020 ヘイvsワルーエフ [Nov 7, 2009]

WBA世界ヘビー級タイトルマッチ展望(2009/11/7、独ニュルンベルク)
ニコライ・ワルーエフ(ロシア、50勝34KO1敗1NC) +155(2.55倍)
O デビット・ヘイ(イギリス、22勝21KO1敗) -185(1.45倍)

当初クリチコ兄弟と戦う予定とされていたヘイが、照準を切り替えてワルーエフに挑戦。勝算はかなり高まったものの、今度はFavoriteで勝って当り前ということになってしまったのはつらいところ。でも、おそらく勝てるはず。

1980年代にライトヘビー級とヘビー級の間に創設されたクルーザー級であるが、当初は190ポンド(86.3kg)リミットであった。このクラスからヘビー級に進出した代表選手は何と言ってもイベンダー・ホリフィールドである。

しかし近年の大型選手の台頭により、この体格の選手がヘビー級で大成することは難しくなった。90年代以降のクルーザー級で無敵であったファン・カルロス・ゴメスはじめ、ワシリー・ジロフ、ジェームス・トニーといった選手は、いずれもヘビー級の壁は厚く、ホリフィールドのように活躍することはできなかった。

こうした中、クルーザー級リミットが200ポンド(90.9kg)に上げられたのが2003~4年。それ以降最強のクルーザー級ボクサーが、このデビット・ヘイである。2007年にジャン・マルク・モルメクをKOしてWBA・WBC、2008年にはエンゾ・マカリネリをKOしてWBOと3団体を統一した後、タイトルを返上した。

クルーザー時代からノンタイトルでは200ポンド超で戦っており、ヘビー級に上げても体調面での問題はない。スピード、パワーとも一級品で、ミドル級あたりのボクシングにパワーアップされた体格がプラスされた印象である。昨年11月にはモンテ・バレットをKOしてヘビー級本格進出を果たしている。並みのヘビー級相手なら、スピードで圧倒するはずである。

かたやワルーエフ、213cm、300ポンド超の体格はヘビー級ボクサーの中でも別格と言っていい。また、クリチコ兄弟でもフルパワーで動くとスタミナ切れを起こすくらいであるのに、この体格で12ラウンド動けるスタミナを持っているのは脅威である。ただし、スピードは全くなく、ナックルがきちんとヒットしないので破壊力も体ほどではない。

ヘイにとっておそらく参考にするのは、2007年にルスラン・チャガエフがワルーエフを判定で下した試合だと思われる。この試合でチャガエフは、自分のパンチはヒットさせてワルーエフを空振りさせ、あまり深追いせずに12Rをコントロールした。ヘイのスピードはチャガエフ以上なので、同様にヒット・アンド・アウェイで戦えば勝つ確率はかなり大きい。

ただし、ヘイ自体が打ち合いを好むので、クリーンヒットが続けば深追いする可能性もある。その場合、ワルーエフの打たれ強さがどのくらいなのか、ワルーエフのカウンターがまともにヘイに当たったら持ちこたえられるのか、たいへん興味深い展開となる。見る側としてはむしろ、ヘイにリスクを冒してほしいところだ。

クリチコ兄弟打倒を公言しているヘイとしては、まず一冠目は楽勝で飾りたいところ。この試合はWOWOWでタイムリー・オン・エア中継される。

 

WBA世界ヘビー級タイトルマッチ(11/7、ニュルンベルク)
デビッド・ヘイ O 判定(2-0) X ニコライ・ワルーエフ

期待通り、200ポンドリミットになって以降最強のクルーザー級チャンピオン、デビット・ヘイが”ロシアン・ジャイアント”ワルーエフをマジョリティ・デシジョンで下して新チャンピオンとなった。

私の採点は、116-112でヘイ。ただし、1ラウンドは10-10、12ラウンドは10-8とした。ヘイがヒット・アンド・アウェイで深追いしないのは予想していたが、12ラウンドのように一発当てるチャンスがもう少し早い回だったとしたら、どちらにもチャンスがある打ち合いとなったかもしれない。

ワルーエフにしては動きはシャープだったが、それでもヘイと比べると大分遅い。前進は止めなかったものの、クリーンヒットはほとんどなかった。動きの早いヘイ相手にボディを打たなかったのはどうかと思うが、ボディを狙うとガードが下がりすぎるのでそのあたりを気にしたのだろう。

ヘイのパンチをかなり警戒していて、ガードを緩めなかったワルーエフ。実際に12ラウンドではヘイのクリーンヒットをもらって足下が定まらない状態となった。40kg体重が違っても効く時は効くということである。一方ヘイの方も、勝負に徹してリスクは冒さなかった。今回は、ともかくヘビー級のチャンピオンベルトを手に入れるというのが目標だから、賢明な戦法といえるだろう。

さて、今後のヘイの防衛路線であるが、クリチコ兄弟とはやりたがらない連中が名乗りを上げてくることが予想される。ジョン・ルイス、ルスラン・チャガエフ、サミュエル・ピーターといった元チャンピオン、アレクサンドル・ポペトキン、エディ・チェインバースといった新興勢力、トーマス・アダメク、ファン・カルロス・ゴメスなどクルーザーからの転向組との対戦をこなしつつ、クリチコ兄弟とのビッグ・マネー・ファイトを目指すことになりそうだ。

最後に、来週のパックマン・コット戦との比較を少し。確かにパワーでコットが、スピードでパッキャオが上という図式は今回と同様であるが、コットはワルーエフほどスピードがない訳ではない。ワルーエフが今回やらなかった、ボディを打ってパッキャオの足を止めることとか、パッキャオのコンビネーションを交わすディフェンス面でのスピードとか、コットにできてワルーエフにできないことはかなりある。