015 内藤・亀田大毅戦の技術(反則)論[Oct 15, 2007]

今日、JBC(日本ボクシングコミッション)の倫理委員会が開催されて、亀田父子の反則・反則教唆に対する処分が決定される。大毅本人と以前観客との騒動で厳重注意を受けている亀父のサスペンド(ライセンスの停止)という線が強くなってきているが、今日・明日で今回の世界タイトルマッチを総括してみたい。今日はまず、今回の試合の技術面に絞って議論してみる。

今回の試合、12Rの自殺行為は明日の問題として取って置くとして、それまでの試合展開についてどう評価するかというと、一言でいって亀田大毅の大健闘である。これはおそらく、ボクシングを見慣れた人ならかなりの部分が認めるのではないかと思う(全員ではないにせよ)。

直近の2つのタイトルマッチ、WBAフェザー級のクリス・ジョンと武本、WBAスーパーフライ級のムニョスと相澤、いずれもワンサイド、チャンピオンがほぼフルマーク(1Rも落とさない)のTKOないし大差判定勝ちである。

しかし今回の内藤・大毅戦は、反則減点を除くと、私の採点でもジャッジの一人の採点でも3ラウンドを大毅に与えている(あとからもう一度VTRを見たら2Rがせいぜいだとも思ったが)。ラウンドで9-3ということは普通に行けば117-111の6ポイント差で、決して圧倒的大差ではない。

実際、内藤はもちろんだが大毅にもダウンに近い状態はなかったし、最終ラウンドも、「もしかしていいのを一発もらったら内藤でもダウン取られるんじゃないか」と心配になるくらい、大毅のパワーは残っていた。それに、内藤の強打をかなり受けていた(ボディーが大部分だが、顔面にも入っていた)にもかかわらず、けろっとして向かっていったタフネスは、なかなかのものであった。だからこそ内藤は試合後に、「さすがに練習しているだけあって、予想以上にやりにくかった」と認めたのである。

そして、反則云々で全てけしからんという論調になってしまったが、実力で劣る挑戦者が、レフェリーストップされそうな古傷を持つチャンピオンの傷口を狙っていくというのは、それがクリーンファイトなのかスポーツマンシップに則っているのかはさておき、作戦として当然といえば当然なのである。問題は、大毅がそうしたこと(反則行為)を見つからないようにやれるテクニックがなかったということなのだ。

例えばレスリング行為(投げ)をするのなら、パンチを振るって行って相手がクリンチしてきたところを振りほどくようにすれば、「あいつが組み付いてきたから仕方なくああなった」と言える。またバッティングでも、パンチを出しながら頭が前に行けば誰にも咎められないのに、パンチを出さないで頭だけ出せばそれはただの頭突きである。

確かトリニダード戦だったと思うが、ホプキンスが右強打を決めたその動作でショルダータックルをかましてダウンを取った試合があったが、要はそういうことである。やり方が下手くそなのだ。

兄の興毅が「ヒジでもええから、目に入れろ」というようなことを言った音声がテレビで流れたが、そんな高度なテクニックは大毅にはない(言う以上、興毅にはあるのだろう)。そんな実力差がありながら、大毅はあれだけがんばった。大したものである。これまで私は大毅には日本ランキングの力もないと言ってきたが、先日の動きはこれまでのベストで、日本ランキングに入るくらいの力はあると認めるにやぶさかでない。

だからあの試合、12Rに当たらなくてもいいからパンチを振り回し続け、ラウンド終了のゴングまで攻め続けていれば、そして試合終了後本人だけでもいいから内藤コーナーにあいさつ(頭を下げなくても)していれば、道中あれだけ反則を繰り返していたにもかかわらず、大毅に対するボクシング界の評価(=商品価値)は試合前より全然上がったはずなのだ。これは断言してもいい。

にもかかわらず、なぜにあの一家はそれができなかったのか。それは明日また。

 

内藤・亀田大毅戦の戦略(?)論(その1)[Oct 15, 2007]

亀田史郎 セコンド資格無期限停止
亀田大毅 ライセンス停止1年間
亀田興毅 厳重戒告
興毅にも(なお、試合のセコンドに入ることを禁じます)くらい入れても良かったと思うが、まずは妥当。かなり重い処分である。

世の中に受け入れられない人にありがちな傾向として、世間的な価値観とか権威といったものを否定することがある(私にも非常に覚えがある)。そしてそれと同時に(全く矛盾するのだが)、賞賛されたい、評価されたいという思いもまた強烈にあるのではないか。

亀田史郎氏(亀父)の場合、おそらくはその個人的な資質により、長らく世の中に受け入れられなかったのであろう。だから、少しは身に覚えのあるボクシングを息子達に教え込んだ。世間並の価値観など否定しているから、学校に行かせなくてはとか人様に迷惑をかけないように育てるとかいったことは考えない。ただひたすら、息子を強くして金を稼ぎ世間の奴らを見返すことしか頭になかったものと推察される。

同じようなことを別の道でやろうとする人達は多い(いわゆる教育・・・以下自己規制)が、彼の場合目の付け所がよかったのと、たまたま長男に非常にボクシングの才能があったことから、それはうまく行った。彼は望みどおり金を稼ぎ、TBSその他社会的地位のある人達から下にも置かない扱いを受けることができた。まさに世間の奴らを見返すことに成功したのである。

だから、亀父の望みは、いま(タイトル戦前)の状況が永遠に続くことであった。もともと世界チャンピオンがなんぼのもんやと思っているし、外国から負けにやってくる選手を相手に、世界前哨戦と銘打って延々と「亀田場所」をやっていればよかったのだ。だから、「最年少世界王者」などという記録をキャッチフレーズに視聴率を上げようとするTBSの思惑など、実は迷惑以外の何ものでもなかった。

 

内藤・亀田大毅戦の戦略(?)論(その2)[Oct 16, 2007]

今回の内藤戦、タイトルマッチが決まってからも亀父がさんざんゴネたという情報が流れている。長男はともかく、次男が内藤に勝てないことは火を見るより明らかなのだから、その考えは正しい。しかし、結局のところ亀父はTBS・協栄ジムに押し切られた。観客動員も視聴率も下ってきている上に、スポンサー(広告企業)もどんどん離れていっているからである。

そしてここが亀父の亀父たるところなのだが、勝てそうにないならどうやってダメージを最小限に留めるかと考えるべきところをそうせず、反則でも何でも使って勝つ、でなければ試合をぶちこわしにして訳を分からなくしてしまおうと考えたのである。ファーストクラスに乗れなければビジネスでもエコノミーでも飛行機に乗れればいいやと考えず、ファーストに乗せないなら妨害して飛ばさないということである。

亀父にとって、自分を賞賛しない世間など受け入れられるものではない。試合が迫るにつれ、亀父の中では自分をこんな境遇に追い込んだ世間、TBSや協栄、そして本物の権威(チャンピオン)である内藤への憎しみが、おそらく膨れ上がっていっただろう。

加えて、有明コロシアムのあの雰囲気である。会場の大部分が内藤コール、大毅にはブーイング、内藤のトランクスにはスポンサーいっぱい、亀田家のスポンサーはどんどん引き上げである。頭に来た亀父は、レフェリー注意の時に「しゃー、なんやこら!」と内藤を威嚇するに至ったのであった。

しかし、TKO狙いで傷口を狙い打ちする(そのために、リングを規程より狭くし、床も動きにくいように柔らかな素材を使った)作戦は、もともとそこまではボクシングだから内藤チャンピオンには通じなかった。それで、おそらくはTKOが難しくなった7、8Rあたりから、「試合そのものをぶちこわす」つまり反則作戦に出たのである。

これは、単にインターバル中に指示したかどうかという話ではない。おそらく報道陣をシャットアウトした試合前何日かで、集中的に指示し練習したのではないか(でなければサミングなんてそう簡単にレフェリーの目を盗んではできない)。だから試合直前興毅は何やら引きつったような顔でインタビューを受けていたし、12R前の指示「最後やからな、やってこい!」と言われて大毅がサイドスープレックスを繰り出したという訳である(ちなみに、以前の試合でもあれをやりかけたことがある)。

結局のところそれ以上のことはできず(大毅も疲れていてガードをするだけで精一杯)、そうでなければ中差の判定で済むところが大差の判定になって言い訳がきかなくなった上に、減点と明らかなボクシングルールからの逸脱という証拠によって処分を受けた。亀父の思惑は完全に外れ、ボクシング界に彼のいる場所はなくなってしまった。ファーストじゃなきゃ嫌だと駄々をこねた末に、エコノミーにさえ座れなくなったのである。

無期限というのはJBCに頭を下げない限り復帰できないということだから、おそらく亀父絡みの試合が組まれることは今後ないだろう。大毅は、ボクシングが好きではないからあまりショックはないかもしれないが、再びリングで脚光を浴びることはない。問題は興毅で、彼の才能はこのまま潰してしまうにはあまりにも惜しい(JBCもそう思ったから厳重戒告にとどめた)。

興毅がリングに戻るためには、興毅自身が「キャンセル待ちでも結構ですから」という謙虚な気持ちを天下に示した上で出直すことが必要である。亀父にそれを期待するのは無理だが、興毅にそれができるかどうか。なんとか共倒れは避けてほしいとは思うのだが。(なんとなく、興毅だけはお詫び会見をするような気もしている)