047 エルナンデスvs井上 @大田区総合体育館 [Apr 6,2014]

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ(2014/4/6、大田区総合体育館)
井上 尚弥 O TKO6R X アドリアン・エルナンデス

日本最速6戦目の世界獲得を、井上があっさり達成してしまった。

WOWOWで見た印象では、エルナンデスの前に出る圧力は相当強そうだったので、井上は足を使ってさばいていくと予想していた。ところが、1R始まって前に出たのはむしろ井上。ストレートやフックをボディに当てて、早くも主導権を奪ってしまった。3Rにはヒッティングでエルナンデスが目の上をカットした。

公開採点で3者40-36と発表された5R、傷の具合もあったのかエルナンデスがプレスを強める。このラウンドはちょっと押され気味で、何度かロープ際まで詰められ、クリーンヒットももらっていた。

続く6Rもエルナンデスが前に出るが、井上も接近戦での打ち合いに応じる。打ち合いならチャンピオンのはずなのだが、これまでのダメージもあったのだろう。右ストレートでエルナンデスがダウン、そのままカウントアウトされた。

井上のボクシングのいいところは、ノーガードで遊んでみたり挑発的なアクションをしたりせずに、終始きちんとしたボクシングを見せてくれるところである。この試合でも、左右のガードは最後まで上げていて、不用意な一発をもらわないように注意していた。ボディへの左フックはメキシカン並みで、パンチのキレ、カウンターのセンスもすばらしい。

前チャンピオンとなったエルナンデスは、Boxrecではライトフライ級トップに評価されており、層の薄いクラスとはいえ階級最強クラスの選手である。その相手を、ほとんどワンサイドで倒してしまうのだからすばらしい。昨日の試合を見る限り、井岡よりも上だろう。

最速での世界獲得にそれほどの意味がある訳ではないが、昨日の試合を見せてくれれば文句はない。まだ若いし減量がきつそうなので遠からず階級を上げると思われるが、ロマゴンとやってもいい勝負になるのではないかと思わせるたいへんなボクサーである。

昨日の大田区総合体育館はこの他にも好カードが多かったので、明日はアンダーカードのご報告を。


4戦目日本タイトル、5戦目東洋タイトルに続き、6戦目で世界タイトルマッチに登場した赤いトランクス「モンスター」井上尚弥。


KO勝利で肩車される井上。前チャンピオンとなったエルナンデスは、ほとんどいいところがありませんでした。

それでは、井上vsエルナンデスのアンダーカードのご報告。この他に予備カードとして新人王予選他1試合があったのだが、当り前ながらよく知らない選手だったので割愛します。

第一試合
井上 拓真 O 判定(3-0) X ファーラン・サックリンJr.

宮崎をKOした時はいい選手だと思ったファーランだったが、この日の試合は全く出来がよくなかった。何しろ手が出ない。井上弟の打ち終わりにパンチを合わせようとしてはいたものの、ほとんど空振り。私の採点もジャッジ3者と同じ79-73。

井上弟もキャリアが浅いので仕方ないとはいえ、ほとんどの攻撃が単発でコンビネーションが打てていない。ただし体はできているので、ミニマムとかライトフライなら通用するだろう。これで世界ランクに入ることになるが、日本タイトル挑戦まで少し経験を積んだ方がいいかもしれない。

第二試合
松本 亮 O 判定(3-0) X 久高 寛之

私の採点は76-76ドローだったが、ジャッジの1人は79-73を付けていたので近くで見るのと印象が違ったのかもしれない。久高はナルバエス戦に続く連敗。年もとってしまってちょっと劣化してしまったかもしれない。

フライ、スーパーフライで戦ってきた久高とバンタムの松本では体格が違い、序盤は久高にやる気が見えなかった。ところが、4Rあたりから例の微妙なタイミングのカウンターが当たりだして、体の大きい松本の方が後退した。終盤7、8Rではむしろ久高の方が倒しそうだったが、最後は二人ともバテてしまった。

第三試合
細野 悟 O TKO10R X 緒方 勇希

「バズーカ」細野は例によって手数が少ないがパワーパンチ、対する緒方は19勝3KOの戦績が示す通り、マリナッジ並みの軽い連打で手数が多い。プラス角海老恒例の当たったら大拍手があるので序盤は緒方が押しているように見えたけれども、オープンブロー気味のパンチだからあれでは効かない。

3Rくらいから細野のボディ攻撃が効果を現わして、緒方は後退一方になる。5Rまでの途中採点は48-47緒方だったが、6R以降は全部細野に行っただろう。10R細野の連打で、緒方ダウン。緒方はプッシングを主張したが、再開後につかまりレフェリーがストップ。

第四試合
ローマン・ゴンサレス O TKO3R X ファン・プリシマ

WBCホセ・スレイマン前会長の追悼セレモニー、袴田巌さんへのWBCチャンピオンベルト贈呈式をはさんで、いよいよロマゴン登場。相手はフィリピンの国内ランカー。1R半ばからボディ攻撃を本格化させたロマゴンの圧勝。ただストップは少し早かった印象。

2Rでダウンしたプリシマがそのまま立たないように見えたので、9カウントで立った時には場内から割れんばかりの大拍手。気のせいか、ロマゴンの破壊力はクラスを上げるにつれて弱まってきているように思う。前は顔面一発で相手が戦意喪失していたが、最近はそういうケースが少ないように思う。やはり、階級の壁があるのではないか。

ダブルメインイベント・WBC世界フライ級タイトルマッチ
八重樫 東 O KO9R X オディロン・サレタ

この試合の八重樫は、前の防衛戦の時と全く違って手数が少なかった。まるで、第3試合のバズーカ細野と同様に、挑戦者の軽い連打を浴びながら、前進するだけでパンチは出ないという感じだった。私の採点では3Rまではサレタに行っていた。

ところが、4Rあたりからパワーパンチをボディに叩き込むと、とたんにサレタの手が止まった。このラウンド以降はすべて八重樫のラウンド。そして9R終盤、右ストレートをカウンターで決めると、サレタは前のめりに倒れてカウントアウト。いきなりといった感じで倒れたので、場内は大歓声。

試合後にロマゴンがリングに上がり、「すばらしいチームワークの勝利でした。おめでとう」とメッセージを送る。八重樫は「正直きびしいと思っているが、勝つチャンスが少しでもあるのだから、みっちり練習して、絶対とは言わないができれば勝ちたい」とコメント、またもや場内の大歓声を浴びた。

半世紀前の興行ではないのだから、ファンは日本人が勝てばそれで喜ぶというものではない。強いチャンピオンと強い挑戦者がしのぎを削り、ハイレベルの試合を見せてくれるのが楽しみなのだ。八重樫の姿勢に率直に敬意を表したい。また、勝てる可能性は決して少なくはないと思っている。


大田区総合体育館。開門の午後3時頃は雷雨で、盛んに雷が落ちていました。


袴田巌さんに、WBCからチャンピオンベルトが贈られました。中央にいる太った人がスレイマン息子。白いコートが袴田さんのお姉さま。