040 ブロナー、3階級制覇 [Jun 21, 2013]

WBA世界ウェルター級タイトルマッチ展望(6/21、ニューヨーク・バークレイズセンター)
ポール・マリナッジ(米、32勝7KO4敗) +1100(12倍)
O エイドリアン・ブロナー(米、26戦全勝22KO) -2000(1.05倍)

いくらプロナーが強いといっても、135ポンドが147ポンドのチャンピオンと戦うのに、このオッズの開き方は尋常ではない。他のウェルター級チャンピオン(メイウェザー、アレクサンダー、ブラッドリー)の誰とやってももっとオッズは接近するだろうし、そもそも12ポンドも一気に上げてブロナーがフィットできるかという問題がある。

最近のボクシング界では、ウェイトを上げることにそれほどネックはないようである。とはいえ、モズリーがライトからウェルターに上げた頃には、それまでほとんどKO決着していたのに途端に判定決着が増えたし、バーノン・フォレスト相手に連敗ということにもなった。その後もメイウェザー、パッキャオ、ファン・マヌエル・マルケスあたりが同じような上げ方をしているが、同様に倒し切るのは難しくなっている。

ブロナーのここまでの戦績、戦い方、力の違いはモズリーとよく似ている。また、体格的にも似たところがあって、ここまで上げてしまうとサイズが小さい。だから、ブロナーが例えばプロボドニコフ(ブラッドリーに善戦)と戦うとすれば、ちょっと苦しむだろうと思う。

ブロナー自身がウェルター級にフィットするのかという点については、この試合の出来を見たいというのが本当のところである。ライト級までの相手は、ジャブで十分にダメージを与えることができたし、ブロナーの強打をかいくぐって前進できた選手はいない。ところが、モズリーの例にみられるように、それがこの階級の選手はできるのである。

だから、このクラスのチューンナップ・マッチとしてマリナッジというのは、うまく選んだという感じである。ブロナーとしては、単発の攻撃だけでなく、コンビネーションやカウンターが打てるかどうか、相手の攻撃を真正面で受けないディフェンスができるかどうかが課題となる。マリナッジ相手の場合、少々ディフェンスでしくじっても問題はないだろうが。

かたや、アマチュアの全米チャンピオンからプロ転向した“マジック・マン”マリナッジ。スーパーライト、ウェルターの2階級を制覇しており、負けた相手はほとんどビッグネーム(コット、ハットン、アミール・カーンあと一敗ファン・ディアスには再戦で勝利)だから一流とはいえるのだが、このKO率、けれん味たっぷりの戦い方では、大きな支持を得るのは難しい。

いかに間合いを外そうともブロナーの強打がマリナッジを襲うことは間違いないし、マリナッジのパンチではブロナーには効かない。スピードもテクニックもブロナーの方が上。マリナッジは「ウェルターの相手と戦っていない」と指摘してはいるものの、耐久力でもおそらくブロナーが上回るだろう。

オッズどおりブロナー勝利以外の展開を予想するのは難しい。

 

WBA世界ウェルター級タイトルマッチ(6/21、ニューヨーク)
エイドリアン・ブロナー O 判定(2-1) X ポール・マリナッジ

私の採点は116-112ブロナー。正直なところスプリット・デシジョンにはびっくりしたが、よく考えると、もっと地元判定のきついところでやったらブロナー負けはありえたかもしれない。少なくとも、ソウルオリンピックでロイ・ジョーンズが負けた判定と比べれば、ブロナーに言い訳はきかなかったと思われる。

その原因は、もっぱらブロナーの手数の少なさにある。確かにマリナッジのパンチは効かないけれども、あれだけ手数に差があればポイントをとられたとしても仕方がない。ましてや、マリナッジからダウン一つ奪うことはできなかった。11対1のオッズほどには差のなかった試合であった。

そして、マリナッジの側からみれば、彼のベストバウトといってもいい出来のように見えた。相手の攻撃をフットワークやクリンチですかして、軽いクリーンヒットでポイントを奪うというのがいつもの手なのに、この日は攻めた。ブロナーのボディに執拗に攻撃をかけたのは大したもの。効果は少なかったにせよ、顔面へのストレートも何発かは決まっていた。

これをマリナッジの出来の良さ、地元の大声援で後押しされたとみることも可能だが、それに加えて、現時点ではブロナーがこのクラスにフィットしていないという点も指摘しなければならない。予想記事で述べたように、モズリーがウェルター級に上げた時がまさにそうであった。スピードやキレは相変わらずでも、パワーが相対的に落ちてしまったのである。

相手がライト級までであれば、少なくともダウンくらいは取れていたと思われるカウンターやパワーパンチをブロナーは何回か決めていたけれども、単発のパンチでは倒すことはできなかったし、コンビネーションで追い詰めることもできなかった。確かにマリナッジはしぶといが、ハットンやアミール・カーンはレフェリーのストップを呼び込んでいる。今回のファイトにはそういう場面はなかった。

Boxrecのウェルター級ランキングでは、初登場のブロナーは6位で、パッキャオの下、ロバート・ゲレロの上。マリナッジは負けたのにランクを上げて19位となった。自信満々のブロナーとしては、このランキングは不本意だろうが、この見方はうなずける。この日の内容でブラッドリーやデボン・アレクサンダーとやっていたら、もっと厳しい結果となっただろう。

試合後、インタビューでブロナーは「誰とでもやるよ。(メイウェザー以外ならね。←聞き取れなかったが)」と言っていたけれど、このままウェルター級で戦えば、モスリーがバーノン・フォレストに敗れたような場面が必ずや出てくるものと思われる。しかしながら、あの体を作っておいて今更12ポンド落としてライト級というのは無理。スーパーライトで4階級目を狙う場合は7ポンドの減量、ウェルター級で戦い続けるとすればパワー不足。いずれにせよ、辛い選択になりそうだ。

少なくとも、スーパーフェザーやライト級で戦っていたときのような、付け入る隙のない圧倒的な強さはブロナーに感じられなかった。天才型のボクサーであるだけに、経験を積んで適応するということはあまりないような気もするのだが。