220 二十二番平等寺 [Feb 26, 2016]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

太龍寺から「いわや道」というルートも考えたが、入口が分からないので撤退を決めたのが12時45分、そこから山門まで戻るのに5分くらいかかった。太龍寺は山門から本堂エリアまで遠い上に、ロープウェイ駅からだと反対側なのである。

道すがら、「こちらからはロープウェイ駅に行けません」としつこく書いてあるのは、実際にこちらに来てしまう人が少なくないからであろう。山門からは行きに通った登山道には入らず、二輪車用の舗装道路を下って行く。かなりの急傾斜なのでスピードは出ないが、息が切れることはないのでその分早く歩くことができる。

急坂をスイッチバックしながら下って行くと、広い四輪車用の駐車場があった。車で来た人は、ここに止めて急坂を登ることになる。登りだと、本堂まで30分くらいかかりそうだ。しかし、せっかく広い駐車場なのに車は1台しか止まっておらず、料金徴収所らしい小屋にも誰もいなかった。

小屋の傍らにある蛇口から、沢水だろうか、盛大に水が出続けているのは何ともいえず寂しい風景であった。水はまだ十分にあるので素通りする。舗装道路は方向を変えながら続く。これでいいのかやや不安になるが、下りの一本道なのでここを進むしかない。

ここから県道との合流点、民宿坂口屋跡まではそんなに時間はかからないだろうと思っていたのだが、その予想は大きく外れることとなった。まず第一に、遍路地図や国土電子ポータルでは一本道のように見えるのだが実は一本道ではない。第二に、簡易舗装や砂利道が出てくるのでそれほど速く歩けないからである。

第一の点について詳しく言えば、遍路地図では一本道を進むとT字路で坂口屋に突き当たることになっているが、最初に出てくるT字路も、登山道と舗装道路の合流地点も、次に出てくるT字路も、坂口屋とは全く違う場所なのである。T字路は坂口屋のところにしかないはずだからおかしいなと思いながら歩くのだが、どうにも不安である。

舗装道路との合流地点では下りたところに行先表示がなく、たまたま後ろから来た人が「こちらでしょう」と道なりに進み、100mほど先の電柱で「ありましたよ」と例のへんろ道シールを見つけてくれたので助かったが、一人だったら逆方向に進んだかもしれない。というのは、ここで道なりに進むと、方向的には逆なのである。たいへんまぎらわしい。

その合流の先でも道は入り組んでおり、T字路・十字路を越え、集落内の民家の間を進んでようやく坂口屋の裏手に出た。時刻はすでに2時。太龍寺から1時間以上と、予想以上に時間がかかってしまった。

坂口屋はつい先だって廃業したのだが、道路の反対側が広場になっている。ここでいったんリュックを下ろして一息つく。さっき後ろから来て私を追い抜いた人もここで休憩していて、この日どこまで歩くか聞かれた。私がJRの駅まで歩くというと、「本数がなくて大変でしょう」と言われた。そのとおりである。

10分休んで2時10分に出発。まだ平等寺まで7kmあり、さらに平等寺から新野まで2kmあるので、4時半新野発の電車はちょっと無理である。次は6時半の列車になるのでご朱印をいただける5時までに平等寺に着けばよく、それには3時間近くあるからまだ余裕がある。

そう考えてリラックスしたのがよかったのか、あるいは県道になって路面状況がよくなったためか、阿瀬比までの2.5kmを25分ほどで歩いてしまったのには自分でも驚いた。時々道幅が狭くなるので車に注意が必要だが、点々と農家が続く景色はのどかであり、何と言ってもこの日初めての平らな道だったのだ。

WEBでよく見る阿瀬比へんろ小屋で小休止。このへんろ小屋は道端に建っていて、狭い幅なのに数人は座って休めるように工夫されている。2時40分に出発。平等寺まであと4.5km。再び峠越えとはいっても、標高差160mであれば大したことはないと思ったのだが。


2015年に廃業した民宿坂口屋。ここまで下りるのに結構時間がかかった


坂口屋から阿瀬比までは、道は狭いが意外と早く着くことができた。県道を突っ切って大根峠側にある遍路小屋で一休み。


阿瀬比集落から大根(おおね)峠方向を望む。眺めは穏やかなのだが、けっこうきつい。

大根(おおね)峠はこの日3回目の登り下りである。鶴林寺・太龍寺が標高500mを越える山なのに対し、大根峠は標高200mほど。楽ではないだろうがそれほど苦戦はしないだろうと思っていたのだが、正直なところかなりきつかった。

「四国遍路道指南」で真念が歩いているのは、もちろん大根峠越えである。ただ、遍路地図を見ると、阿瀬比から東へ進んで阿南山口で桑野川に出て、そこから平等寺に向かう道の方が平坦で歩きやすいのではないかという気がしていた。もしかして時間的にはその方が早かったかもしれない。

阿瀬比の集落から大根峠の方向を見ると、それほどの高さはないように見え、またのどかな農村の風情だったので歩き始めはそれほど気にはならなかった。ところが、舗装道路は登山道になり、当然のように擬木の階段道が現れる。やはり平坦路を大回りすべきだったかと思う。今更引き返せないのでがんばって登る。

それでも、阿瀬比からは30分、登山道に入ってからは15分ほど、3時10分過ぎには大根峠に到着した。峠の表示板には「阿瀬比まで1km、平等寺まで3.5km」と書いてある。あとは下りだから大したことはないだろうと思っていたら、ここがまたたいへんな難所であった。

傾斜は登りよりもかなり緩やかだし、足もとも柔らかく負担がかからなくていいのだけれど、杉林や竹林を縫って道が延々と続くのである。傾斜がきついとスピードは出ない反面、高度は確実に下がって行くという実感が得られるのだけれど、この下りはなかなか目的地に着かないという感じを受けながら歩くことになる。

3時10分から3.5kmの下りであれば、4時に平等寺に着いておかしくはないのだが、4時10分前になってようやく麓の集落までたどり着いた。左手にへんろ休憩所が見えるけれども素通りして先を急ぐ。集落内をしばらく歩いてようやく桑野川沿いの道に出た。

ここでまたがっくり来たのが、最初に見た行先表示では「平等寺まで800m」と書いてあったのに、次の表示では「平等寺まで1.4km」と逆に増えていたことである。車道と歩道が違う場合はそういうこともあるが、ここは一緒である。結果的には長い方が正解だった。

川沿いのほぼ直線の道を進むけれども、行けども行けども寺らしき建物は見えてこない。あるいは行き過ぎてしまったのかと後ろを振り返るけれども、そういうこともなさそうだ。こういう時に限って、行先表示もないのだ。あきらめて歩く。「いっぽ一歩堂」とはよく付けたものだと思ったりする。

4時15分、ようやく左手に平等寺が見えてきた。大根峠から3.5kmの下りに、1時間以上かかってしまった。


大根峠。標高200mと鶴林寺・太龍寺ほど高くはないけれども、この日三度目の登りはかなりきつかった。それと、平等寺までは本当に3.5km?と思うくらい長かった。


山道や竹藪が延々と続く。遍路小屋脇を過ぎて集落に入り、もうすぐと思ったのだがそこからもまだまだ着かない。


やっと見えてきた平等寺。山門から本堂まで、コンパクトだ。太龍寺が広すぎたせいか余計そう感じた。

白水山平等寺(はくすいさん・びょうどうじ)。山号の白水は、弘法大師空海が掘ったといわれる「白水の井戸」から採られている。

山門から一直線に石段が上がって行き、てっぺんに本堂がある。この日は鶴林寺も太龍寺も山門から本堂までの距離が結構あったので、コンパクトに感じた。納経所は山門近くにある。時間ぎりぎりなら先にご朱印をいただくことになるが、まだ40分以上あるので大丈夫だろう。

石段を上がるに従い、風が強くなる。本堂エリアでは、帽子を押さえていなければ飛んで行ってしまいそうなくらいである。本堂でこの日5回目、大師堂で6回目の読経。風が強いので、そそくさと石段を下りる。ご朱印をいただいてひと息つき、時計を見ると4時45分になっていた。

さて、列車の時間まで1時間半以上ある。新野(あらたの)経由JR阿波福井駅まで歩くのは、時間的に問題ないだろう。ここでもう一つの選択肢は、真念が歩いた「寺の前川わたり二十丁程は村続き 月夜村 此の名子細ありたづねられるべし」とある月夜村を通るかどうかである。

この道は、弘法大師が歩かれた際に闇夜で水もなく、例によって加持されたところ清水が湧くとともに水底に光る石が現れて闇夜を照らしたという伝説があり、月夜御水庵という番外霊場が置かれている。ここを通るルートも考えられるが、問題はこの日4度目となる峠越えの道である。

2時間くらい時間の余裕があればこのルートも考えられたのだが、あと1時間半しかない。国道55号まで約5kmの峠越え、そこから1km強阿南方向に戻ってようやく阿波福井駅であり、大根峠から平等寺まで大苦戦したことを勘案すると、ここは無理はできないという結論に達した。

当初の計画通りJR新野駅に向けて歩く。ここは交通量の多い道路で信号もあり止まらなくてはならないが、峠道ではないので安心して歩くことができる。予定通り30分で到着。駅前には商店や事務所がいくつかある。考えてみれば朝スタートした道の駅以来のにぎやかな街であった。適当な横道を入ってJRの線路を越える。

線路を越えて突き当りの県道を南下し、国道55号に出て阿波福井駅に向かう。さすが国道だけあって、農協やホームセンター、飲食店もある。時折トラックが大きな音を立てて通り過ぎて行く。日が落ちて、あたりはだんだん薄暗くなっていく。

右手を見るとはるかに山並みが続く。標高差は100mではすまないような印象である。月夜村を目指した場合には、あの山道を歩いたことになる。おそらく街灯はないだろうから、かなり心細い歩きとなるところだった。ちょっと心残りではあるが、またいつか来る機会もあるだろう。

阿波福井駅に着いたのは6時ちょうど。2月なのでその時刻にはすっかり暗くなっており、このルートで正解だったようだ。自動販売機でコーラを買い、朝から持っていた非常食の菓子パンを食べる。携帯の万歩計をみると4万9千歩。前日よりも5千歩ほど多かった。待合室で30分ほど待って列車に乗る。阿南に戻る車窓からは、暗くて何も見えなかった。

[ 行程 ]太龍寺 12:50 →(4.4km) 14:00 坂口屋前 14:10 →(2.4km)14:35 阿瀬比遍路小屋 14:45 →(1.0km)15:10 大根峠 15:10 →(3.5km)16:15 二十二番平等寺 16:45→(5.3km) 18:00 JR阿波福井駅 18:27 [ →18:45 阿南(泊)]


いちばん高いところにある平等寺本堂。


山門脇にある有名な民宿「山茶花」。前日さかもとで一緒だったみなさんはここに泊まったのかな?


来た方向から直角に曲がってJR方向に向かう。こうしてみると、お寺というより古墳みたいに見える。

[Oct 8, 2016]