029 水ノ塔山(スノーシュー) [Mar 27, 2014]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

3月末となると、春の山である。昨年はこの時期に雲取山に登ったのだが、今年は2月に降った大雪のため奥多摩・丹沢はまだ冬山である。ならば発想を転換して、この時期でもスノーシューで歩ける山に行ってみようということで、高峰高原を選んでみた。

上越新幹線で佐久平へ。ここからJRバスでアサマ2000スキー場まで登る。名前のとおり、すでに海抜2000mである。道路は除雪されているが、周囲はまだ雪が深い。ここから高峰温泉へは、冬の時期は車では行けない。宿の雪上車に乗って、1m以上積もった雪の中を進む。左右はスキー場のゲレンデである。

高峰温泉からは、各方向にスノーシューのコースがある。当初の予定ではそれほどアップダウンのない池の平湿原に行くつもりだったのだが、聞いてみたら途中の林道が雪崩のため通行止めとなっている。雪崩の危険がないのは山だということなので、急きょ水ノ塔山コースに行くことにした。

水ノ塔山は標高2200m。麓の高峰温泉からは250mほどの登りとなる。もちろん冬に行くのは初めてだが、夏には2度来たことがある。1回目は高校の林間学校で、水ノ塔山から篭ノ登山を経て高峰温泉に戻ってくるコースだった。水をあまり用意していなくて、たいへん喉がかわいたことを覚えている。もう1回は子供を連れて軽井沢の帰りに寄ったのだが、たいへん風が強くて途中で撤退したのだった。

宿でお昼を食べてから、スノーシューを装備する。この冬に新調したもので、ドッペルギャンガーアウトドアの製品。伸縮自在のストック2本が付いて1万円以内というお買い得品である。着脱も簡単にできるようになっている。その分取れやすいのではないかと心配したが結構足に密着して、少々もぐったりひねったりしたくらいではびくともしないのであった。

12時40分に高峰温泉を出発。宿のすぐ前から水ノ塔山へのコースが始まる。最初はスキー場のリフトに沿った登り坂で、踏み跡があるのでその上を行く。スキーでさえ20年近くやっていないしスノーシューは初めてなのでちょっと心配だったが、思っていたより足元は安定している。裏側に大きな金具が付いていて、これがアイゼンの役割を果たしているようだ。

と思ったら、一気に膝まで沈んでびっくりする。踏み跡は固くなっているのだけれど、そこをちょっと外すと深雪なので、際限なく沈んでしまうのだ。とはいってもスノーシューのおかげで膝くらいまでで何とか止まる。沈むだけではなく前に後ろに転んでしまう。ただ、何回か沈んで転ぶうちに要領が分かってきた。スキーと同様に膝にゆとりを持って、うまく体重移動をするのがコツのようだ。

ひとしきり登ると、うぐいす展望台というピークに達する。ここでうっかり行き過ぎてしまい、吹き溜まりの雪にずっぽり沈む。よく探したら、ピークからいったん林の中を下りていく赤テープがあるし、踏み跡もそちらに続いている。ただ、霧が出て来て展望がきかず、目指す水ノ塔山は中腹までしか見えない。


スノーシューでうぐいす展望台への斜面を登る。写真は振り返って高峰温泉方向。背後は高峰山。


霧が出てなかなか展望が開けない、わずかに池の平方面への林道方向が見えた。

翌日晴れてからよく見ると、高峰温泉の前にすぐ見えるのが、うぐいす展望台のピークである(下の写真)。そこから方向を変えていったん鞍部に下り、水ノ塔山への登りが始まる。ただしこの日は霧のせいで見通しが利かず、どこまで登ればいいのか全く分からなかった。

目印となるのは、木に付けられている赤テープである。とはいえ踏み跡と微妙にずれていることがあり、赤テープに直行すると深雪でもぐってしまうこともある。しかも、何人かが間違えたのだろう、赤テープと違う経路に続いていることも多い。トラバースして赤テープに戻れるケースもあるけれど、全く登れないルートで引き返すしかなくなることもあるから厄介である。

それでも、夏の場合はスイッチバックの行ったり来たりになるであろうルートが、雪の上なので自由に選べるのは楽しい。慣れてくると、わざと踏み跡のない場所を通って沈んでしまうのも楽しい。残念なのは展望がきかないことで、目指す水ノ塔山の頂上もあまりよく見えないし、通ってきた山麓方面も霧の中である。

急斜面を登り続けているうちに、なんとなく要領が分かってきた。スノーシューを地面に強く打ち込むようにして、爪(クランボン)で地面を確保するのがよさそうだ。そうすることによって、急斜面を最短経路で進むことができる。ただちょっと困るのは、つま先あたりが窮屈になって、ちょっと足が痛むところである。

かなりハードな運動なので、汗が噴き出てくる。時々、ストックを地面に突き立て、手袋を脱いで汗をふく。午後から晴れるという予報だったのでゴーグルも持ってきたのだが、依然として霧の中である。あるいは下から見ると、雲の中だったのかもしれない。

大分と標高を稼いだと思われる頃、岩に矢印で進行方向を示す印が見えてきた。そちらに進むのだろうと岩に近づいていくと、岩の周りが暖かいのか、雪が薄くなっていてかえって歩きにくい。どうやらこちらは夏道のようだ。林の方向に赤テープが見えたので、そちらに移動してさらに進む。

時計を見るともう3時近い。1時前にスタートしたので、5時に下りるためにはそろそろ引き返す必要がある。さすがに登りより下りの方が時間がかからないはずだし、切りのいいところまで着かないと中途半端である。さらに登ると、また岩に「↑」印が書いてあるところに出た。


頂上あたりまで登っても、まだ霧の中。ときどき横から霰が降ってきました。


翌日は快晴。右のピークが水ノ塔山で、頂上直下の雪があるあたりまで進出したと思われる。

周りをよく見ると、岩に書かれたペイントはそのまままっすぐ登ることを示している。ただ、ここから先は岩が露出していて、スノーシューで登るのは難しそうだ。右方向には林があり、その中に赤テープが見える。踏み跡もそちらに続いているようだ。直登の登り口に何か書かれている板切れが見える。近づくと、「スノーシューコース入口」と書いてあった。

背中のリュックから高峰温泉でもらったコース案内図を取り出す。水ノ塔山の頂上付近にはスノーシューコースは続いておらず、頂上直下を巻いて篭ノ登山方面に向かっているようだ。ということは、ここが終点ということである。最高到達点にストックを立てて記念撮影し、ここで引き返すことにする。ゆっくり休む場所がないのが残念だ。

反転して下りに移る。依然として、見通しはほとんど利かない。風も強くなってきて、しかも周りには誰もいない。麓から2時間ほど登ってきただけなのに、景色はまさしく冬山である。これが本当に冬山なら大変心細いところだ。出かける時に声掛けしてきたし、まさかスノーシューコースで遭難することもないだろうが、ここまで誰とも会っていないことは確かである。

意外だったのは、普通の下り以上にスノーシューの下りというのは歩きにくいことであった。おそらく夏道だとスイッチバックでくねくね下るのだろうが、スノーシューコースはほぼ最短経路を進むので傾斜が急である。それに、登りの時より傾斜がきつく感じる。かといってなだらかなコースを開拓しようとすると、また膝までもぐってしまう。前に倒れるのを心配して腰が引けると、後ろにひっくり返る。難しいものである。

しばらく下ると、登ってくる単独の人とすれ違った。「なんにも見えませんねー」と話をする。ここまでずっと人と会うことがなく、もし足でも折ったら大変だなあと思っていたので、ちょっと安心した。下った分少しだけ見通しが開けてきて、尾根道を進むコースがちゃんと見える。スキーで滑れれば一気に進みそうだが、スノーシューだと一歩一歩なのが残念である。

4時を過ぎて、あたりがちょっと暗くなってきた。ペースを上げるために、横向きでカニ歩きして下りる。これでかなりスピードアップした。心苦しいのは、踏み跡に変な段々を付けてしまうことだ。うぐいす展望台への鞍部まで下りてひと安心。ここで、また別のグループに追い抜かれる。登りでは会っていない人達なので、さらに先の篭ノ登山まで行ったのだろう。

最後のうぐいす展望台ピークへの登り下りをクリアして、宿に戻ったのは4時半頃。さすがに登りよりは時間がかからなかったものの、かなり苦戦した下りだった。通算4時間弱のスノーハイキングだったが、それだけで足腰がぱんぱんに張ってしまった。やはり中高年には、もっと平坦なコースがよかったようだ。とはいえ、初スノーシューでそこそこ登ったのはいい経験だった。

幸い高峰温泉は疲労回復に効果がある天然温泉なので、速攻で着替えて温かい湯船に向かったのでした。


今回の到達点である巻き道分岐で撮影。スノーシューコースはここから頂上を巻いて篭ノ登山に続く。


慎重に尾根道を下る。スノーシューは登りより下りの方が難しかったです。

この日の経過
高峰温泉 12:50
13:10 うぐいす展望台 13:15
14:00 2088m地点 14:05
14:50 頂上直下 14:55
16:05 うぐいす展望台 16:05
16:20 高峰温泉
(GPS測定距離 2.6km)

[Apr 21,2014]