009 デラホーヤvsメイウェザー [May 6, 2006]

WBC世界スーパーウェルター級タイトルマッチ展望(2007/5/6、ラスベガスMGMグランド)
O オスカー・デラホーヤ(米、38勝30KO4敗) +140(2.4倍)
フロイド・メイウェザー・Jr(米、37戦全勝24KO) -170(1.6倍)

4階級目を勝って5階級目に挑む天才メイウェザーだが、相手がデラホーヤという前に、このデータをみていただきたい。メイウェザーがデビュー以来、どの階級にどれくらいいたかというデータである。
[スーパーフェザー(130lbs=59.1kg)]5年1ヵ月、27戦
[ライト(135lbs=61.4kg)]2年、4戦
[スーパーライト(140lbs=63.6kg)]1年8ヵ月、3戦
[ウェルター(147lbs=66.8kg)]1年6ヵ月、3戦
[スーパーウェルター(154lbs=70.0kg)]準備期間5ヵ月、転級初戦

一目で分かるのが、メイウェザーがキャリアの半分以上をスーパーフェザーで過ごしているということである。そして、ライト級に転向した後のホセ・ルイス・カスティージョとの2連戦が最も苦戦した試合。その後スーパーライトのガッティとの試合は完勝だったが、ウェルター級ではザブ・ジュダーにやや苦戦、格下のバルドミール戦では全くKOのチャンスすらない判定勝ちだった。

そして今回の試合はスーパーウェルター。スーパーフェザーと比較すると24ポンド、11kg違うクラスである。このクラスの選手を倒すだけのパワーは、メイウェザーにはない。それは相手がデラホーヤでなくても、ダニエル・サントスでも、シェーン・モズリーでも、アントニオ・マルガリト(ウェルターだが)でも倒せない。もともとスーパーフェザーの時ですらタイミングで倒すタイプだったのだから、ここまでクラスが上がってパワーで対抗できるはずがないのである。

だから、この試合はメイウェザーにとってかなり無理があるクラスでの戦いということになる。そうなると思い出すのはデラホーヤがミドル級でバーナード・ホプキンスと戦った試合。この試合でもパンチを出した数ではデラホーヤが上回っていたが、ホプキンスを倒せそうなパンチは一つもなかった。最後はご存知のとおりホプキンスのボディ一撃でKOである。

さらに、メイウェザーのディフェンスもクラスを上げるにしたがって変質している。スーパーフェザーでディエゴ・コラレスをコントロールした試合では、足を使ってコラレスのパンチを当てさせなかった。それが少しずつ足を使わないようになり、最近ではロープに詰まって上体の動きだけでかわす場面が目立つようになった。ナチュラルウェイトが10kgも違う相手のパンチをたとえガードの上からとはいえ受けていては、ダメージゼロという訳にはいかないのではなかろうか。

一方、6階級を制覇したデラホーヤの同様のデータは以下のようになる。
[ライト(135lbs=61.4kg)]11ヵ月、11戦
[スーパーフェザー(130lbs=59.1kg)]7ヵ月、2戦
[ライト(135lbs=61.4kg)]1年7ヵ月、7戦
[スーパーライト(140lbs=63.6kg)]1年1ヵ月、3戦
[ウェルター(147lbs=66.8kg)]4年2ヵ月、12戦
[スーパーウェルター(154lbs=70.0kg)]2年6ヵ月、4戦
[ミドル(160lbs=72.7kg)]1年、2戦
[スーパーウェルター(154lbs=70.0kg)]2年7ヵ月、1戦

同じスーパーフェザーからのクラス上げとはいっても、デラホーヤの場合ライト級から落として2戦しただけであり、そしてキャリアの最も長いのはウェルター級である。これは今回行われるスーパーウェルターと1階級しか違わない上、デラホーヤの場合さらに1階級上のミドル級でも試合をしている。

ウェルター以上の実績でも、JCチャベス第2戦、アイク・クォーティー戦、トリニダード戦、モズリー2連戦、カスティリェホ戦、バルガス戦、ホプキンス戦、そして先日のマヨルガ戦と多くの激戦を戦っており(4敗しているが)、すくなくともこのクラスでえりぬきのハードパンチャー達と五分以上の戦いをしてきたことは間違いない。

問題はデラホーヤのスタイルが、パワー系の選手に対してスピードで対抗するのはかなり得意としているのに対し、スピードのある相手を迎え撃つのはそれほど得意ではないというところにある。ただし、今一歩踏み込みの足りなかったトリニダード戦やモズリー戦と違い、メイウェザーのパンチはまともにカウンターで食わなければ大丈夫とデラホーヤは思っているはずで、だとすれば相打ちさえしていればいいということになる。

展開としては、メイウェザーは体のサイズが違うので動かざるを得ないし、デラホーヤはガードを固めて前に出ることになるだろう。その場合、10kgの鎧をつけてメイウェザーがちゃんとフットワークを使えるかどうか。デラホーヤのパンチをすべてかわすことは難しいので、どこまでダメージが少ない間にデラホーヤを痛めつけることができるかが鍵になる。

結論としてはデラホーヤ。なぜかというと、このクラスのちゃんとした選手とやって、少なくとも現時点のメイウェザーでは倒せないと思うからである。だから問題は、デラホーヤがマヨルガ戦の出来を維持できているかどうかで、それができているようならバルガス戦のように後半メイウェザーをつかまえるだろう。メイウェザーが勝つとすればコラレス戦のような展開だが、こんなに頻繁にクラス上げをしてなお勝ち続けることができるほど、ボクシングは甘くないと思うので。

オッズはメイウェザーFavoriteだが、最初-160位(JRA式にいうと1.6倍)でスタートしたオッズが一時-240(1.4倍)まで上がり、ここからデラホーヤが盛り返して現在のオッズとなっている。

WBC世界スーパーウェルター級タイトルマッチ(5/6 ラスベガス)
フロイド・メイウェザー O 判定(2-1) X オスカー・デラホーヤ

一言で言って、世紀のスーパービッグマッチというにはやや水準の低い試合。なぜそうかというと、メイウェザーは体に重りをつけてファイトしているような鈍い動きだったし、デラホーヤも12ラウンド動き続けるだけのコンディションを作ってこなかった。先週お届けした予想のまさにそのとおりに進んだ試合だったのだが、デラホーヤが9R以降失速してしまって判定を落とした。私の採点では114-114のドローであるが、柔道のように優勢をつければメイウェザーだから判定に異存はない。

試合直後のデラホーヤのインタビューで、「勝ったと思った」と言っていたが、これはトリニダード戦のときやモズリー戦のときと同じ言い分で、たしかにそう採点するジャッジもいた訳だからそう思っても仕方ないのだが、だからといって勝手にペースダウンしていいことにはならない。これでは、プロモーター業に熱心で走りこみが足りなかったと思われても仕方がない。すでにビッグマネーを十分すぎるほど手にしており、無理もないとはいえ。

少なくともデラホーヤに、マヨルガ戦やフェルナンド・バルガス戦のような覇気というか気力充実というところはあまりみられなかった。序盤2、3ラウンドまでは執拗にボディを狙ってアグレッシブに攻めていたのだが、すぐにいつものような攻め方に戻ってしまいメイウェザーの逆襲を許した。相打ちをすべきところで顔のガードを優先したような気もする。こうなってみると、デラホーヤはラストファイトで、「圧倒的に完敗するおそれのない相手」をうまく選んだといえなくもない。

試合自体はデラホーヤの作戦勝ち、というよりもメイウェザーは少なくとも現段階でこのクラスの一流を相手にするのはやはり無理である。終盤デラホーヤがふらついたのはメイウェザーのパンチに押されてというより自分のガソリン切れで、メイウェザーのパンチはポイントは取れるけれど相手を倒すことはできそうもない。これで、ガッティ、ジュダー、デラホーヤから3階級取ったことになるが、この3者のいずれもが下のクラスから上がってきていることは大きな要因だろう。

スーパーファイトというからには、どちらがどちらを倒してもおかしくないということでなくてはならない。3年半前のホプキンスvsデラホーヤでは、実際にホプキンスが必殺のボディブローを決めたし、いまなぜパッキャオが人気沸騰しているかというとKOするからである。今回の結果はメイウェザーがデラホーヤに勝ったというだけで、スーパーウェルター級で世界最強を示した訳ではないし、ましてやパウンド・フォー・パウンド(各階級最強)を印象付けたものでもない。有名選手同士を戦わせても決していい試合になる訳ではないということを改めて感じさせられた。