021 燧ヶ岳again [Sep 27-28, 2013]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

秋になって涼しくなり、そろそろ山の季節である。スズメバチ大繁殖の噂なので、もはや9月末は晩秋となる尾瀬を選んだ。昨年は天気が悪くガスしか見えなかったので、再び燧ヶ岳に挑戦すべく、尾瀬沼ヒュッテを予約した。

昨年より早めに東京を出て、会津高原尾瀬口を11時のバスで桧枝岐に向かう。同じ路線のバスなのだが、時間によってコースが異なるためこの日は湯の花温泉を経由した。初めての風景が見られるのは楽しい。車両通行止めの沼山峠に着いたのは1時過ぎ。仕度をして1時30分に尾瀬沼への木道に入った。

今年の夏は暑いしスズメバチも怖いしで、山歩きは3ヵ月以上ぶりである。昨年来た時より経験は積んでいるものの、久しぶりで不安がある。ちゃんと歩けるかどうか半信半疑だったが、登り坂は意外とすんなりこなすことができた。前回より10分ほど短い時間で尾瀬沼ヒュッテ着。風景を見慣れて写真を撮る回数が少ないせいだったかもしれない。

まだ3時にもならないので、宿に荷物を置き尾瀬沼南岸を歩いて足慣らしする。こちら側は群馬県からの入山経路でもあるのだが、福島県側と比べると歩く人が少ないためか、やや道が荒れている。しかも、「クマ注意」の看板があり、さらには鐘まで置いてある。「早朝や夕方には鳴らしてください」って、そろそろ夕方なんですけど。

群馬県側への分かれ道である三平下のあたりまで来ると、ヘリコプターでの荷下し中であった。材木を何本もまとめて縛った束をヘリコプターで運んで降ろしてゆく。おそらく冬までの間に、傷んだ木道を修理するためだろう。よくみると、周囲には降ろした材木の束がいっぱい置いてある。ちょうどヘリコプターが来たので見ていると、20~30m離れているのに細かい水滴が飛んできた。30分ほど進んだあたりで、暗くなってきたので引き返す。

お風呂、夕食の後部屋でまったりしていると、館内放送で「ビジターセンターでスライド上映会があるので、ぜひご参加ください。」との案内があるので行くことにした。ビジターセンターは歩いてすぐなのだが、街灯などないから真っ暗である。ヘッドランプは部屋に置いてきてしまったので、携帯(通じない)のライトで足下を照らす。

スライド上映会では、ここ1週間の尾瀬の様子を撮影してきたばかりの映像で紹介してくれる。この時期は草紅葉が見事だが、よく見ると高山植物の花もわずかに残っているそうだ。6月の水芭蕉、7月のニッコウキスゲ満開の写真もあった。そういう時期は混むので、来るとしても定年後の平日ということになりそうだ。

40分ほどの上映会の後、ヒュッテに戻る時に見た星空はすばらしかった。二十年前に見た浜サロベツの星空を、久しぶりに見たような気がした。何しろ星が多すぎて、星座を見つけるのに苦労するほどである。星を見上げている間にもしんしんと冷えてきて、次の日は氷点下なんて声も聞こえる。何とかカシオペア、北斗七星、北極星を見つけて宿に戻った。


再びやってきました尾瀬。3本カラマツは根元にあと2本育っていて、あと何年かで5本カラマツになるかもだそうです。


朝の燧ヶ岳。今年は天気に恵まれました。

今回は可能であれば柴安嵓(しばやすぐら)まで行きたいと思っていたが、ヒュッテに着いて早々「明日の朝食は6時半からですが、大丈夫ですか?」と言われて半ば断念。昨年は6時から朝食だったので、朝の時点で30分の差は大きい。食事前に支度をすませたものの、出発は7時ちょうどとなった。

霧雨まじりの昨年とは違い、空は快晴、山頂がよく見える。ただ気温はそれほど下がらず、まだ早朝なのに薄着でちょうどいいくらい。浅湖(あさみ)湿原の登山口まで17分。ここから長英新道に入る。しばらくはなだらかな登りが続き、快調に距離を伸ばして行く。ところどころで道がぬかるんでいるのは昨年同様で、これは織り込み済である。

前回は休み休み2時間かかった1900m手前の急坂まで、今回は1時間半ほどでクリア。この時点で昨年のラップを上回った。ただ想定外だったのは休憩可能エリアに先客がけっこういて、ちゃんと休めなかったことである。やはり天気がいいと、たくさんの人が登ってくるということだろう。何と言っても百名山である。

急坂が始まると、さすがに時々休みを入れないとしんどい。それでも、前回は左右の景色が開けるまで相当歩いたような気がしたのだが、今回は比較的あっさりここまで来た。木々の間を歩くのも悪くはないが、向こう側の稜線や、下の景色を見るのはやはり気持ちがいい。時折左斜面が開けて、尾瀬沼の湖面がきらきら光るのが見える。

標高2100mを超えたあたりから、さらに苦しくなる。ここまで自分としてはハイペースで来たのが響いているようだ。前の日に若干歩いて準備運動したとはいえ、3ヵ月ぶりの山だし、標高2000mを登ったのは春の雲取山以来である。標高1600m、マイルハイのデンバーでも、「caution altitude sickness(高山病注意)」の貼り紙があるくらいだから、やっぱり空気は薄いのだ。

最後の階段をはあはあしながら登って、昼食スペースのミノブチ岳に到着したのは10時12分。昨年より15分位遅く出たのに、30分以上早く着いた。過去1年の経験が生きているようでちょっとうれしい。ここもすでに先客が何人かいたが、尾瀬沼を見下ろせる岩の上に座る場所を見つけてリュックを下ろす。

山並みが何重にも重なって、壮大な景色である。ヒュッテでいただいたお湯でコーヒーをいれてゆっくり飲みながら、周りの人達が、「あれが男体山」「あれが日光白根山」と山座同定しているのを聞きながら、何にしてもきれいだなあと思う。燧ヶ岳は東北地区No.1の高峰であり、ここより高い山はないのだ。

背中の方向を振り返ると、主峰である俎嵓(まないたぐら)、柴安嵓が間近に迫る。こちらも、昨年来た時にはガスの中だった。頂上にかけて、多くの登山客が動いているのも見える。空の青、山の緑、言うことのない絶景であった。

さて、今回は俎嵓まで11時に着いたら柴安嵓に挑戦しようと決めていたのだけれど、もう10時半近い。出発が遅れたこともあり、あきらめてゆっくり休むことにする。お昼に用意したスティックのメロンパンをつまみながら、コーヒーをおかわりし、インスタントのお汁粉を食べたところで、テルモスのお湯がなくなった。

11時ちょうどになったので出発。昨年ここを出たのが11時半だから、30分速いペースで来ている。これならゆっくりお風呂に入ってくつろげると思っていたのだが、もちろんそれほど甘くはなかったのである。


ミノブチ岳からの俎嵓(まないたぐら)。山頂近くには多くの登山者が見えます。


昨年はガスで何も見えなかったけれど、今年は見事に尾瀬沼が展望できました。

ミノブチ岳から俎嵓(まないたぐら)までの道は、麓から見ると燧ヶ岳の頂上を構成しているあたりで、尾瀬全体を見渡せるのできわめて景色がいい。尾瀬ヶ原方向からの登山道であるナデッ窪の道と合流するあたりからは、尾瀬ヶ原の全貌を眼下に望むことができる。これもまた、尾瀬沼とはまた違った壮大な景色であった。

計算が違ったと思い始めたのは、前回40分ほどで来た俎嵓まで1時間かかった時である。気温が上がり始めたので汗をかくし息苦しい。前回はガスっていたので涼しく、呼吸も楽だった。今回はとにかく息苦しい上に、なかなかペースが上がらない。俎嵓の頂上近くで休憩している人も多くて歩く場所が限られてしまったことも、多少は影響したかもしれない。

俎嵓は多くの登山客で混雑している上、尾瀬沼、尾瀬ヶ原、御池の3方向から続々と後続組が登ってきて、ゆっくり休むスペースがないのは残念なことであった。登り以上の急坂を下り始めたのはちょうど12時。前回は12時20分だから、この時点で30分のリードが20分に縮まっている。

下り坂は北向きなので岩が湿っていてところどころ水がたまっている。よく見るとアイスバーンが残っていたりして、どうにも歩きにくい。歩くというより岩につかまりながら下の岩まで飛び降りるという感じで、スピードが上がらない。その上油断すると滑る。ステッキの先が粘土質の泥にはまって何度も抜けてしまう。昨年もそうだったが、今年も御池への下りは難行苦行であった。

ただ景色はすばらしかった。俎嵓からの下りでは、熊沢田代と、木道が通じていない東田代の湿原がきれいに見えた。岩が続く山道は苦しいけれど、湿原地帯の木道にたどり着くとほっと一息つける。熊沢田代には1時35分に着いて55分に抜ける。この時点で、通過時刻は昨年とほぼ同じ。30分のリードがなくなってしまった。

次の広沢田代に着いたのが3時。昨年はここから御池まで1時間かかったから、今年もまたゆっくりお風呂に入る望みは絶たれてしまった。気はあせるのだが足が進まない。途中で何組かに抜かれたのは仕方がないけれども、尻もち3回、転倒1回はいただけない。単独行でケガでもしたら、即遭難である。

広沢田代までは眼下に望む湿原が心の支えとなったのだが、ここから御池まではそういう楽しみがない。その上、こんなに続いてたっけとおもうほどの急勾配の連続である。下の写真はそのうちの一枚で、こういう岩の坂道が御池までで30分以上、俎嵓からの合計では約2時間に及ぶのであった。

もっとも、この下りで抜かれた6人組がヤマレコに記録を投稿していて、下り2時間半の予定が3時間15分、体力よりも気を使う下りだったと書いてあったので、きつかったのは私だけではなかったようである。かなり山慣れている人達だったようなので(帰りのバスの中で、前日は会津駒ヶ岳に登ったと話していた)、あのグループが3時間15分なら私の4時間は善戦だろう。

御池の駐車場までようやく下りてきたのが4時。御池ロッジの前で靴を洗ったり身支度して、お風呂に入ったのが4時15分。10分で出て着替えて、時間節約のためここでビールとお土産(岩魚の甘露煮)を買って、バス停に着いたのが35分。40分のバスには余裕で間に合った。ここから2時間弱、会津高原尾瀬口まで非常食の残りでビールを飲んでようやく一息。ここから野岩鉄道、東武と乗り継いで大層疲れて家に着いたのが11時。

結局今年もゆっくりお風呂に入れなかったし、登りはともかく下りで時間を短縮できなかったのは心残りであった。加えて、帰ってから3、4日は太ももが痛んで仕方なかった。やはり間隔を開けてしまうと、山登りは厳しいということなのかもしれない。それはともかく、珍しく好天に恵まれて壮大な景色を楽しめたのは収穫でした。


俎嵓から1時間半、ようやく熊沢田代に出ました。


御池への下りは、こんな道が延々と続きます(下から撮ってます)。さすがにバテました。

この日の経過
沼山峠 13:30
14:30 尾瀬沼ヒュッテ(泊) 7:00
7:17 登山道分岐 7:17
8:47 1900m付近 8:50
10:12 ミノブチ岳(昼食) 11:00
11:50 俎嵓 12:00
13:35 熊沢田代 13:35
14:55 広沢田代 15:05
16:05 御池

[Oct 26, 2013]