013 鷹ノ巣山のつもりが奥集落 [Nov 24,2012]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

秋の山もそろそろ終盤。加えて、来週から出張が続くのであまり自由がきかない。勤労感謝の日から始まる3連休が最後のチャンスであるが、初日は雨の予報である。翌日の土曜日は何とか晴れそうなので、急きょ奥多摩に行くことにした。今回の目的地は鷹ノ巣山である。

前回の川苔山には廃村・峰集落があったのだが、鷹ノ巣山には現代の秘境・奥集落がある。この山もいろいろのアプローチが可能であり、せっかくなので奥集落を経て浅間尾根から鷹ノ巣山避難小屋経由というルートを選ぶ。WEBをみると7:55峰谷行のバスで行くのが一般的なのだが、家からは始発で出てもこのバスには間に合わない。

仕方がないので、次の鴨沢西行8:35で峰谷橋まで行き、峰谷まで歩くことにした。WEBには、峰谷橋→峰谷が30分、峰谷→奥が30分とあったので、10時過ぎには登山口に着けるだろうという見込みであった。後から、下調べの不十分さをいたく後悔することになる。

奥多摩着8:30の電車は超満員で、改札までなかなか進まない。前の電車から40分ほど間隔が空くためである。休日くらいはもう少し走らせてもいいのに、JRもお役所だから仕方がない。一方で西東京バスは営利企業なのでフットワークが軽い。8:35鴨沢西行のバスは増便2台の計3台が奥多摩駅を出発した。

おかげさまで、30分立つことを覚悟していたのに、3台目に座って行くことができた。私以外のほとんどの人は大きなリュックを持ち、終点まで行くようであった。今日は雲取山でテント泊なのであろう。峰谷橋で下りたのは私一人。東日原よりかなりきれいな休憩所とトイレがある。おそらく、すぐそばに建っている小河内振興財団がきちんと管理していると思われる。

小河内振興財団という名前から、おそらくダム建設時に東京都(戦前だから東京府か)と地域住民との折衝窓口として設立され、住民の立ち退きやら移転の世話、補償などをしていて、現在は奥多摩地区の観光事業をやっているのだろうと見当をつけたのだが、帰って調べてみるとその通りであった。峰谷へは、この小河内振興財団の前の道を入っていく。午前9時20分スタート。

左側に峰谷川を見ながら進む。最初はほとんど勾配はない。向こう岸は土の段々になっているので、満水時にはここまで水位が上がるものと思われたが、いまは広い砂の河原となっている。しばらくして左にゆるくカーブするあたりから、徐々に高度を上げていく。とはいえ、下は舗装道路なので速く歩くことができる。

小河内小中学校までかなり歩いたような気がしたので、バス停で停留所の表示をみてみると、まだこの先に3つか4つバス停がある。この分だと30分で着くのはは難しいと思っていたら、結局峰谷バス停まで40分かかった。ここまで来ると、はるか山の上に奥集落らしきいくつかの屋根が見える。ただし、あと30分で着くとはとても思えない。


峰谷橋バス停から峰谷方面への分岐。この後が長かった。ちなみに、ここは休憩場所やトイレがあります。


バス停終点の峰谷付近から。向こうの電柱の上の方にちらっと奥集落が見える。とても30分で着けそうではない。

峰谷から奥集落まで、地図上ではショートカットの登山道があるはずなのだが案内表示がなく、そのまま車道を歩くことになった。川沿いを歩いている間はよかったが、山道に入ると大回りしながら標高を上げていくので、大分と距離を要する。ずっと時計を見ていた訳ではないけれども、途中で30分では無理だと気がついた。

しかし、車道を行って30分で着かないものが、山道をショートカットして30分で済むと考えるのも早計である。標高差は同じ約250m、距離が短ければ急坂に決まっているのである。途中でいったんリュックを下して地図を確認し、ひと休み。結局、奥集落の一番低い家のあたりに達したのは、峰谷から1時間登ってからであった。

景色は素晴らしい。南方向に開けた斜面に点在する集落で、戸数は二十軒くらいあるのだろうか。はるか下にいま通ってきた峰谷と、峰谷から西に登ったあたりに峰集落(川苔山のとは別。このあたりではよくある地名である。)を望む。左手には鷹ノ巣山から榧(かや)ノ木山、倉戸山に至る稜線が、緑、黄、赤、茶色に染め分けられている。

こうした標高の高い場所に集落が残っているのは、小河内ダムができるまではもっと大きな村で、水没から逃れたここが例外的に残ったという要因もある。よく見ると規模の大きな住宅が多く、建物もしっかりしている。あるいは水没地の人達の代替え地だったのだろうか。

集落内にはコンビニはおろか、商店も自動販売機も見当たらない。もっとも1時間下にある峰谷でさえ、ます釣り場が1つと商店が1つしかないので(自動販売機はいくつかあった)、そんなものかもしれない。人が住んでいる様子がない住宅もないではないが、むしろおじいさんおばあさんが庭に出て作業をしている家が多い。

本で読んだのだが(金副隊長の山岳救助日誌)、以前日陰名栗峰で雪で遭難者があった時に、発見した人がここまで急いで下りてきたということであり、またWEBでは、ヒトよりサルの多い地域とも書いてあったので、もっとさびれた村を予想していたのだが、そんなことはない明るくて伸び伸びとした集落であった。

何と言っても東京都だし、道路もしっかりしていて郵便も来れば緊急車両の通行にも問題はなく、住む人がいる限りはあり続ける集落なのだろう。かつては林業や炭焼きで生計を立てていた地域と思われるが、いまや木材も燃料もそれほど需要はない。結果として新しい人が入ってこない。だからいつまで住む人がいるのかが問題である。

さて、写真を撮りつつ上がってくると、集落の一番上あたりで舗装もなくなり、砂利道となった。そのあたりに何台か車が止まっていて、鷹ノ巣山登山口がある。ちょうど紅葉がみごとなあたりから登山道に入り急勾配が始まるのだが、もう11時になってしまった。


奥集落の最上部。案に相違して庭で作業をしている人もいるし、電気工事中で一部の道路が通行止めでした。後方は榧(かや)ノ木山あたりの稜線。


鷹ノ巣山登山口。紅葉が見事でした。

さて、ようやく登山道に入ったものの、ここまで2時間近くの車道上りで少々疲れ気味である。それほど急勾配でもないはずなのに、息切れして足があまり上がらない。10分くらいで着くはずの神社まで行くのに、かなり難儀してしまう。

神社に入っても、鳥居から社殿までの登りが苦しい。苦しい時は歩幅を小さくしてゆっくり歩くのが鉄則と言われるが、そうしても苦しいのは変わらない。社殿を過ぎて倒木のベンチで一息ついてゼリー飲料をとる。そういえばここまできちんと休んでいなかった。

登山道であれば、少なくとも1時間ごとに小休止するように心がけているのだけれど、舗装道路では休むところがないし、歩きも楽なのでそのまま歩いてしまう。とはいえ標高差が400mくらいあったのだから、体の方はそれだけ疲れているのである。

小休止の後、再び登りにかかるが、息がきれるのは相変わらずである。なかなか足が前に進まない。足下は落ち葉がガレ場の上に積もっていて、強く踏み込むと時々浮いた石を踏んでしまう。木の根が地面から出ているところも多く、安定しない。考えていたよりも、かなり難しい道である。

加えて、登山口まで予想以上に時間がかかったため、もう正午過ぎである。日が暮れるのが早い上に帰りの歩きも当初計画より多く見こまなければならず、このペースでは鷹ノ巣山はおろか、浅間尾根から石尾根に出たところにある避難小屋まで着くのも難しそうだ。

午後1時には下りにかからなければならないので、12時半に日当たりのいい平らな場所をみつけてお昼にする。メニューは小さい食パン、ジャムとバター、レトルトカレーとコーヒー。食後には甘い羊羹。テルモスのお湯で入れたコーヒーが温かくておいしい。

あおむけになって寝転ぶと、落葉したカラマツがなんともいえない風情である(下の写真)。登山道のすぐ脇の場所なのだが、単独の人がひとり通っただけで他には誰もいない。聞こえるのは鳥の声だけである。午後1時になり、ちょっと寒くなったので出発。

体力も回復したのであと少し登ってみようと思い15分ほど登ったのだけれど、同じような急坂が続くばかりなので断念する。前に天祖山に行ったとき最終到達地点がはっきりしなかったので、今回は秘密兵器GPSを使って緯度経度を登録する。帰って調べると標高1299mが最高到達点であった。

鷹ノ巣山は1736m、避難小屋は1570mくらいなので、あと1時間くらいで避難小屋、プラス30分で山頂まで行けたのではないかと思う。登っている途中でもあと1時間くらいだとは思っていたのだけれど、秋は日が暮れるのが早い。1時を過ぎたら撤収という判断は中高年の単独行としては妥当だっただろう。

今回の反省点としては、急に決めたこともあって下調べが十分ではなかったことで、後から調べたら奥集落までのショートカットでかなり時間を短縮できたようである。ただそれでも、30分で峰谷バス停から登山口まで到達するのは、私には難しいようである。

いずれにせよこの山は車を使わない限り日帰りは困難ということがよく分かった。反面、約800mの標高差を登り下りしたにもかかわらず、足の筋肉がそれほど痛くはならなかったのは収穫であった。


結構な急勾配が続きます。このあたりはカラマツなので下が見えますが、広葉樹林になると落ち葉で足下が見えなくなります。


平らな所をみつけてお昼。横になるとカラマツ林、静かで鳥の声しか聞こえません。


新兵器GARMIN社GPS。普及機の並行輸入品ですが、けっこう使えます。

この日の経過
峰谷橋バス停 9:20
10:00 峰谷 10:00
11:00 奥集落 11:00
11:10 登山口 11:15
12:20 1200m付近(昼食) 13:00
13:20 最高到達点(1299m) 13:20
14:00 登山口 14:00
15:05 峰谷 15:10
15:45 峰谷橋バス停

[Dec 2, 2012]