038 ドネア vs 西岡[Oct 14, 2012]

WBC/WBOスーパーバンタム級タイトルマッチ展望(2012/10/14、カーソン ホームデポ・センター)
O ノニト・ドネア(フィリピン、29勝18KO1敗)  1.17倍
西岡利晃(帝拳、39勝24KO4敗3引分け)  4.50倍

ずいぶん昔からチャンピオンだった印象のある西岡だが、WBCスーパーバンタムのタイトルをとったのは2008年の9月だから、まだ4年たっただけである。ウィラポン第一戦から第四戦までの期間が3年9ヵ月、ウィラポン第四戦からチャンピオンになるまで4年半だったことを考えると、いかに雌伏の期間が長かったかということになるだろう。

チャンピオンになってからは、ジョニー・ゴンサレスをKOし、ラファエル・マルケスを圧倒して王座を防衛した。米大陸での王座防衛、ラスベガスでの王座防衛ともに日本人として初めての快挙である。

これまでの日本人チャンピオンであえてこれに近い実績をあげるとすれば、1970年に柴田国明がビセンテ・サルディバルからWBCフェザー級タイトルを奪った試合、1965年から66年にファイティング原田がエデル・ジョフレとの世界バンタム級タイトルマッチに連勝した試合くらい。

ガッツ石松はロベルト・デュラン、エステバン・デ・ヘススに完敗し、ロイヤル小林はアレクシス・アルゲリョ、ウィルフレッド・ゴメスにKOされた(それでも、世界超一流とタイトルマッチを戦ったのは並みのチャンピオンではなかったということである)。そして今、西岡チャンピオンが世界最高峰の試合に臨む。

試合前に言っておきたいのは、仮に西岡がこの試合で完敗しても、日本人ボクサーとしてこれまでなしえなかった実績を上げたことには、いささかのマイナスにもならないということである。ロベルト・デュランにせよシュガー・レイ・レナードにせよ、その強さは負けた試合ではなく勝った試合とその相手、内容で評価されるのである。

だからという訳ではないのだが、西岡の最後の敗戦であるウィラポン戦をさいたまスーパーアリーナで見ていた私としては、局面が打開できないときの西岡の手詰まり感というのが、未だに記憶に鮮明なのである。確かに主武器である左ストレートがびしびし当たればドネアの打たれ強さとの勝負になるのだが、左が決まらない時にどうするかということである。

確かに右のジャブ、右のフックはチャンピオンになってさらに進化した。しかし、例えばモンティエルのフックより強いかと言われると、それはちょっとというのが本音である。ドネアは、モンティエルに勝った試合も、ダルチニアンに勝った試合も、相手にほとんどまともに打たせておいて上からフックを被せた。ああいう武器を持っているドネアに対し、西岡がどこまで手を止めないかということである。

展開的には、ドネアも西岡も接近戦より中間距離が得意なので、西岡が右ジャブから左ストレート、ドネアは左右のフックを狙うことになる。西岡の生命線は右ジャブで距離を保てるかということになりそうで、右に効果がなければ左を打つチャンスもない。ドネアは無造作に距離を詰めるのでカウンターも決まりやすいが、かなり打たれ強いことも考慮に入れなくてはならない。

予想としては、パンチのパワーと打たれ強さの点でドネア優位は動かしがたい。勝敗にかかわらず、西岡にはウィラポン第一戦のように距離を取って打たれないだけという試合はしてほしくないが、さてどうなるだろうか。

 

WBC/WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ(10/13、カーソン)
ノニト・ドネア O KO9R X 西岡利晃

ドネアが西岡に圧勝した。私の採点はジョーさん浜田会長と同じくドネアのフルマーク。

西岡が右ガードを上げて手を出さないのではないかという展開は予想していたが、ウィラポン戦と違ったのは前に出てプレッシャーをかけていた点。そのため、ドネア自身もかさにかかった攻め方はできなかった。ただ、各ラウンドとも早い連打をガードの上とはいえ決めていたので、判定勝負になってもいいとは思っていただろう。

6Rのアッパーのダウンはドネアと西岡の武器の品揃えの違い。この日は得意の左フックをほとんど出さなかったのだが、例によってバンデージが血まみれだったので、あるいはまた痛めたのかもしれない。左が出せなくても右で決めてしまうのだから、大したものである。西岡が結局左ストレートだけだったのとは対照的であった。

ダウンを奪った後、ドネアが下がるようになったのは、もちろん西岡に攻めさせてカウンターを狙うという意味があったから。にもかかわらず西岡が出たのは、判定でも負けているしダウンも奪われてかえって開き直ったのだろうが、左ストレートが何回か決まったしある程度効果があったと思う。ドネアとしても、手も痛いし足も痛めたっぽいので、それほど安心して戦っていた訳ではないだろう。

そうしたことも考えると、西岡が前半を捨てて後半勝負に出たのも、多少なりとも成算があったということになるだろう。今日の試合をみても、ドネアの前半戦のパンチのキレはただごとではなく、動きの鈍る後半に起死回生のカウンターを狙うというのはほとんど唯一の逆転シナリオだったということになる。

ただ思うのは、それなら試合前に、「これまでにない仕上がりで絶好調。必ず勝って帰ります。」なんて言わないで、「世界最高の相手で興奮しています。本場のお客さんにいい試合を見せたい。」とかコメントしとけばよかったのになあということ。

多分これで引退ということになるんだろうけれど、ウィラポン戦でやめなくて本当に良かったと思う。