008 亀田vsランダエタⅡ [Dec 20, 2006]

WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ(2006/12/20、有明コロシアム)
亀田 興毅 O 判定(3-0) X ファン・ランダエタ

不勉強なTBSのアナウンサーが「ニュー亀田」と連呼していたが、あれは出世試合ともいうべきアランブレッド戦の亀田である。誰が指示したのか分からないが、亀田はあのスタイルが一番強い。一部報道に「興毅は臆病で気が弱い」というのがあったのだが、気が弱いかどうかはともかく、臆病でなければ、つまり打たれる怖さを知らなければいいボクサーではない、と私は思っている。

もともと体が違うのだから、同じタイミングで打てば亀田のパンチの方が効く。おまけにランダエタのジャブを当てさせないのだから勝負にならない。1ラウンドこそ慎重に出たが2ラウンドから身上の手数が出始め、5ラウンドにはランダエタの息が上がってしまった。私の採点は117-110(12ラウンドに亀田に減点1)で亀田。完勝であった。

一昨日のブログで予想したように、前の試合、あの絶対のチャンスを生かせなかったことがランダエタの弱さだと思う。落ち着いて打ち合えば体格の差が出る。ましてや、ランダエタは巨額のファイトマネーで来る前から満足しているのだ。

柄の悪さやパフォーマンスにいろいろ批判はあるけれども、ボクサーは強さが第一。これからも精進してほしいものである。因みに、前座の大毅は余計。あんなもの、ゴールデンタイムに流すもんじゃない。

亀田・ランダエタ2の技術論

昨日の試合を見ていた家の娘が、「亀田がKOできなかったのはよくない。そもそも、あれが亀田優勢だったのかどうか、よく分からない」と言っていた。おそらく、ボクシングをあまり見た経験がなく、亀田父子のパフォーマンスに注目してテレビを見たライトファンの一般的な意見ではないかと思う。今日はそのあたりを書いてみたい。というのは、そうした層を取り込んでヘビーファンになってもらわないとボクシング人気は盛り上がらないからである。

ボクシングというスポーツの基本は、「相手のパンチをもらわずに、自分のパンチは当てる」ということである。判定基準の第一は有効なクリーンヒットなのだが、クリーンヒットというのは自分のパンチを当てなければ永遠にないし、有効か有効でないかというのは相対的なものだから、相手のパンチを入れさせずに自分のパンチだけ当てれば有効に決まっている。だから、昨晩の試合はランダエタにほとんどチャンスがない、亀田の圧勝であった。

私が何度も書いている体格の違いというのは、昨晩のように距離をとった場合に、亀田のジャブは当たるのだがランダエタのジャブは当たらないということが一つある(その他にパンチ力の差もある)。かつてのアランブレッド、今回のランダエタのようにもともと体格が違う相手とやる時には非常に有効で、かつ安全な戦法が距離をとってジャブを当てるということである。

かつて、フェザー級史上最強と今でも言われるアレクシス・アルゲリョが日本に来てロイヤル小林とやった時がそうだった。小林は後に1階級下のジュニアフェザー(今のスーパーバンタム)で世界チャンピオンとなったのだが、アルゲリョは後にジュニアライト、ライトと3階級を制覇したように、もともと体が違ったのである。

亀田の一番の良さというのは、手数が出るということである。日本のボクサーに共通の欠点として、手が動けば足が動かない、足が動けば手が動かない、相手を見すぎて手が出ないということがある。その点亀田のいいところは、足を動かしながら手も出るということで、見ている者にフラストレーションを感じさせることが少ない。手を出さなければパンチは絶対当たらないし、パンチが当たらなければ判定は絶対に相手のものである。

一方で、亀田の欠点(というか親父のトレーニングの欠点)は肩に力が入りすぎることである。昨晩有効だったパンチはタイミングで打った右ジャブと左ストレートで、足を踏ん張って肩に力を入れまくって打ったボディへのフックやロープ際の連打はさほどの効果がなかったことを、陣営にはよく考えてほしいものだ。

確かにライトファンはあれを喜ぶのだが、距離を詰めて相手のパンチが当たる範囲で、さほど効果のない連打を狙うというのはかなりリスキーである。そして、今回KOできなかった一つの原因は、チャンスにあまり効果のない連打をしてしまったことにあるのではないかと思う(ランダエタも顔面のパンチにはよく耐えた)。

もう一つ気になったのは、左ストレートを打った後で相手に正対してしまう(体の正面を向ける)ことが結構あったことである。今回は相手もサウスポーということで特にそうだったのかもしれないが、正対するということは足が揃っているということだから、その瞬間カウンターを食らえば倒れてしまう。もしかしたら、亀田は本来オーソドックススタイル(左が前)の方が合っているのかもしれない。

世界に目を向けると、一階級上のフライ級にかなり強豪選手が集まっているのに対し、ライトフライ級にはそれほどの選手はいない。その意味ではこのクラスに下げたのは大成功で、後は年齢的に自然と上のクラスに上げていけば、ちょうどその頃いまのフライ級上位も上のクラスに行っているだろう。今回のように距離を取る方法を選ばせた参謀がいるのだから、今後はぜひ足を踏ん張って肩に力を入れまくるのを改めさせてもらいたいものである。何度も言うけれども、興毅の才能だけは間違いなくあるからだ。