011 燧裏林道から尾瀬 [Oct 26-27,2012]

さて、尾瀬には先月行ったばかりなのに、山小屋が予想以上によかったので是非とも奥さんを連れて行きたくなって、紅葉にはちょっと遅いけれど再訪することにした。桧枝岐村営・尾瀬沼ヒュッテの営業は10月最終週までなので、混みそうな週末を避けて金曜日に予約する。2人なので車で御池まで。歩くコースは前回予備に考えていた燧裏林道である。

燧裏林道は尾瀬ヶ原方面から御池まで、燧ヶ岳の北西面をつなぐルートである。途中にはいくつかの湿原があり、また標高差も200m位しかないので、楽勝だろうと考えていた。「林道」と名が付くのだから、「日原林道」をイメージしていたのも迂闊だったところである。歩いてみて初めて分かったのだが、燧裏林道は林道ではなくて、登山道なのであった。

家を4時に出て、御池に着いたのは9時前。身支度をして駐車場裏から林道に入る。ここは前回燧ヶ岳から下りてきたルートと重なるので、迷わずコースに入る。しばらく木道の登りで、それから湿原地帯となる。姫田代、上田代、横田代と続く。田代というのはこちらの言葉で湿原地帯のことである。

緩やかなアップダウンの木道を進むと、下からは見えなかった高さの池塘(ちとう・湿原地帯の湧水でできた池)が出現する。下草が薄くなっているあたりには、燧ヶ岳の方から水流が細い沢になって木道の下を流れているのも風情がある。こういう感じで尾瀬ヶ原まで続くと思っていたのだが、とんでもないことだった。

最後の湿原を過ぎたあたりから、木道ではなく階段と岩の登山道となる。燧ヶ岳の北西山麓にはいくつかの沢があり、勢いよく水が流れている。それはいいのだが、谷まで下ってまた尾根まで登ることを繰り返すので、全体の標高差はないにもかかわらず結構なアップダウンがある。そこを歩くものだから、平坦地とは違って疲れる。

さらに油断したのは、奥さんが一緒なので食糧や着替えを多めに持ち、しかも大きいリュックで来たものだから、いつもより重いのである。木道では何でもないのだが、アップダウンがあると急激にスピードが鈍る。加えて、「何で林道がこんななんだ」という精神的ダメージがあるので、ますます調子が出ない。

渋沢温泉小屋への分岐を過ぎて、そろそろ木道かと期待したにもかかわらず、道はいよいよ険しくなる。歩き始めて約2時間、いつまで歩いても太陽は左手である。尾瀬ヶ原に近づけば南向きになるので、太陽は正面になるはずなのに。時間的にはコースタイムよりかかっている訳ではないが、こんなはずでは・・・という思いが足取りを重くする。

ようやく風景が開けて、裏燧橋に出る。この橋は最近架け替えた新しい橋で、おそらく尾瀬一帯で最も大きい。広いガレ沢になっている渋沢を渡っていて、橋の上からまた残っている紅葉を楽しむ。御池まで上がってくる途中は紅葉が盛りなのだが、尾瀬に入るともう枯れてしまっている。このあたりは日当たりがいいので、まだ残っているのであろう。

結局、赤田代の休憩所に着いたのは午後1時過ぎ。林道突破に4時間かかった。村営の無料休憩所は、もう冬支度を始めている。天気が良かったので、休憩所前のベンチでお昼ごはんにした。ここまですれ違ったのは10人くらいで、そのうち3人は工事の人だった。休憩所周辺にも他に人はおらず、さすがにシーズン終わりの平日である。

風もなく日当たりのいい昼休みなのだが、動かないと寒いと奥さんが言うので20分ほどで出発する。地図でみると距離的には約半分である。ここからは木道だろうから飛ばせると思ったのだけれど、もちろんそんなに甘いものではなかったのでありました。


裏燧橋から渋沢を見下ろす。尾瀬の中は紅葉も終わりかけでしたが、まだ黄色や赤い木々がみられます。


ようやくたどり着いた尾瀬ヶ原無料休憩所。シーズンも終わりなので、これから板を打ち付けて冬支度です。

休憩所のある赤田代から、山小屋銀座の見晴(みはらし)までは、尾瀬ヶ原の東側を歩く。

見渡す限りの茶色の下草、いかにも秋終盤の風景である。しかも、うちを除いては人っ子一人見えない。いかに10月の平日とはいえ、尾瀬に人の姿がないというのはすごい。風もほとんどなく、自分達の足音しか聞こえない。おばさん連中の声高な話し声で景色がだいなしになることが多いが、その心配もまったくない。

見晴には山小屋が6、7軒固まっているのだけれど、1軒を除いて今年は店じまいであった。長く厳しい冬に備えて、出入口や窓を板で囲っている。今年は比較的暖かなのでまだ閉めるのは早いような気がするけれど、山では11月は冬である。撤収を急がないと、雪が降って人も荷物も動かせなくなってしまう。

時計をみるともう2時を回っている。3時くらいには宿に着くスケジュールを見込んでいたのだが、なかなかうまく行かない。尾瀬沼まであと6kmくらい。木道なら1時間半あれば大丈夫そうだ。尾瀬ヶ原と尾瀬沼を結ぶ尾瀬沼林道は燧裏林道よりポピュラーだし歩く人も多いので、きっとほとんどが木道であろう。

と思ったらとんでもない話で、ここも登山道だった。しかも、尾瀬沼の方が標高差で200mほど高いので、基本的に山登りである。何度も岩の道になってスピードが落ちる。早く木道になってくれと願うが、なかなか登山道は終わらない。体が軽い分、奥さんの方が先に行ってしまうのは悲しい。「パパの好きな木の道だよ」と言われて喜ぶのもつかの間、また岩の道になる。

すれ違う人もいなければ、後ろから来る人もいない。だんだん日も西に傾いてきた。もちろんヘッドランプは持っているけれど、日が落ちると危ない。休憩も取らず景色を楽しむ余裕もなく歩く。時間が分かるとかえってあせってしまうので、時計は見ずに体がつらくない範囲で急ぐ。

ようやく尾瀬沼が見えてきた。2時間くらいは山道を登ってきたように思ったのだが、時計を見るとまだ3時半すぎだった。後から調べたら、下り(逆方向)のコースタイムで登りを歩いたので、かなりのハイペースだったことになる。ここまで来れば、あとは木道だけで宿に着く。ようやく景色を見る余裕が出て、ついでに休憩もとってしまう。

あとは勝手知ったる道で、ちょっと予定より遅かったが4時半くらいに尾瀬沼ヒュッテに到着。今回は表側の部屋をもらえたので、窓から燧ヶ岳がよく見えた。風呂も食事も良くて(これは前回確認済)、奥さんにも気に入ってもらえたのは何よりであった。唯一残念だったのは、今週で終わりなので生ビールが終了してしまったことであった。

翌日は尾瀬沼から沼山峠まで1時間ちょっとの歩き。方向音痴の上に地図もろくろく見ない奥さんは帰りも行きと同じルートを戻ると思っていたようで、こんなに早く着くなら何でこっちを通って来ないのかと言われてしまった。そんなこと言っても、いろんな景色を楽しむのが山歩きなのである。

それはそうと、今回茶色い尾瀬を見てきて、緑と花の尾瀬もぜひ見てみたいと思ってしまった。とはいえ、人が多くておばさんがうるさいのは勘弁してほしいので、さてそれではどうするかということになる。悩ましいところだが、来年までゆっくり考えることにしよう。


広い尾瀬ヶ原に、見渡す限り人がいない。それだけで来た甲斐があったというもの。


大江湿原から尾瀬沼、シンボルツリーの三本カラマツを望む。また来年!

この日の経過
御池駐車場 9:00
11:00 裏燧橋 11:05
13:00 赤田代(昼食) 13:30
14:15 見晴 14:20
15:45 沼尻 15:55
16:30 尾瀬沼ヒュッテ(泊) 7:30
9:00 沼山峠バス停

[Nov 12, 2012]