012 川苔山 [Nov 10,2012]

紅葉も見ごろの11月中旬、次の目的地は川苔山(かわのりやま)である。ここは奥多摩でも非常に人気のある山で、土曜日に行ったので山頂付近はすごい人だった。これまでどちらかというとひと気のない山を選んで登っていたのだけれど、前々から興味があった山なので今回行ってみることにしたのである。

どこに興味があったかというと、鳩ノ巣から川苔山に登る途中に、いまは廃村となってしまった峰という集落があったのである。数年前まで廃屋が残っていて、廃墟ファンの人気スポットとなっていたのだけれど、現在ではすべて倒壊してしまったという。明治時代に、当時帝国大学の学生であった後の民俗学の巨匠・柳田国男が訪れた村でもある。

早起きして電車に乗ったのだけれど、立川に着くころには7時を回り、青梅線はリュックを持った人でラッシュ状態であった。駅がある鳩ノ巣から、峰集落のあった場所までは標高差が約300mある。その山道を峰の小学生は毎日登り下りしていたという。その山を登りながら、かつての集落に思いをはせようというプランである。

鳩ノ巣駅から棚沢という集落の急坂を登っていき、住宅がなくなったあたりから登山道が始まる。山の中腹を巻く比較的なだらかな登り坂で、左側の谷には防護ネットが張られている。よく使われる登山道だからであろう。なだらかではあるのだが、結構距離がある。30分登っても40分登っても、同じような山道が続く。

小学校でも高学年になれば、体力もあるので走って通うことも可能かもしれないが、低学年の子にとっては長くてつらい道だったかもしれない。あるいは、慣れていれば大したことはなかったのかもしれない。私の小学校の頃でも、1時間くらいかかって通ってきた子供たちはいた。もっとも、山道ではないが。

子供たちは何を考えていたのだろう。学校の行き帰りだけで大変だと思っていたのだろうか。それとも、授業を受けるのも山道を歩くのも自分の時間を取られるのは同じだから大して気にもしていなかったのだろうか。少なくとも、勉強よりは山道歩く方が好きという子供もいたことは間違いなさそうだ。

歩き始めて50分くらいで、急に行く手の尾根が明るくなる。大根山の神の祠がある場所で、そこには逆側から砂利道の林道が上がってきていて、駐車場に何台かの車が止まっている。ちょっと開けた場所になっているので、ここで休憩しているグループもいた。登山道はここから、川苔山のコースと本仁田山(ほにたやま)に向かうコースが分かれる。

廃村となった峰に向かう道も、ここから分かれていたらしい。WEBを見ると、林道ができる前の分岐の写真も残っているのだが、林道工事でそのあたりも崩してしまったようである。峰集落跡はここから15分ほど先で、林の中をトラバースしていくと昔の道に出るらしいが、時間的にそれほど余裕がある訳でもないので今日のところは上へ向かう。

山の神の先2~3kmくらいは、標高700mほどの比較的平坦な道が続く。3本ほど水のない谷を越えた後、いよいよ川苔山に向かう登りとなる。とはいえ、最近登っている天祖山や燧ヶ岳に比べると、それほどではない。登山客が多いのですれ違ったり抜かれたりするのに時間がかかるが、マイペースでゆっくり登ればそれほどバテることもない。

紅葉をみたり落ち葉で埋まった尾根道でゆっくり行ったりした割には、山頂到着は12時20分過ぎ。コースタイムをやや上回るくらいでクリアできたのは、このところの訓練の効果なのだろうか。ちょっとうれしくなった。


鳩ノ巣から標高で300mほど上がると、大根山の神の祠に着く。このすぐ左側は林道駐車場になっていて、かなり開けてしまっている。


登山道の途中からみた川苔山。紅葉はやや終わりかけで、登山道は落ち葉で一杯でした。

川苔山に人気があるのは、展望がすばらしいこととアプローチがしやすいこと、加えていろいろな登山道があることである。その意味では、以前に登った天祖山とは好対照ともいえる。私の登った鳩ノ巣ルートは下りに使われることが多い登山道で、どちらかというと奥多摩方面から百尋の滝経由というのがガイドブックによく載っている登り方である。

山頂付近は満員で、どのアングルから写真を撮っても人が入らないことはない。歩く所にお昼を広げている人もいて、おそらく山頂には百人を優に上回る人がいただろう。この山はどうルートをとっても登って下りるまで5~6時間はかかるし、途中にトイレがないという不便(というのも何だが)があるのに、それでも人気があるというのは大したものである。

人が集まるだけのことはあって、山頂からの展望はすばらしい。西には奥多摩の山々がくっきりと見渡せる。いちばん奥の高い山は雲取山。その手前に見えているのが、前回登った天祖山である。雲取山から稜線を南にたどると、遠くに雪をかぶった富士山が見える。しかし、見ている足下でみんなお昼にしているので、食べている目の前でずっと立っている訳にもいかない。

頂上近くは人が多すぎるので、少し下りたあたりでレジャーシートを敷いてお昼にする。今回のお昼はバターロールにジャムとマーガリン、そのまま食べられるレトルトカレーとインスタントのカフェオレ。何回か山登りするうちに、そんなにたくさん食べなくても大丈夫だと分かってきて、分量的には行動食と非常食の方が多い。

1時になったので行動再開。古里駅に下る赤杭(あかぐな)尾根の予定である。頂上直下からいきなり急坂で面食らったが、しばらくすると緩やかな尾根道となった。両側を紅葉に挟まれ、はるか遠く、新宿新都心あたりまで見晴らせるすばらしい展望である。最初は自分ひとりしかいなくて静かだし景色もいいし最高だったのだが、やはり人気のある山なので、途中二十人近くに抜かれた。

尾根を1時間半ほど下ると、登山道はいきなり林道に出てここをしばらく歩く。このまま古里まで行くのかなと思ったけれどさすがにそんなことはなく、再び登山道になる。赤杭山に午後3時。三角点のみで林の中の山頂である。まだ標高は923m、2時間かかって400mくらいしか下りていない。残り600m、ちょっとあせる。

心持ち急いで、古里と川井の分岐点、標高700m付近に着いたのは3時50分。もう日は西に傾いている。ここの分岐を川井に向かった方が地図上では古里に行くにも近いのだけれど、同じ標高差を短距離で下るということは勾配が急ということである。それが疲れた下りできついのは、高水三山の時に経験済である。安全策をとって、標識にしたがって西側の古里直行ルートをとる。

ここからはぐんぐん標高を下げるが、歩いているうちに、いよいよ日が暮れてしまった。森の中に入ってしまうと足下が暗い。常備しているヘッドランプの初登場である。LEDライトは明るいし、とにかく安心である。ちょっと驚いたのは、この頃になってさらに十何人が下りてきたこと。途中、赤杭山のあたりでは、前にも後ろにも人影が見えなかったのに。

結局、古里駅に着いたのは5時10分前。次の電車は5時25分で、30分以上の待ち時間になってしまった。遅くなったけれど、予定通り河辺で下りて日帰り温泉で着替えて汗を流す。この日は約8時間の行動中、一度も転ばなかった。ほとんど初めてのことである。

帰りの電車もそれほど辛くなかったので、これは体力が付いたと喜んでいたら、翌朝には寝ていられないくらい太ももとふくらはぎが痛んだ。やっぱり、この歳になって体力が向上することはないのである。標高差1000mというのが、現在のところ翌朝痛むか痛まないかの境目となっているようだ。


川苔山頂から奥多摩の山々。山頂付近には100人以上の人がいて、景色をみたりお昼を食べたりしていました。


赤杭(あかぐな)尾根を下りるなだらかな尾根道。景色はいいのですが、北風がまともに当たって寒いのと、やたらと長いのが大変でした。

この日の経過
JR鳩ノ巣駅 8:45
9:37 大根山の神 9:40
10:45 標高853m付近 11:00
12:20 川苔山(昼食) 13:00
13:30 狼住所(おおかみずんど) 13:33
14:35 林道合流地 14:35
14:55 赤杭山 15:05
15:50 古里川井分岐 16:00
16:50 JR古里駅

[Nov 21, 2012]