「念仏じょんがら」。踊る前のコメントによると、「アメリカでもロシアでも、一番受けたのは念仏じょんがら。インドに行った時は、祈りの踊りだと言っていただいて、見ていたみんなが手を合わせてくれました」とのこと。

しかし、ここでアクシデントが発生した。準備万端整えて、茣蓙を小脇に杖を突いて、曲が始まるのを待っていたにもかかわらず、スピーカーから流れてきたのは「禁じられた遊び」なのだった。これは、着替えと化粧の時にかける曲なのである。右手でごめんなさいのポーズをとって、そそくさとテープレコーダーのところに戻るギリヤーク師。

カセットを何回か取り出して裏表を確かめるが、うまくいかないのか首をひねっている。「ぼけちゃったかな」と言いながら何度か早送り・巻き戻しをして、納得のいくところに来たらしく(一体どこで判断しているんだろう?)、元の位置に戻って再びスタンバイ。スピーカーから流れてきたのが「ひゅー」という念仏のイントロだったので、思わず拍手してしまった。

念仏の時点では観客は80人ほど。さきほどのカセットレコーダーの操作で、ボリュームがいつもより大きくなってしまっていて、大音声での念仏が、成田山川越別院の慶大に響きわたる。ただ、三味線の音量はそれほどでもないから、数珠を振り回す頃にはほとんど気にならなくなった。今回は体調がとてもよかったのだろう。動きにキレがありかつダイナミックである。

この日2回目となる本堂へ走り、階段を駆け上がる。賽銭箱の前でご本尊に拝礼し、振り返って観客に拝礼。下りはふらついたのか手すりを頼ったが、手水場に置いてあった例のバケツを手に戻ってくると、頭から一気にかぶる。ついでに、手許においてあった500mlペットホトルの水も頭からぶちまけた。

ずぶぬれになって最後のご詠歌のところで、「今年84歳。88歳の50周年までガンバルよー」と空に向かって叫び、「これで終わりにします!」とフィニッシュ。川越のサポーターのみなさんから花束をもらい、万歳三唱でこの日の、そして2014年の締めとなったのである。

いつもなら、ずぶ濡れのまま延々とトークが続くのだが、この日は早々に、川越のおばさんたちに着替えさせられていた。みんなに囲まれて着替えをしながら、「今日はこれまでで一番寒かった」と言っているのが聞こえた。おととしの方が寒かったような気がするが。


念仏じょんがらを始める段になって、「禁じられた遊び」が鳴り出してしまい、困ってしまった師匠。


2014年も盛大に水をかぶって締めるギリヤーク師。

[Dec 10, 2014]