051 コット、4階級制覇! [Jun 7,2014]

WBC世界ミドル級タイトルマッチ(2014/6/7、ニューヨークMSG)
O セルヒオ・マルティネス(51勝28KO2敗2分け) 1.6倍
ミゲール・コット(38勝31KO4敗) 2.0倍

正直なところ、この1戦がミドル級トップクラスの試合だとみている人はそれほど多くはないであろう。

マルティネスがケリー・パブリックに完勝し、ポール・ウィリアムス、セルゲイ・ジンジルクを続けてKOに破った頃は、間違いなくミドル級最強のチャンピオンであった。ところがその後はイギリス人ランカーとの防衛戦を続け、チャベスJr.はほぼ完封したものの最後はKO寸前まで追いこまれた。ああいう試合をするということは、ピークが過ぎてしまっていることは間違いない。

かたやコット。パッキャオにKOされメイウェザーに完封され、あげくはオースティン・トラウトに明白な判定負けで内定していたカネロ・アルバレス戦がなくなってしまった。加えて、ミドル級では試合をしたこともないのである。プエルトリコ初の4階級制覇と本人は言っているようだけれど、あまりきちんとした過程を踏んでいるようには思われない。

したがって、チャンピオン・挑戦者ともに一枚落ちということであり、チャンピオンシップとしてはあまり評価できない。加えて、どちらが勝ったとしても今後の展望が開けないのである。マルティネスにチャベス再戦があるかどうかくらいで、現在クラス最強とみなされているゲンナディ・ゴロフキンやスーパーウェルター級のカネロ・アルバレスと戦うことはなさそうだ。

このように考えていくとどうにも興味が半減してしまうのだが、机上で計算する限りオッズ以上にマルティネスが上のように思っている。何と言っても、ミドル級におけるキャリアが違う。スーパーウェルターからミドルの6ポンドは、ウェルターからスーパーウェルターまでの7ポンドより大きな差があるのである。

最近で言えば、フェリックス・トリニダードもオスカー・デラホーヤも、スーパーウェルターまでは圧倒的に強かったのにミドルでは体力の差が出た(チャンピオンにはなったが)。ロナルド・ライトもシェーン・モズリーも、ポール・ウィリアムスでさえミドル級のタイトルはとっていない。

マルティネス自身も下のクラスから上がってきた選手ではあるものの、本格化したのはミドル級にフィットしてからである。スーパーライトの時に一番強く、クラスが上がるにしたがって並みのボクサーになってしまったコットとは、ちょっと違う。

心配されるのは1年振りの実戦ということだが、もともとスピードで勝負するタイプではないので、それほどの劣化はないとみている。コットのパンチでマルティネスがぐらつく場面は、どうしても想像できなないし、逆に、「これがコットの最後の試合になるよ」と言っているマルティネスがKOすることはあるかもしれない。ということで、マルティネス判定に1票。

 

WBC世界ミドル級タイトルマッチ(6/7、ニューヨーク)
ミゲール・コット O TKO10R X セルヒオ・マルティネス

1年振りマルティネスのブランク明け1Rにコットの左フックが炸裂、試合が決まってしまった。コーナーがフレディ・ローチなので、まるでパッキャオが戦っているかのような錯覚を覚えるほどだった。ただ、1Rのコットの攻撃で決まったのか、マルティネスがそもそも戦えるコンディションでなかったのかは議論の分かれるところかもしれない。

39歳というのは昔の基準からするとピークをとっくに過ぎている年齢である。ウェイトの大して変わらない輪島だって、32を越えたあたりで完全に往年の力はなくなっていた。パワーは残っていたけれど、スピードとキレが全く鈍っていたのである。その意味では、若い時から万全のサポートを受けていた訳ではないマルティネスが衰えているのは仕方のないことである。

今から振り返ると、チャベス戦の前のマシュー・マクリン戦あたりから劣化のきざしは見えていたように思う。マルティネスタイプのボクサーは、基本的に相手に前に出させてカウンターを取るべきところ、あの頃から自分が前に出ようとする傾向がみられた。これは、長期戦に耐えるだけの体力的裏付け(スタミナとか膝や腰の強さとか)に自信がなかったからのような気がする。

してみると、チャベス戦はチャベスが失敗したということであり、もう少し早めに攻勢をかけていれば捕まえられたのかもしれない。とはいえ、あの時点でそれをさせなかったマルティネスが強かったということだろう。

1Rで4点差をつけられ、ダメージも残ってしまった時点でマルティネスの打つ手は限られた。あとはポール・ウィリアムスを沈めたような逆転のカウンターに頼る他なくなったが、そこはもともとディフェンスの堅いコット、無理に攻めずに的確にパンチを決め、最後はギブアップさせたのは見事であった。マルティネスにとって、コットではなく自分のラストファイトとなってしまいそうである。

2、3Rにあれだけ足がふらつくマルティネスを追い込まなかったコットだが、それがコットの悪いところでもありいいところでもある。開始早々は自分も相手も体が温まっておらず、決めに行ったつもりがカウンターをもらう可能性は十分考えられるから、ああいうやり方もありうる。実際、6R終了時点ではダウンしなければコットの勝ちという点差がついていたのである。

とはいっても、この試合155ポンドで戦ったコットが、この先ミドル級で戦う可能性はそれほど大きくはない。実際、体格的にはミドル級では小さいマルティネスよりさらに小さく、ゲンナディ・ゴロフキンだのピーター・クイリンとやれば吹っ飛ばされてしまうだろう(サム・ソリマンは大丈夫かもしれない)。

おそらく今後最も可能性があるのは、一度つぶれたカネロ・アルバレス戦ではないだろうか。もともとスーパーウェルターのカネロなら体格的に全然敵わない訳ではないし、カネロとしてもミドル級はいずれ進出しなければならないクラスである。そして、言うまでもなくメガファイトになる。同じフレディ・ローチ門下のパッキャオという訳にもいかないだろうから、個人的には一番手に予想しておく。