003 ティト、ライトに完敗 [May 14, 2005]

WBCミドル挑戦者決定戦展望(2005/5/14、米ラスベガス・MGMグランド)
O フェリックス・トリニダード(プエルトリコ、41勝34KO1敗) -190(1.45倍)
ロナルド・ライト(アメリカ、48勝25KO3敗) +160(2.6倍)

トリニダードは統一ウェルター級、統一スーパーウェルター級、WBAミドル級の元王者。ライトは統一スーパーウェルター級元王者。トリニダードはリカルド・マヨルガ戦に続く復帰第二戦。ライトはデラホーヤに勝ったシェーン・モズリーに連勝してかなり評価を上げている。

ライトの戦力自体は認めざるを得ない。サウスポーで懐が深く、的(顔)も小さい。ディフェンスに長けておりペースをつかむのもうまいことから、並の強打者ならコントロールしてしまうだけの力はある。トリニダードがホプキンス戦のように空回りする状況に陥る可能性はゼロではないだろう。

とはいえ、この試合は160ポンド(ミドル級リミット)契約で、WBCミドル級の挑戦者決定戦でもある。トリニダードがこの階級ですでに世界チャンピオンとなっているのに対し、ライトにはこの階級での実績がない。モズリーがもともとライト級から上げてきた選手であることを考えると、モズリー戦を過大評価することには若干の疑問が残る。

ましてや、トリニダードは並の選手ではない。あのディフェンスのうまいウィリアム・ジョッピーが見切れなかった右ストレートが必ずやライトをとらえるはずである。問題はマヨルガ戦でみられた試合勘の悪さが残っていないかどうかだ。オッズは前売り時点よりライトが買われてやや接近しているが、トリニダードファンにとっておいしいオッズである。ブラックチップで勝負。

なお、Fightnewsによると、トリニダードは記者会見でライトに向かって、「今からでも、やめた方がいいんじゃないの?さもなきゃ、あまり殴られないうちに、コーナーがストップしてほしいな(I hope your corner will not allow me to hit you a lot.)」と言ったそうだ。彼以外が言うと虚勢なのだが、彼が言うと本当のことに聞こえるのがすごい。

 

WBCミドル挑戦者決定戦(5/14、米ラスベガス)
ロナルド・ライト O 判定(3-0) X フェリックス・トリニダード

Fightnewsでは”surprisingly easy twelve round “と表現しているように、全く予想外のライト楽勝だった。その最大の要因は、WOWOWを見て感じたのだが、トリニダード(ティト)のスピードのなさであったと思われる。体をみる限り、絞ったティトに対しライトは明らかに腹回りに余裕がある。にもかかわらず、ライトの右ジャブをティトはヘッドスリップもウィービングもパーリングもできずに食い続け、しかも打ち終わりに左を出すこともできない。ティトの出来は過去見たことのないほど悪かった。

これは、ライトの上手さももちろん評価しなければならないものの、ティト自身の問題、それが過信による研究不足、練習不足であったのか、あるいは減量苦、年齢による限界であったのかもしれないが、それが大きな原因となったものと思われる。その意味で、ティトの再起への道は、ホプキンスの時とは比較にならないくらい厳しいものとなるだろう。

これでミドル級戦線は全く混沌としてきた。四団体統一王者バーナード・ホプキンスはすでに40歳を超え、現役生活を続けるインセンティブはビッグマネーファイト間違いなしのトリニダードとの再戦であったはずだ。次回防衛戦で新鋭ジャーメイン・テイラーと対戦するが、ここで防衛を果たすとあと目ぼしい挑戦者は元WBO王者のフェリックス・シュトルムくらいしかいない(IBF指名挑戦者サム・ソリマンはホプキンスを避けスーパーミドルで世界挑戦予定)。シュトルムでは、トリニダードと比べると興行規模(=ファイトマネー)が一桁以上違う。

それはライトについても同様で、ライトのボクシングはファンを引きつけないから、大きな興行とはなりにくい。ホプキンス自身にもそういうところがあるので、ホプキンスvsライト戦がもし実現したとしても、玄人受けはするだろうがビッグマネーファイトにはなりそうもない。だとすれば、ホプキンスが現役続行をするかどうか、するとしても面倒な四団体同時王座を維持し続けるかどうか不透明な状況になりつつあるといえそうで、ホプキンスの今後の動向が非常に気になるところである。

今回のトリニダードvsライト戦には再戦条項があるようで、ライトにとってはトリニダードとのビッグマネーファイトを避ける必要はないから、多分実現するだろうと思う。しかし、今回の対戦でトリニダードの商品価値がかなり下がったことは確かであり、中量級は新たなヒーローの誕生を待つ時代へと突入することになる。

その意味で、ライト以外でこの試合結果に張り切っているのはフェルナンド・バルガスだろう。トリニダード、デラホーヤにいずれもKO負けしているが、いずれの試合も大いに盛り上がったファン受けする試合であったし、何より彼はライトに勝っているというアドバンテージがある。もともとスーパーウェルター級なので、ミドル級転向に大きな問題があるとは思われず、何しろまだ若い。バルガスの今後の復活路線にも注目したいところだ。