022 内藤・亀田興毅世界戦 [Nov 29, 2009]

WBC世界フライ級タイトルマッチ(2009/11/29、さいたまスーパーアリーナ)
O 内藤 大助(宮田、35勝22KO2敗3引分け)
亀田 興毅(亀田、21戦全勝14KO)

いよいよ“国民の期待”内藤と亀田一家の最終決戦である。意外と盛り上がっていないのは、亀田一家のネームバリューが格段に下がっているためと思われるが、実際の試合内容も、かなりお寒いものとなる危険をはらんだ組み合わせである。

内藤有利というのが大方の予想だが、キャリアのピークからみると明らかに内藤の力は衰えている。35歳という年齢は現代では必ずしも限界という訳ではなく、40近くまで活躍する選手もいるけれど、これには個人差がある。内藤の前の試合(熊戦)をみると、体の動きもスムーズさに欠け、パンチにも切れが全くなかった。

対亀田ということになると、日本チャンピオンの時代に対戦を呼びかけたのに無視されたという前歴がある。とはいえ、すでに弟の大毅を下し、内藤自身もこれだけマスコミにもてはやされている中で、当時のモチベーションをどの程度維持しているかは未知数と言わざるを得ない。

かたや亀1号こと興毅。TBSの申し子としてWBAライトフライ級の世界王者となったのも今は昔。現時点では、弟の大毅に追い越されてしまったのではないかと言われる始末である。なぜそういうことを言われるかというと、ランダエタ以降3年間、まともな相手と全く戦っていないからである。

興毅の素質は相当に伸びるはずだったと今でも思っている。しかし、きちんとした指導者に付かず、また実戦でも切磋琢磨しなければ、伸びるものも伸びない。弱敵相手のチューンナップマッチも時には必要だけれど、全部の試合がそれではレベルアップする訳がない。先日のパッキャオ・コットのアンダーカード、チャベス・ジュニアがいい例であろう。

さて試合展開だが、アゴに弱点を持つ興毅が内藤に近づくことは考えにくく、おそらく足を使ってアウトボックスという展開になる。

清水智信に大苦戦したように、内藤はこういう展開は苦手にしているのだが、興毅は清水と違ってジャブから組み立てるということができない。「ノーモーションの左」とかよくTBSアナウンサーが絶叫するが、要はジャブが打てず強弱のアクセントがつけられないだけである。加えて、カウンターも下手くそときているので、内藤が前に出れば興毅は下がるしかない。

内藤が追い、興毅が距離を置き、パンチの交換がみられないということが十分予想され、そうなると大層面白くない試合となる。4R終了後の中間採点でまかり間違って興毅リードなどということになれば、興毅が逃げ回ってますます試合は膠着し、見ているこちらにとっては消化不良ということになるかもしれない。

面白くなるのは、興毅が事態を打開するために前に出なければならなくなった場合で、そうなると内藤の破壊力が発揮されることになる。興毅が本気で勝つつもりならそうせざるを得ないはずだが、そう思えないところが残念である。あとは内藤が古傷の目をカットした場合、興毅に「ヒジでもええから目に入れ」る技術があるかどうか。

予想としては、興毅が結局まともに打ち合わず、内藤がプレッシャーをかけて攻勢点による判定勝ち。このところ予想が当っていないので、今週も外れて大熱戦となることを期待したい。

 

WBC世界フライ級タイトルマッチ(11/29、さいたま)
亀田 興毅 O 判定(3-0) X 内藤 大助

いよいよ最終決戦、注目していたのは内藤チャンピオンがどのようなコンディションを作ってきて、どういう精神状態で戦うかということであった。そして、その見極めは、おそらく「ROMANTICはとまらない」の時の内藤の表情で、九分どおり分かるのではないかと思っていた。

心配していたように、内藤は大毅戦と同様というよりさらにハイテンション、一方の興毅はリラックスしたいい表情に見えた。この時点で悪い予感はした。ジョーさんがFightnewsに書いていたように、「日本人の多くは内藤の勝利を望んでいる」のだが。

そして、勝負を決めたのは2Rの興毅の左ストレート。これで、おそらく内藤は鼻か目の下に深刻なダメージを受けたと思われる。動きが極端に鈍くなり、一発を狙って大振りになってしまった。動きの鈍くなった大振りの相手にカウンターを当てるのは、興毅も仮にも元世界チャンピオンだからできるはずである。

私の採点では116-112で興毅。もっと差が開いたジャッジもいたけれど、内藤のスタイルでクリーンヒットがない場合、採点は取れなくて仕方ない。

結局のところ、35歳の内藤は熊戦よりもさらに衰えていて、23歳伸び盛りの興毅に完敗したということである。興毅もボクシング自体は弟よりかなりうまいし、ストレート主体なのでスピードがある。途中採点でリードすれば、こういう展開はあってもおかしくはなかった。ランダエタ戦の時にも書いたように、興毅の才能そのものは、辰吉にも匹敵するレベルと言ってもいいくらいなのである。

ただし、今日のボクシングで防衛路線を歩んでいくのはかなり茨の道といえるだろう。今日は内藤の不調と序盤のラッキーパンチで勝ったようなものであり、手数にしてもコンビネーションの組み立てにしても、世界のトップレベルに通用するとは思えないからである。とりあえず、ポンサクレック戦はなんとか回避するのが賢明であろう。

一方の内藤。昔の輪島と同じように、変則スタイルで体のキレがなくなってしまったのでは仕方ない。2ラウンドの左を食らうようなポジショニングは、大げさに言えばポンサク第一戦以来である。これが日本人相手で初黒星となるが、昨年の清水戦から衰えが目立っていたので、予想は外れたけれどそれほど意外ではない。あと、いくらなんでもバラエティー番組に出すぎだった。

それにしても、今夜はヤケ酒を飲むボクシングファンが多いだろうなあ。

 

内藤はなぜ負けたか[Dec 2, 2009]

日曜日のタイトルマッチ、考えれば考えるほど、亀田が勝ったというより内藤が負けるべくして負けたという感が強くなってきた。

試合が終わった直後には、2Rのクリーンヒットで終わってしまったな、という感想であった。ボクシングも他の格闘技と同様、実力が伯仲していても(あるいは多少実力が劣っていても)、機先を制することにより試合を支配することができる。今年のタイトルマッチでいうと、リナレスの負け、コットの負け、いずれも機先を制されたことによるものである。

また昨年来、試合のたびに動きが悪くなっていく内藤の姿を見ていたので、やっぱり年齢的な限界が来たのかな、とも思った。35歳というと、昔は現役を続けることができる年齢とは思われなかったのである。

しかし、過去のチャンピオンの中には、機先を制され、しかも深刻なダメージを負っているにもかかわらず、試合を逆転した選手もいる。日本人チャンプでいうと、何と言っても大場政夫であろう。

大場は最後の2回の防衛戦、オーランド・アモレス戦、チャチャイ・チオノイ戦とも、初回に強烈なダウンを奪われている。チャチャイ戦に至っては足をくじいてしまった。足を負傷すると、フットワークが使えない上にパンチを打つときに力が入らない。まさに、致命的ともいえる状況にもかかわらず、その足で戦い続け、とうとう逆転KOに仕止めたのである。

また、年齢的な限界ということでは、バーナード・ホプキンスはじめ、シェーン・モズリー、マルケス兄弟など、最近のトップボクサーの中には30歳を越えてから一段と強くなっている選手が何人もいる。食事管理やトレーニング方法の改善、試合間隔、前日計量となったことなどにより、昔と比べるとボクサー寿命は格段に延びているのである。

ではなぜ、内藤にはいいところがなかったのか。確かにファイティングスピリットは見せてくれたけれど、技術的には全くといっていいほど持ち味が出せなかった。私が考えるに、おそらく内藤の敗因はオーバーワークではなかったかと思う。

テレビ用の映像ということもあるのだろうが、内藤のトレーニングをみるといつも目一杯である(階段上りやクロスカントリー、サンドバックにしても)。しかし、亀田の年齢であればともかく、30半ばの選手にはそれなりのトレーニング、調整方法があるのではないだろうか。純粋にスタミナ勝負や瞬発力勝負をしたら、35歳が23歳を上回るのは容易ではない。

考えられる要素としては、減量がきつくなったこと(年齢とともに基礎代謝は落ちる)、そして世界チャンピオンになる以前と違って、一日中ボクシングをできる環境にあることなどがあげられるだろうが、内藤の年齢であればこれまでの練習と経験で培ってきたものがあるはずで、実力を示すべきは練習ではなく、本番のリングなのである。

内藤のリングインの時の表情は、「無理している」ように感じられた。これはおそらく、左脳が「勝たなければ、倒さなければ」と思っている一方で、右脳では「ちょっとつらいよ。若い時みたいに動けないよ」と無意識に思っていたような気がする。表現に語弊があるかもしれないが、きつい練習をしすぎて本番は一杯一杯になってしまったのではないか。

(これは、中年というより初老の私も教訓とすべきことで、何でも若い人と同じようにやればいいというものではない。老兵には老兵の戦い方がある、ということかもしれない。)

実際の試合は皆さん見られたとおりで、2Rの左はポンサクレックと戦った時点ではかわせていたパンチなのである。1Rのフットワークもポジショニングも、よく考えるとおかしかったし、もしかすると2万人の観客(MGMグランドより多い)にも緊張してしまったのかもしれない。

さて、40%超という高視聴率、内藤にとって不本意な結果、長期防衛王者の特典ともいえる契約上のオプションなどを受けて、おそらく再戦に向けて動き出すことになるだろう。ただ、個人的な意見を述べれば、先週のようなコンディションと精神状態で戦う限り、内藤が興毅に勝つのは難しいような気がする。

内藤が昔の実力に近い状態に持っていくということだけ考えれば、ノンタイトルのスーパーフライ級10回戦、後楽園ホールで、内藤が入れ込まずコンディションをうまく持ってこれるような条件が望ましい。ただ、望む望まないにかかわらず大金とTBSが絡んでくるので、これは難しいかもしれない。