017 パッキャオTKOsデラホーヤ [Dec 6, 2008]

ウェルター級12回戦展望(2008/12/6、米ラスベガス・MGMグランド)
O オスカー・デラホーヤ(米、39勝30KO5敗) -190(1.55倍)
マニー・パッキャオ(フィリピン、47勝35KO3敗2引分け) +150(2.5倍)

まあ、確かに元フライ級(112ポンド)のチャンピオンと元ミドル級(160ポンド)のチャンピオンが戦うのだから話題性があるということは分かるが、この試合が双方のファイトマネー合計で数千万ドルという金額に見合う価値があるかというと、私はないと思う。

というのは、そもそもタイトルマッチではない上に、どちらが勝ったとしてもウェルター級最強のボクサーということにはならないからである。仮にパッキャオがデラホーヤに勝ったとしても、それは単にデラホーヤの力が落ちていたというだけのことであって、パッキャオがウェルター級でこれから先、強豪と渡り合うという可能性はゼロである。

ウェルター級の世界レベルの戦いという意味では、来年早々行われるマルガリトvsシェーン・モズリー戦の方が断然価値があるし、パッキャオが本来戦うべき相手はエドウィン・バレロやホルヘ・リナレスだと思う。だから、ある意味この試合は、昔ヘビー級全盛時代の、フレイジャー戦以降のモハメド・アリの試合のようなものかもしれない。

人気者同士を戦わせればビッグマネー・ファイトになるというやり方は、うっかりするとK-1とかのショー的格闘技と重なるものであり、ボクシングの本質とは相容れないものではないだろうか。確かにデラホーヤは不世出のボクサーであったかもしれないが、同じ階級で世界レベルとの戦いが難しいのであれば現役を退くべきであろう。

さて、そんな試合でもオッズが成立している。パッキャオunderdogは致し方ないところだが、数ヶ月前の+250(3.5倍)から+150(2.5倍)に人気を上げている。

確かに、それぞれのVTRを見ればパッキャオの左ストレートが決まると思う向きがあるかもしれないが、デラホーヤの戦ってきた相手はホプキンスやマヨルガ、シュトルムやカスティリェホといった160ポンド級の相手であり、前の試合でようやく135ポンドに上げたパッキャオとでは、破壊力が違いすぎるのである。

したがってこの試合は、デラホーヤがどういう組み立て方をしてくるかで決まる。おそらく、プロモーター兼務のデラホーヤとしては中盤以降に勝負の山場を持ってくると思われ、そうなると判定までもつれ込むこともありうるかもしれない。

しかし、アクシデントがない限りデラホーヤの勝ちは動かず、本来は体力差でKOしなければおかしい。その意味でも、あまり興味を引かないビッグマッチである。

 

ウェルター級12回戦(2008/12/6、米ラスベガス)
マニー・パッキャオ O TKO8R終了 X オスカー・デラホーヤ

試合前の控え室での映像を見たとたん、デラホーヤは苦戦するだろうと思われた。ウェイトを落としたはずなのに体がだぶついていて、ファイトに必要な筋肉が落ちてしまったことが窺われたからである。以前、ヘビー級チャンピオンとなってからライトヘビー級に戻したロイ・ジョーンズJr.のターパー戦と全く同じケースである。

一方のパックマンは147ポンドの契約に対して143ポンドと無理にウェイトを上げなかったし、仕上がりも前回のディアス戦の出来を維持していた。体をみても、ホプキンス戦のロナルド・ライトやケリー・パブリックのような無理に増量した感じはない。こうなると、番狂わせの条件がほとんど整ってしまうことになる。

それでも、この日の出来でもデラホーヤが勝つことはできたはずで、そのためには、先制攻撃でパッキャオが調子づく前に叩く必要があった。事実、1Rのパッキャオはデラホーヤの射程内に入ることができなかった。ここで打ち合いに持ち込めばデラホーヤのペースとなったはずだし、パッキャオの左をもらって倒れたとしてもラッキーパンチということで済んだ。

それができなかったのは、もしかすると「プロモーター」デラホーヤの意図が働いたのかもしれない。仮に序盤でKOしてしまうと、試合前から言われていたように「ミスマッチ」ということになるし、アンダーカードがほとんど1RKOだったので観客にとっても物足りない。だから2、3Rまでは様子をみてそれから打ち合えばいいだろうと思ったのではないか。

ところが序盤で見てしまったものだから、パッキャオがデラホーヤの距離と動きを見極めてしまい、ヒット&アウェイ(打っては離れ)が余裕を持ってできるようになる。加えて、デラホーヤの足が減量の影響で動かない。4ラウンド以降、両者が左の相打ちとなっても体の大きいデラホーヤの方が効いてしまったのだから、もう話にならない。あとはワンサイドである。

もう43歳になるホプキンスがいまだにきっちり体を作っているのに、デラホーヤにそれができないというのは、やはり選手専業かプロモーター兼務か、ということがあるような気がする。まだ35歳ではあるが、昔ならとっくに引退する年だし、前の試合くらいから反射神経の衰えが隠せない。残念ながら、選手としてのデラホーヤにはもはや世界レベルの力はないということになる。

かたやパッキャオ、今回のビッグマッチの勝ちは見事だが、これから後が難しい。試合前の展望で述べたようにウェルター級でやっていけるとは思えないし、スーパーライト級でも相当の体格差がある。そして再びライト級に落とすとなると、今回のデラホーヤ同様に必要な筋肉が落ちてしまう危険がある。

試合後のインタビューではリッキー・ハットンという話も出ていたが、どういう相手と戦うとしても、パッキャオにとって今後は綱渡り的な勝負になるような気がする。その意味では、パッキャオが「ヘビー級タイトルを獲得した後のロイ・ジョーンズJr.」になってしまう可能性は、決して小さくはない。