008 言霊的報道と現実 ~ワールドカップ日本vsブラジル戦 [Jun 22, 2006]

磯城島(しきしま)の 大和の国は 言霊の 助くる国ぞ ま幸くありこそ 柿本人麻呂(万葉集 3254)

大意:わが大和の国は言霊の助ける国です。だから言挙げしてあなたの幸運をお祈りします。どうかご無事で。

わが国には言霊という宗教的観念がある。簡単に言えば「言葉が魔力を持つ」という考え方で、上の和歌でいうと、「どうかご無事で」というと無事に過ごせる、というのである。これだけなら、中国人だって絵札が欲しければ「コン!」と大声を出すし、欧米人だって”Come!”とか叫んだりする。だが日本の場合はそれだけでない。不吉なことを言うと悪いことが起こるので言ってはいけないのである。

だから、結婚式に「切れる」と言ってはいけないし、受験生に「すべる」と言ってはいけないのだが、これくらいなら害は少ない。しかし、いよいよ日本時間で明朝に迫ったFIFAワールドカップドイツ大会の一次リーグの最終戦、マスコミの論調である「日本、わずかな望み」というのは一体なんなのだろう。

とにかく優勝候補筆頭のブラジルが相手なのだから、恥ずかしくない試合をするのが第一である。加えてジーコ・ジャパン、というよりここ3大会中心となって日本チームを引っ張ってきた中田英ら主力選手にとっておそらく最後のゲームとなるから、その意味でがんばってほしいと思う。予選突破を決めて格下相手のブラジルが控え選手を大量に出してくることも確実だから、もしかしたらアトランタ五輪の1-0再現、というくらいは期待してもいいだろう。

しかし、「ブラジルに2点差で勝って予選突破(それもクロアチアが1-0でオーストラリアに勝った場合のみ。クロアチア2点差勝ちor引分けなら3点差が必要。オーストラリアが勝てば何点とってもダメ)」なんだそうである。まさか本気でそんなことを考えているとは思えないが、とりあえず新聞にはそう書いてあるしNHKでもそう言っている。

万が一2点取れたとしてそれでも攻め続けるとしたらオーストラリア戦の二の舞で3点取り返されるだろう。それより何より、せっかくワールドカップの舞台で本気のブラジルと戦えるのに、妙なゲームプランで選手もファンも楽しめないとすれば大変不幸なことである。

おそらくブラジル戦終了までこの論調は続き、「有終の美」とか「ドイツワールドカップ最後の試合」とかという表現は不吉だからといって使わないのだろう。それでも現実は冷徹である。日本2-0勝ちのオッズ(英国ブックメーカー)は67倍、3-0に至っては101倍である。何だ、万馬券程度の可能性でもあるのかと思われるかもしれないが、このオッズはブラジルの4-0(10倍)、5-0(19倍)より格段に高い。さらに6-0(29倍)、7-0(81倍)よりも高いのである。これはつまり「ありえない」ということと同義である。

日本では賭けは合法化されていないので実際には無理だが、日本の予選突破に60:1なら、喜んで受ける。ただ刑法185条但し書きで「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」とされているから、だれか私にビールをおごりたいという人がいらっしゃったらメールください。もし日本が予選突破したら、私は河内屋酒店仕様の○ン○○(自主規制、剣菱だったりして)をお贈りします。

(締切り2006/6/22午後11時59分。先着20名様まで。   ブログで参加者を募りましたが、期限までに応募者は現れませんでした。当然ですが。

[Jun 22, 2006]