014 内藤・亀田大毅世界戦 [Oct 11, 2007]

内藤大助vs亀田大毅世界戦決定![Aug 17, 2007]

「格闘技に番狂わせなし」は桜五郎(プロレスラー)の名言だが、実際ボクシングの試合で本当の番狂わせというのは百試合のうち1試合あるかないかである。「番狂わせ」といわれる場合のほとんどが情報不足に起因していて、有利とされる方がそれほど強くないか、不利とされる方がそれほど弱くないかのいずれかである。

今世紀にはいってからの世界戦でいうと、20回やって1回勝てるかどうかの選手がその1回を世界戦でやってしまったというのは、2001年のヘビー級世界戦でハシム・ラクマンがレノックス・ルイスをKOした試合がほとんど唯一のケースで、あとは冷静にみて実力差がそれほどなかったにもかかわらず絶対有利(不利)などといわれていただけである。

今年のケースでいえばドネアがダルチニアンをKOした試合と内藤がポンサクレックに判定勝ちした試合が番狂わせといわれるが、後から考えるとそれほど力の差はなかったというべきだろう。

さて、10月に内藤の持つWBC王座に挑戦することが決まった亀田弟だが、もしアクシデント(バッティング等による負傷)以外で亀田が勝ったとしたら、ラクマンがルイスに勝った以上の番狂わせである。もちろん、両者の年齢差が十歳以上違うことからすれば、内藤が急速に老け込み亀田弟が急速に伸びる可能性はゼロではないが、そもそもきちんとした指導者についていない弟が伸びるはずがないのであった。

亀田兄弟として一緒くたにされてしまう兄の興毅は、ともかくも世界戦前にOPBF(東洋太平洋)のフライ級チャンピオンをとっているし、ノエル・アランブレッドをはじめちゃんとした世界ランカーと対戦して経験を積んでいる。一方弟の大毅が対戦したそこそこの相手といえばせいぜいバレリオ・サンチェス(メキシコ・チャンピオン)くらいで、しかも打ちまくられてどう見ても負けのはずなのに露骨な地元判定勝ちだった。

週末にクリス・ジョン(インドネシア・WBAフェザー級王者)に挑戦する武本在樹も、おそらく10回やって1回しか勝てないのだろうからもし勝てば番狂わせだが(大体、何で榎に勝てないのに世界挑戦できるのか?)、大毅が勝てる確率はそれ以下であろう。そもそも、日本の上位ランカーで、亀田弟とやって負ける選手はいないのではないか。

それでも、大毅のファイトマネーは2億円だそうである。彼の商品価値があるのはこの試合までだろうから、まあ不愉快ではあるが我慢しよう。唯一懸念材料があるとすれば、これに勝てば次は兄の興毅との試合が確実であることからビッグマネーを前にして内藤が緊張しすぎてしまうことだけだ。これを勝てば次はデラホーヤとのビッグマッチというロバート・アレンとの試合で、あのバーナード・ホプキンスでさえ固くなったのである。

もう一つ予想すると、これは勝敗予想ほどの自信はないが、10月11日の有明コロシアムはアンチ亀田が半分以上を占め、亀田弟はブーイングを浴びるはずである。

内藤大助vs亀田大毅戦の真相に迫る[Aug 22, 2007]

なんかボクシング専門のブログみたいになってきましたが、とりあえず今日までご辛抱を。

ここ数日、時間があるとネット上を行ったり来たりして、内藤・大毅世界戦の情報を集めていた。ボクシングに目の肥えたライターは例外なく私と同じ意見、大毅では内藤の相手にはならないというものであった。だから、今日は技術論に戻って議論することはしない。

言ってみれば、常磐道で250km/hとか出して「俺には誰も追い付けないぜ!」とか言ってる小僧っ子が鈴鹿でFIに出るようなものなので、クラッシュするか何十周遅れるかという世界に違いないのだが、これまで分からなかったのは仮にも協栄ジム金平会長はプロ、そんなことが分からないはずはない。

TBSだって視聴率ばかり気にしている奴が大多数だとしても、スポーツ観戦歴が長ければその程度のことを考える人間がいないはずはない。にもかかわらずなぜ、3億円はリップサービスとしても相当の大金をかけてこんな試合をするのかということであった。

その答えがネット上にあった。あくまで真偽不明の情報であるが、「内藤戦が大毅のラストファイトになる」というものである。スポーツ新聞記事の表面だけ読んでいるとそんなバカなと思われるかもしれないが、実はこのことで私が不思議に思ったかなりの部分の説明が可能になるのである。以下、私の推測も含めてその情報についてご紹介したい。

3兄弟の中で大毅が最もボクシングの才能がなく、またやる気もないというのはかなり良く知られた話である(才能があってもトレーニング方法が間違っていては大成しないが)。大毅の希望は亀田兄弟フィーバーで名前を売って芸能界入りすることで、世界チャンピオンを張れる器でないことは本人はじめ亀父も金平会長もみんな分かっていることだ。その意味では内藤も言っていたが、大勢の前で歌える度胸だけは大したものである。

さて、そういう最終目標からすると、どういうタイミングでボクシングから身を引くのが最も効果的だろうか。これまでジョー小泉がうまいことやる気のない選手とマッチメークしてきたが、だんだん客の方も気づいてきた。「無敗の快進撃を続け、史上最年少世界王者を目指したが、惜しくも奪取はならなかった。生涯成績11戦10勝7KO1敗」という今回の試合がドンピシャだという気はしないだろうか。

亀父にとってみると、大毅で客を呼べないということは分かってきたし(どこの会場もがらがらだ)、最近TBSもいい顔をしない。興毅は仮にも元世界王者だし現在も世界上位ランカーだが、いまさら後楽園ホールでなど試合させたくない。となると、なんとかいまメキシコで修業中の三男がプロデビューするまで食いつながなければならない。TBSから大毅をダシにまとまったカネが入るこの機会は好都合であり、併せて大毅も世界挑戦者のハクをつけて芸能界に送り出したい。

TBSにとっては、フジのPRIDE騒動を見ているだけに、亀田一家との付き合いはバックギアに入れたいところ。加えて亀田一家に対する世の中の風向きもフォローからアゲンストになりつつあり、この一戦がターニングポイントになりそうな雰囲気は感じているはず。もちろん視聴率=広告収入は見込めるので手切れ金代わりに多目に払っても懐は痛まない。

そして協栄ジム。長男移籍時にグリーンツダジムに支払った金額は、そろそろ全額回収しておかないと危なくなってきた。だからTBSから大金をGETしようという点では亀父と利害は共通。そしてこの試合大毅が負けても(負けるが)、後に興毅も坂田もいるから全く問題ない、というよりはむしろビッグマネーが期待できる。いずれ次の試合はタイに行かなければならないし、だとすれば嫌な仕事は全部内藤と宮田ジムにやってもらおうというくらいは、金平会長なら考えていそうだ。

こうして考えてみると、大毅が負けて困るのは本人含めて誰もいない。問題は大きなダメージなく試合を終えることができるかということと、芸能界入りがそんなにうまく行くかということである。TBSも露骨なことはできないので「SASUKE」と「筋肉番付」くらいには出してもらえるのだろうが、あのキャラクターがそんなに好まれるとは思えず、その点では亀父の目論見は大きく外れることになるだろう。

そんなことを考えていたら、大毅のスパーリングパートナーは6回戦ボーイという新聞報道である。どうやら、ケガをしないことに全神経を傾けているようだ。「オレはもっと先をみている」そうだけど、一体どこを見ているのかな?勝つのはともかくいい試合をしようと思っていたら、本田秀伸とか(バレラがハメドとやったとき、仮想ハメドとなってスパーリング)とやるべきじゃないの。というわけで、内藤戦の結果は今のところ、◎勝手な理由をつけて試合放棄、○勝手な理由をつけて試合そのものをキャンセル、△4Rくらいで壊される前に座り込む、といったところでしょうか。

内藤vs大毅戦・興味深い展開に[Sep 11, 2007]

あと1ヵ月に迫ったWBC世界フライ級タイトルマッチ、チャンピオン内藤大助対挑戦者亀田大毅戦が興味深い展開になりつつある。

まず第一は、試合の透明性・公平性を担保するため(今さら・・・)、日本ボクシングコミッション(JBC)が異例としか言い様のない介入をしてきたことである。いったんは、チャンピオン(日本製)と挑戦者(メキシコ製)が異なるグローブで対戦すると発表されていたが、両者メキシコ製のグローブとなったことに加え、身体検査・計量でのJBC立会い、レフェリー・ジャッジの隔離などが行われることになった。

何しろ協栄ジムといえば「毒入りオレンジ」、亀田一家といえば「不当判定(より直接的には800なんとか)」が代名詞となっているくらい、試合の不透明性・不公平性には定評のある組合せなのである。そして、今回初めてフライ級リミットに落とす(はずの)亀田弟にとって、計量がシビアに行われるというのはそれだけでプレッシャーになる。実は世界的に計量不正というのは決して珍しくないのである。

なぜ今さらこんなシビアなことを行うのだろうと考えると、非常に興味深い。実のところ、ジャッジの見方によっては大毅の勝ちともとれる(例.興毅vsランダエタ第一戦)くらいの試合だったら、内藤の負けで仕方ないというのが大方の見方だろうし、2ポンドくらいのウェイトオーバーではとても埋まらないくらいの実力差が両者にはある(それでは世界タイトルマッチにはならないが)。グローブの違いなんて初めから関係ない。

普通に考えれば、興毅vsランダエタ第一戦で苦情が殺到したJBCが、面子にかけてそのスポーツ性を主張したということなのだが(ファイティング原田会長はフライ・バンタム2階級制覇チャンピオン)、うがった見方をすると、これは協栄ジムの仕掛けではないのだろうか。つまり、協栄ジムとしては、これ以上ドロ舟亀田号に乗っていられないということではなかろうか。

TBSと商売するために亀田一家と組んだ協栄ジムであるが、イメージが悪くなるばかりで兄弟の実力は少しもアップしない。せっかくWBAに働きかけて楽な相手と王座決定戦を組んでやったのに、きれいに勝てなかったばかりか亀父は自分の手柄のような顔でますます図に乗って言うことを聞かない。その間に苦労人坂田は世界チャンピオンとなり、暴力事件で謹慎していたサーシャも戻ってきた。

むしろこの機会に先代金平会長の遺したダーティーイメージを解消するため、このタイトルマッチを利用する方が利口である。どうせどんな手を使ったところで今回の勝負は望み薄である(サーシャに大毅のお面でもかぶせない限り)。だったら、われわれはフェアプレーでやってますよということを世間に知らしめることにしよう。どうせセコンドに付くのは亀父なのだ、というのが協栄ジムの腹積もりではないか。

二番目に興味深いのは、内藤陣営に続々応援団がついたことである。以前からの関係である白井・具志堅ジム(具志堅はもともと協栄の選手)に加えて、スパーリングパートナーとして川嶋勝重・名城信男のスーパーフライ級元世界王者が名乗りを上げ、苦労していたスポンサーにも、日本ベンチャー協議会(楽天とかヒルズ族)が付いたようである。内藤にとってはファイトマネーの点も含めてネックが次々と解消されている。

仮想チャンピオンを4・6回戦ボーイにやらせる大毅と、仮想6回戦ボーイを世界チャンピオンにやってもらう内藤。こうしたトレーニングの差が実力差に加わるとすれば、内藤がどんなパフォーマンスを見せてくれるのかたいへん興味深い。そして、これだけ外堀が埋まってしまうと、亀田一家としては「計量に失敗した」とか「手を痛めたから試合は中止」だとか言えなくなってくるので、ますます面白いことになると思うわけである。

最終予想・WBC世界フライ級タイトルマッチ(2007/10/11、有明コロシアム)
O 内藤大助(宮田、31勝22KO2敗2引分け)
亀田大毅(協栄、10戦全勝7KO)

勝手な理由をつけて亀田陣営が試合そのものをキャンセルする可能性は決して小さくないとみていたが、無事(?)公式計量も行われ調印式も済んだ。記者会見で「負けたら切腹や!」とのたまい、「なんで?」と冷静に内藤に切り返されて、「(刃物は)お前が用意せい!」などと逆上したらしいので、減量苦で頭が回っていないようである。もっとも、「俺のびごえ(美声)を聞かせてやる」とも言っているので、そもそも国語能力に問題があるのは確かである。

さて、リングに上がってしまえば誰も助けてくれない。「俺が勝つに決まっている」と根拠のない虚勢を張ってはいるものの、おそらく1R始まってしまえば勝ち目のないことは本人にも分かるはず。最近になってようやくスポーツ新聞も本音が出てきて、「いずれにせよ王者有利は動かない」という論調になってきたが、そんなことは少しでもボクシングを見ている者にとって常識であった。

また、かねて指摘したように初めてフライ級に落とした減量の影響で、大毅の調整は十分でない様子。おそらく試合前に反動でドカ食いしてさらに調子を悪くする可能性もある(トレーナーがまともでないので)。だとすればどうするか。まず考えられるのは、最初から最後まで逃げ回って判定に持ち込もうとすることで、見栄も体裁もなくこれをやられたら内藤はかなり面食らうはず。ただ、内藤も「KOでも判定でも勝ちにいく」と言っているので、少しはそのあたりは予想しているだろう。

次に考えられるのは、まともに行ってもダメなので、とにかく頭から突っ込んでいくこと。内藤は試合間隔が短い上、目を切りやすいことはポンサク第二戦で証明済み。しかし、反則をとられるより前に内藤に動かれて「見えないパンチ」を食らう可能性が大きい。内藤の目と同様、大毅は鼻血を出しやすく、そうなると凄惨な試合になるだろう。

上の二つのケース以外、つまり大毅がガードを固めて前進するいつもの亀父直伝スタイルで臨めば、中盤8ラウンドくらいまでに内藤のKO勝ちとなる。少しは勝負にしたいと考えるなら上のどちらかの方法をとる他はないが、ここまでヒール(悪役)に徹してきたのだから、せめて後者の方法、つまりダーティーファイトで意地を見せてほしいものである。もっとも、その場合でも7、8割方は内藤KO勝ちで動かないかもしれないが、もしかすると負傷判定くらいには持ち込めるかもしれない。

結論としては判定でもKOでも内藤勝ちで動かない。内藤には、内容とか国民の期待とか考えないで普通に実力差をみせてほしい。おそらく試合後には亀兄が「次は俺とやれ」となるはずだが・・・。ちなみに、この試合10日夜現在海外ブックメーカーのオッズが出ていない。あまりまともな試合だとは思われていないということである。

WBC世界フライ級タイトルマッチ(10/11、有明)
内藤大助 O 判定(3-0) X 亀田大毅

試合終了するやいなや、採点結果を聞いたのかというタイミングで亀田一家はチャンピオンコーナーのみならずファンにも関係者にもあいさつせず集団脱走。途中採点ですでに大差が開いていたので、覚悟の行動だろう。きっと今頃言い訳を考えているに違いない。私の採点では116-108で内藤。この中には内藤の減点1、大毅の減点3が含まれる。

今夜の試合の第一殊勲賞はJBC(日本ボクシングコミッション)だろう。はっきりいって低レベルの試合に、世界的名レフェリー、ビック・ドラクリッチ氏の起用である。ジャッジもデイブ・モレッティ氏など本場ラスベガス並みの布陣で、ボクシング界の威信を賭けて臨んだ。12Rのレスリング行為の減点合計3点など、世界水準では当り前だが亀田ルールではこれまでOKだったのである。

試合としてみると、正直なところ感心しなかった。ほとんど唯一の懸念は内藤が平常心で戦えるかどうかだったのだが、リングインの時にはすでに感極まっていたので「これはまずい」と思った。3Rに右目を切って余計にあせってしまい、動きがぎこちない。4R、8Rと途中採点で優勢だったので持ち直したが、序盤にダウンでもしていたら危なかったところである。

大毅も正攻法(?)の亀父直伝スタイルできたので、オーソドックスにジャブを突いていても良かったのに、ボディを狙いに行ったのがどうだったのか判断が難しい。ボディを打つには接近しなければならず、ここで左フックをもらって目を切ってしまった。逆にそうさせなかった大毅を誉めるべきかもしれない。

4Rの途中採点を聞いてからは内藤ペース。クリンチをうまく使ってロープにつまる場面をほとんど作らなかった。もともと、ロープにまっすぐ下がってフックを打たせてくれる一流選手などいないのだから、大毅がいくら首をひねっても無駄である。最後は苦し紛れのレスリング行為(それまでも再三見せていた)で最初に減点1、二度目に減点2を食らってジ・エンドとなった。

試合後に内藤が言っていたが、「どうしても勝たなくてはならないというプレッシャーが相当あった。ポンサク戦以上だった」ということで、まずは亀弟のメッキが剥げたことを安心したい。こういうプレッシャーがなければ、おそらく内藤は頭をつけて打ち合いに応じKOしたのではないかと思う。そして、脱走してしまったため亀兄の挑戦表明がみられなかったことも残念であった。

最後に、次男は7割方これで引退するのではないかと思う。