018 表尾根から丹沢山 [Mar 26-27, 2013]

さて、雲取山の後は丹沢に転身して表尾根に挑戦である。丹沢は5月以降はヒルが出るというし、表尾根には20年くらい前に三の塔まで登って引き返したことがあるので、再挑戦という意味もある。宿は丹沢山のみやま山荘を予約した。塔ノ岳の尊仏山荘より空いていそうなのと、食事がよさげだったので丹沢山まで足を伸ばしてみることにしたのである。

例によって朝一番の電車で都心に向かい、新宿で丹沢フリーパスを買って小田急に乗る。秦野に着いたのは8時前。すでにヤビツ峠行のバスは行列ができており、8時18分のバスは臨時便が1台出た。くねくねした山道を上がり9時前にヤビツ峠着。二十年前とほとんど変わらない。丹沢ホーム売店の自販機で、200円に値上がりしたペットボトルを購入。
富士見山荘跡までは舗装道路を下る。そこから登山道が始まり、結構急な上り坂である。いったん林道と交差して、さらに二の塔まで登る。思いのほか時間がかかり11時になってしまったので、ここでお昼にする。菓子パンとスポーツドリンク。いつも時間が押してしまうので、このところ食事は簡単にすましている。バーナーを使うこともほとんどない。

ヤビツ峠が標高740m、丹沢山が1567mだから標高差は800mほど。前回の雲取山の1400mと比べると大したことのないような気がするが、表尾根はいくつかのピークがあるのでそのたびに下りたり登り返したりしなければならない。主だったピークだけで、二の塔、三の塔、烏尾山、行者ヶ岳、新大日、塔ノ岳と6つ。それぞれ100mの登り返しと計算しても累積標高差は1400mを超えるのである(実はもっとある)。

二の塔から三の塔はそれほど時間はかからない。11時半頃には到着して遅れを取り戻した。ここからこの日歩く表尾根が一望できる。はるか相模湾まで望む豪快な景色である。はるか下に次のピークである烏尾(からすお)山が見える。前に来たときは、あそこまで下って帰るのはきついと思って、ここで引き返したのだった。

案の定、三の塔から烏尾山の下りは厳しかった。200mほど下って、100mほど登り返す。ずっと下に見えた烏尾山のピークがかなり上に見えるようになるまで下る。三の塔から40分かかって烏尾山頂に到着。ここには烏尾山荘の建物があるが、やっていない。風が強くなって体感温度が下がる。ここからはずっと薄手のダウンを着て歩いた。

烏尾山の次は行者ヶ岳である。ここの鎖場が、今回の山場だと思っていた。WEB情報によると、結構怖いので待ち行列ができることもあるという。幸いこの日はほとんど人がいない。まずは登り。こちらは鎖を使うまでもなく通過。次に下り。頂上直下の鎖場を通過して、大したことないなと思っていたら、第二、第三の鎖場が続き、こちらはなるほどちょっと怖かった。

上から見るとほぼ垂直に切り立って高度感がある。後向きになってスタンスとホールドに集中すると、かなり安定していて間もなく下に着く。下から見ると(写真)垂直というほどではないのだが、人が多くてあせると余計に怖くなるかもしれない。今回はひとりなので誰からも見られていないのは助かった。

行者ヶ岳の登り下りを終わってまだ1時半になっていない。これは楽勝だなと思っていたのだが、もちろんそんなことはなかったのである。


三の塔から表尾根を望む。20年前は中央低くに見える烏尾山に下りるのが嫌で引き返した。後方一番高いのが塔ノ岳。


表尾根名物・行者ヶ岳の鎖場。ほぼ垂直で下を見るとちょっと怖いですが、スタンスとホールドはいっぱいあります。

行者ヶ岳から塔ノ岳までは、コースタイムで1時間と少し。休憩なしで直行できそうだし、まだ1時半なので3時には余裕で着くと思っていた。ところが、次のピークである新大日までなかなか着かない。ときどき塔ノ岳の頂上、尊仏山荘が見えるのだが、はるかに遠い。谷側から登山道が合流する政次郎ノ頭という地点を過ぎて、これは一気に行くのは無理だと気がついた。

ちょうどベンチがあって広くなっている場所があり、ひと休みする。あとからGPSの記録を地図に落としてみると、書策(かいさく)小屋の跡のようだ。ひと休みしたくなる場所だし、見晴しも悪くない。なるほどここに小屋を建てたのは納得できる。ちなみに、渋谷書策さんは、丹沢では古参のガイドであった(2009年没)。

書策小屋が営業していた頃は、戸沢から小屋の裏まで書策新道という登山道が使われていたということで、昔のガイドブックには登山道が載っているのだが、WEB情報をみると小屋がなくなってから整備されておらず、一般の通行は困難とのことである。それでも戸沢には大きな看板(書策新道→ みたいな)があるので、注意が必要である。

さて、書策小屋跡からしばらく進み、午後2時20分ようやく新大日のピークに到着。ここに札掛から上がってくる登山道が合流する。すぐ横には新大日茶屋というトタンの建物があるが、しばらく前から開いていないような風情である。塔ノ岳はまだまだ遠い。写真を撮ってすぐに出発。

振り返ると、朝から歩いてきた巨大な三の塔、こじんまりした烏尾山、岩山っぽい形の行者ヶ岳が見える。地図を見て計画している段階では、いったん三の塔まで登ってしまえば残りの登り下りは大したとはないと思っていたのだが、ところがどっこい結構きつい。世の中やってみないと分からないことはまだまだあるようだ。

WEBでよく見る木の又小屋の前で小休止。サイディングで外装を整えられて居心地のよさそうな山小屋だが、残念ながらこの日は営業していない。だんだん風が冷たくなるのと、地面がぬかるんで歩きにくい。頂上直下の急坂をクリアしてようやく塔ノ岳山頂に着いたのは3時20分。晴れているのに細かい雪が風に乗ってきていた。

塔ノ岳山頂は帰りにまた通るので、ダウンジャケットを着てすぐに出発。尊仏山荘の横を通り、急な階段を下って行く。翌日はこの階段を上がるのかと思うとちょっと気が滅入る。別のルートはなかったかなと考えるが、どう考えてもこれより楽なルートはない。やっと道が平らになり下ってきた方向を振り返ると、はるか上に尊仏山荘が見えた。

ここから丹沢山までは、1日の疲れが体に来て辛かった。距離的には3km弱でコースタイムは1時間ちょっとだから平坦な尾根道だろうと予想していたのだが、平坦なのはごく一部で、ずっとアップダウンが続いた。一番がっかりしたのは、そろそろ着くだろうと思ったピークが竜ヶ馬場という丹沢山の前のピークで、まだゴールはずっと先だった時である。

ようやく丹沢山頂・みやま山荘に着いたのは、4時50分だった。前回の雲取山とほぼ同じ時間。歩き始めは今回の方が1時間早いから、1時間多く歩いたことになる。山荘到着は、私が最後のようだった。山荘に入り「遅くなりました」と挨拶すると、受付をしていた山荘のご主人、石井さんに「まず、荷物置いたら。」「顔洗うなら、外に水が出るよ。」と言われ、とてもうれしかった。

山荘の中は暖かく、とてもきれいでそれだけで疲れが半分とれる。いままで何回か山小屋に泊まったが、布団が温かかったのはここが一番である。夕ご飯も、水の乏しい丹沢の山小屋なのに抜群に気が利いていて、この日のおかずは鴨のハム、ポテトサラダ、山菜の煮物、筍とワカメの炊き合わせなど。夕ご飯の後は足をマッサージしていたら眠くなり、8時前には寝てしまった。


塔ノ岳から丹沢山は、思ったより遠かった。向こうに見えるピークは竜ヶ馬場。丹沢山はまだまだ先。


丹沢山着は4時50分、前回の雲取山のときと同様、かなり予定より遅れた。ただし、こちらは山頂のとなりが宿。


みやま山荘の朝ごはんは山菜ご飯でした。すごくおいしかった。

みやま山荘のこの日の泊り客は14~5人。小屋の2階にある寝室は余裕があり、いびきをかく人もいなかったのでゆっくり眠ることができた。5時半に朝ごはん。山菜ご飯がすごくおいしくて、大盛りにしてなおかつおかわりをしてしまった。6時ちょうどに出発。一番後に着いたのだが、出発は一番早かった。

塔ノ岳への帰り道はもやっていて麓の方は霧の中だが、これから暖かくなるような気配。疲れもとれた朝一番の歩きは気持ちがいい。塔ノ岳方向から来た人は4、5人、後ろから追いついてくる人はいないので時々デジカメで風景を写しながらゆっくり歩く。山頂への登りも、前日に思ったほどには難儀しなかった。

前の日ゆっくりできなかった塔ノ岳山頂でしばらく休む。この時間になると、相模湾まで見渡せるようになった。相変わらず風は冷たいが、その分ぬかるみが凍っているので歩きやすい。着いたときは誰もいなかった山頂に、だんだんと人が増えてきた。7時30分、そろそろ出発だ。帰りは大倉尾根、別名バカ尾根と呼ばれる長い尾根道である。

なるほど延々と木の階段が続き、下りはいいのだが登りはきついだろう。加えて私の苦手なガレた坂道も出てきた。すれちがう人はみんな辛そうだ。鍋割山方面と分岐する金冷シを過ぎ、山荘のある花立を通過する。人がどんどん増えてくる。すれ違う時に待つのはペースが乱れるし、ひっきりなしに挨拶するのもかなり疲れる。

天神尾根との分岐まで来たのは8時20分。この時には予定を変更して急坂を下りようと決めていた。分岐点の標識には45分の下りと書いてあったけれど、地図をみる限り私の足ではとても無理。1時間半かかるとして10時に着けば御の字だろうと予想。人通りは少ないだろうと思い、しまってあったクマ鈴を装着する。

ところが、結構登ってくる人がいたのである。ビールやポカリのケースをたくさん背負った歩荷の人とも4、5人すれ違った。高校生らしい20人くらいのグループもいた。それでも、大倉尾根に比べると全然静かだ。マイナールートと思われるこのルートにこれだけ登る人がいるということは、大倉尾根はどんな状態なんだろうと思うと、ルート変更は正解だったようだ。

下り坂の真ん中あたりで下ってきた単独行の人に抜かれる。道を譲ったときに、「ひどい尾根だね。見通しはきかないし、道はひどいし。」と言われた。確かに下り坂はきついし崩れているところが多数あったけれども、私の意見は全く違っていて、とても楽しい下りだった。

木々の間から見える表尾根の稜線がだんだん目の高さより高くなっていくのは何ともいえないし、なるべく安全な足場でルートを考えるのも楽しい。谷から聞こえる水の音もうれしい。ゆっくり下る分には息が切れることもないし、大汗もかかない。何より人があまりいない。天祖山でもそう思ったのだが、私の感覚は多数派の感覚とちょっと違うようなのだ。

尾根の入り口にあたる戸川出合に着いたのは9時55分、ほぼ見込み通りの時間。晴れて気温も上がってきて、ここから大倉まで帰りの林道歩きは快適だった。林道を横切って沢が流れているのには少し驚いたが、その流れで泥だらけのステッキを洗ったらきれいになった。

携帯の電池が切れて太陽電池に日が当たるように歩いていたら、戸川から2時間弱で大倉のつり橋が見えた。おそらく大倉尾根をそのまま下りるより時間はかかったと思うけれど、最高に気持ちいい下りだった。もしかすると、ひと気のない林道歩きが性に合っているのかもしれない。


急勾配の天神尾根を下る。足場がくずれた箇所多数だが、何より静かである。


戸川林道終点付近から、登り下りしてきた表尾根、大倉尾根を望む。下りてきてから、急に暖かくなった。

この日の経過
ヤビツ峠 9:15
9:35 富士見山荘跡 9:35
11:00 二の塔(昼食) 11:15
11:35 三の塔 11:40
12:20 烏尾山 12:25
12:55 行者ヶ岳 13:15
13:50 書策小屋跡 14:00
14:20 新大日 14:20
14:40 木の又小屋 14:45
15:20 塔ノ岳 15:30
16:50 丹沢山(みやま山荘・泊) 6:00
6:20 竜ヶ馬場 6:20
7:10 塔ノ岳 7:30
8:00 花立山荘 8:05
8:40 天神尾根分岐 8:40
10:05 戸沢登山口 10:15
11:50 大倉

[Apr 30, 2013]