017 雲取山 [Mar 28-29, 2013]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

3月の終わりに休みを取った。天気も良さそうなので、昨年末に三条の湯までで撤退した雲取山を目指すことにした。鴨沢バス停の標高が530m、雲取山頂が2017mだから、標高差はおよそ1470m。達成すれば自己最高の標高差である。ビギナー向け山小屋としては多く推薦される雲取山荘に予約を入れて、始発電車で奥多摩に向かった。

ヤマレコの記事では、前週末時点で山頂まで雪はないということであったが、前の晩に雨が降ったので山では雪だったかどうかが不安材料である。予約の時にも言われたので軽アイゼンは持ったものの、できれば使わないで済ませたい。ところが、中央線の車内放送では青梅線は架線凍結のため運転見合わせと言っている。私が行くまでに復旧するといいけれど。

立川を過ぎ河辺(かべ)までは順調だったものの、ここで電車が止まってしまう。結局、青梅を出た時点で30分遅れ。8時台のバスには乗ることができず、JR奥多摩で30分待ち合わせの計1時間遅れとなってしまった。鴨沢バス停から雲取山荘まではコースタイムで6時間だから、これだとぎりぎりである。まあ、このところ早く歩けるようになったので、とにかく急ぐしかない。

鴨沢で身支度をして、10時20分に出発。調べると、登山口である小袖乗越まで30分ほど登りのようだ。左手に谷で登山道を登って行く雰囲気は、川苔山とよく似ている。ちょうど30分で乗越到着。ここまで林道が通っていて大きな駐車場があり、自動車があればここからスタートできる。100mくらい先に登山口がある。

いよいよ登山道に入る。勾配はそれほど急ではなく、路面も落ち葉で歩きやすい。20分ほど歩くと突然廃屋が登場したのには驚いたが、ここから杉林の下方向を見るとはるか下に民家の屋根と道路が見える。地図で確認すると小袖という集落はこの下のようなので、数十年前にはここにも人が住んでいたのだろう。

引き続き緩やかな山道を登って行く。雲取山の登山道の中でも、ここ登り尾根は最も登りやすいと評判で、それで「登り尾根」と名付けられたらしい。確かに登りやすいが、なかなか先に進まないのが難点である。小袖の先にあるという水場がなかなか出てこない。出てきたのは小袖登山口から1時間歩いた12時前頃であった。水はほとんど出ていない。少し先に広場があったのでお昼にする。

「ここは標高1150mです。」と看板が貼ってある。標高差で、石尾根までのちょうど中間点ということになる。この看板によると、七ツ石小屋まで1時間10分、ブナ坂まで1時間半、雲取山頂まで2時間45分だそうだが、コースタイム通りとしても山頂に3時過ぎ、宿に着くのは4時になる。(後から、この看板は全く参考とならなかったことが判明する。)

お昼もそこそこに出発。20分ほどしか休めず、疲れが後に残らないか心配だが、とにかく急ぐしかない。途中で下がぬかるんできたので、スパッツを装着。歩き始めではるか遠くに見えた石尾根が、だんだんと近くなってきたのが心の支えである。

1時40分に七ツ石小屋の分岐。七ツ石小屋までは急登と書いてあったので、これを避けて石尾根の交差点にあたるブナ坂へ直行する。もう3時間歩いているので、そろそろ石尾根に出る頃だろう。

ところが、全然着かないのであった。30分ほど歩いて途中で上から声がするので着いたと思ったら、七ツ石小屋からの道の合流点だった。家に帰ってからGPSのログを地図上に落としてみると、登山道は標高1550~1600mの等高線に沿って2万5千分の1地図よりかなり大回りしている。結局、石尾根のブナ坂に到着したのは2時30分、歩き始めて4時間経っていた。

ブナ坂は雪が解けたためか水浸しで、5分ほど登って岩のあるあたりで休憩。3時間のコースタイムに4時間とは、尋常でない遅れ方である。残り半分も4時間かかる計算だと、宿に着くのは7時になってしまう。すでに1000m登ってきたので、かなり疲れもたまっている。これは参った。まだ日が高いのが救いだが、目標は宿に無事に着くことに切り替えざるを得なくなってしまった。


遠くに見える石尾根は、雪をかぶっているようです。


4時間かけて、ようやく石尾根に着いた。後方に見えるのは七ツ石山。

ブナ坂上を出発したのは2時50分。石尾根は左右の林を防火帯として切り開いていて見晴しがよく、傾斜もそれほど急ではないので歩きやすい。遅れているので思わず急いでしまい、息が切れてみると急な登りだったりして反省する。先は長い。ここでまた足がつってしまった日には、遭難である。時間が遅いせいか、ほとんど人とも会わない。

ヘリポートとその先の奥多摩小屋を過ぎたとき、まだ3時20分だったことで、少し気を取り直した。それまでは、夕飯間に合わなかったらごはんだけでももらえないかなと思っていたのだった。ちょっと安心したら、今度は足が細かくけいれんし始め、あわてて水分を補給する。前を見ると坂の長さと傾斜で気が滅入るので、足下を見て一歩一歩進む。

山に来ていい景色を見ながら、来し方行く末、また心の持ち様に考えをはせることができればいいと思っているのに、なぜか体調は大丈夫かとか、暗くなる前に着くかとか、心配ばかりしている。考えてみれば、カシノに行っていた頃もそうだった。手持ちのチップの心配や、滞在中の費用が手持ち現金で足りるか、TCを現金化するかなんてことばかり考えていた。

標高が上がるにつれて、道はぬかるみとなっている。昨日の雪が解けたのだろう。登り坂では相変わらず足がぴくぴくするので、そのたびにスポーツドリンクを飲んでいたらとうとう1.8リットルの在庫がなくなってしまった。あと水分はヴィダーインゼリー1パックしか残っていない。ここまで来たらがんばるしかない。

いつの間にか、雲取山荘への巻き道の分岐まで来ている。山荘のHPに、「頂上経由も巻き道も、時間的にも体力的にも変わりません」と書いてあったのと、ここまで来ると向こうに山頂が見えているので、がんばって山頂に向かうことにする。まだ時間は4時を回って間もない。この分だと5時半前には宿に着くことができる。

4時半に山頂直下で最後の休憩。ここでヴィダーインゼリーを半分と、カロリーメイトで栄養補給する。最後の斜面は岩の多いガレた道できつかったが、何とかクリアする。避難小屋前では、この日泊まるであろう人達ががやがやしている。その前を通り過ぎて山頂へ。4時45分、ついに東京都の最高峰、雲取山頂に到達した。

山頂の標識と三角点をデジカメで撮ると、休む間もなく雲取山荘への下り坂である。今度は北斜面なので凍結しているおそれがあり、本当ならアイゼンを着けて下りるところかもしれないが、前夜の新雪で雪が積もっているのと、下が岩っぽくて地面の状況がよく分からなかったので、そのまま何も着けずに下りた。

かなりきつい下り坂だったが、慎重に下りたので転ばなかった。急な岩場と緩やかな道が変わりばんこに何回か登場した後、両側をロープで仕切ってある斜面を下ると、山荘の屋根が見えた。玄関前のベンチでスパッツを外し、靴の雪と泥をブラシで払い、息を整えて受付。厚手の手袋が功を奏して、三条の湯のように手がかじかむことはなかった。

宿に着いたのは5時20分だから、ブナ坂からはほとんどコースタイムで来たことになる。われながらすごいハイペースである。宿は相部屋だったが、一緒の人もあまり話さない方で助かった。さっそく自販機でビールを買って飲んでいると、私より後に到着した人もかなりいた。最後は高校生の団体で、後から聞くと日大習志野高校とのこと。すぐご近所から来たことになる。


ついに雲取山頂が見えた。上に見えるのは避難小屋。最後の急登に挑む。


4時45分、ついに雲取山頂2017mに到着。後方は(おそらく)飛龍山で、この谷の奥に前に行った三条の湯があるはず。


雲取山荘名物・ハンバーグの夕食。手作りポテトサラダとトマト、わらびの塩漬け、冷奴も付いて、ごはんは大盛りでおかわりしてしまいました。

雲取山荘は各部屋に豆炭こたつが用意してあって暖かい。夕飯が終わり足を温めながらマッサージしていたら、7時を過ぎたばかりなのに眠たくなってしまった。風呂がないのに眠れるかなと心配していたけれど、そんなことは全然なかった。相部屋の人も横になっていたので、相談して8時前にはうちの部屋は消灯。初めはこごえるようだった布団も体温で適度に暖かくなって、ぐっすり眠った。

朝4時を過ぎる頃から、合宿の高校生が起き出した。小屋番のおじさんによると、彼らは自炊とのことだ。凍結して水が出ない時期なので、食事の支度も大変だろう。申し訳ないがこちらは食事付き、5時半が朝食時間である。ごはんと味噌汁、しゃけ、のり、ふりかけ、梅干などが付いて、とてもおいしい。卵は例によってお返しした。

窓から外を見ると雲海で、玄関を出たとたん冷たい風と雪が顔に当たった。前日とは打って変わって、ガスが出ている。天気予報ではこの日までは晴れるはずだったが、なかなか予報どおりにはいかない。他の人達の話を聞くと、これから雨が降り出すらしい。

スパッツとアイゼンを着けるのに手間取って、出発したのは6時半。昨日下ってきた山頂への道は、早朝で凍結しているとかなり厳しいので、迷わず巻き道を選ぶ。巻き道も下の写真のようにずっと雪が積もっていて、アイゼンなしではきつい。二十年ぶりにアイゼンを使う。足をしっかり上げてアイゼンの刃を効かせる。およそ40分で石尾根に戻った。

さて、平日の鴨沢発のバスは、10時27分の次は13時58分までない。雲取山荘から4時間弱というのは私の足では無理だが、7時間以上かけて下りるのも逆に大変だ。時刻表をみると、少し先の深山橋まで歩くと小菅発のバスが12時ちょうどくらいにある。鴨沢から30分とみて、11時30分に鴨沢目標で歩くことにした。ちょうど5時間で下りることになる。

ブナ坂まで戻ったのは8時半。前日よくコースタイムで登れたと思うくらいの坂道だった。きっと、宿に着けないかもと思って必死だったのだろう。七ツ石分岐からブナ坂まで1時間かかってしまった前日の反省を踏まえ、下りは七ツ石小屋経由とする。ブナ坂から30分で到着。平日なのに小屋番の人がいて、スポーツドリンクを購入。ついでにお願いしてわき水を分けてもらった。

ここからの下りが、今回一番といっていい急坂だった。さすがに、ガイドブックで急坂と書いてあるだけのことはあった。下りだからよかったけれど、ここを前日に登ったら体力は残っていなかったかもしれない。途中で分かれる道があったので、もしかするとそちらが正当な登山道だったのかもしれない。

昨日お昼をとった水場下広場に着いたのは10時過ぎ。ここの看板に、「鴨沢バス停まで1時間5分」と書いてあるのに安心して、10時15分まで休んで出発した。ところが、かなり急いだのになかなか着かない。小袖乗越に戻ったのが11時10分で、そこから下り坂を20分、合計1時間15分でなんとか駆け降りた。どういう歩き方をすると1時間5分で着くのだろう。

そういえば、ブナ坂まで1時間半を2時間半、雲取山頂まで2時間45分を4時間半かかったのだった。あの看板は相当体力のある人が歩いた時間に違いない。一般向けにはもう少しゆるめの時間を書いてほしいものである。深山橋までの車道歩きを30分。バス停に着いたのは11時57分。バスの時間は59分なのでぎりぎりだった。もっとも、バスは10分くらい遅れてやってきたが。

今回の雲取山は、行きの青梅線不通から始まって時間に追われた2日間だった。もう少しのんびりと山を楽しみたかったような気もするが、これはこれで楽しかったような気もする。標高差1400m余りを登り下りしたのでさすがに足は痛んだが、2日ほどで痛みは引いたから山体力が付いてきたということであろうと勝手に思っている。

七ツ石小屋でいただいたわき水は、家まで持って帰ってごはんを炊くのに使ってみた。すごくおいしかった。浄水器の水もおいしいと思っていたけれど、やっぱり自然の恵みってすごいんだなあと改めて思ったのだった。


朝の雲取山荘。朝食は5時半、アイゼン装着に手間取って、出発は6時半になってしまいました。


雪の巻き道を戻る。アイゼンを着けるのは20年ぶり。


この看板には偽りあり!?いつかもう一回来てみよう。

この日の経過
鴨沢バス停 10:20
10:50 小袖乗越 10:50
11:55 水場下広場(昼食) 12:15
13:40 七つ石分岐 13:40
14:30 ブナ坂 14:50
15:20 奥多摩小屋 15:20
16:30 避難小屋下 16:35
16:40 雲取山頂 16:45
17:25 雲取小屋(泊) 6:30
7:15 巻き道合流 7:15
7:55 奥多摩小屋 7:55
8:30 ブナ坂 8:30
8:55 七つ石小屋 9:05
10:10 水場下広場 10:15
11:30 鴨沢 11:30
11:55 深山橋バス停

[Apr 10, 2013]