006 江戸川クレーン事故 [Aug 17, 2006]

今週の月曜日、14日の朝は大変だった。出勤のため電車に乗ったと思ったら間もなくストップ。第一報は「落雷のため都営線が全線で止まっています。直通運転はいたしませんので、JR線で振替輸送を行います」ということだったので乗り換えた。ところがご承知のようにこの停電は、江戸川の送電線にしゅんせつのためのクレーンが接触して起こったもので、都営線だけでなくJRも営団地下鉄(東京メトロだっけ?)もダイヤがめちゃくちゃになっていたのであった。

お盆でお休みの人が多く電車はどこも空いていたのでまだ良かったけれども、これが普段の通勤ラッシュの時だったらあちこちの駅で人があふれかえることになっていただろう。さて、今回の事故のあらましが明らかになってまず第一に思ったことは「日本のプロフェッショナルの数は確実に少なくなっているなぁ」ということである。

河川を航行していて注意すべきことはそれほど多くはない。基本的には、「どこに障害物があるか」ということであろう。何十メートルも上にクレーンを上げたまま航行すれば、電線以前に橋に激突する。どこに橋がかかっていて道路や鉄道が走っているか、どこに鉄塔や電線があるか、どこに構造物があり水深が浅くあるいは川幅が狭くなっているか、他に航行する船はどの程度あるか、といったことに注意しなくては危なくて仕方ないくらい、素人でも分かることである。

ましてや、今回の工事はしゅんせつ(川底に溜まった砂や泥をさらうこと。これを定期的にやらないと水深が浅くなり、船の航行に差し支えたり、流量が増えた場合はんらんの原因となってしまう)である。しゅんせつを必要とするのは河川や港湾だから、つまり99%公共工事(発注者が国や地方公共団体等)のはずである。公共工事である以上、工事業者はある程度以上の社内体制を備えていないと、受注できない(審査がある)。

つまり、余計なところでクレーンを上げて何かにぶつけてしまうなどという初歩的なミスをする会社は本来受注できるはずはないのである。もちろん、人間だからミスはどうしても起こる。ミスが起こりうるということを前提として、それが致命的なものにならないようにするのがプロフェッショナルである。事故を起こした会社も、おそらく昔はちゃんとしたプロ、例えば東京近辺の河川ならどこに何があるか目をつぶっていても分かる、というくらいのレベルの人はいたはずだ。

ところがそういうプロの技術や経験が次の世代に受け継がれず(そういうプロは文章に書くなどということをしないからマニュアルなんて作れない)、また会社も安く入札すれば契約を取れるなどということばかり重視して、ノウハウを会社として維持しようと思わないものだから、こうした取り返しのつかない事故になる。人命にはかかわらなかったものの、あの会社は今後損害賠償請求されることは確実であり、公共工事からも外されるはずだから先行きはかなり厳しい。

こうしたことは日本の相当広い範囲で起こっているように思う。例のヅラ設計士の強度偽装建築の件にしても、昔の現場監督なら「こんなもん、できねーよ」の世界だったのではなかろうか。当り前のことを当り前にできるプロフェッショナルがどんどん減っているのは、とても悲しいことである。

[Aug 17, 2006]