042 メイウェザーvsカネロ・アルバレス [Sep 14,2013]

WBA/WBC 世界スーパーウェルター級タイトルマッチ展望(2013/9/14、米ラスベガス)
フロイド・メイウェザー (米国、44戦全勝26KO) -225(1.44倍)
O サウル・アルバレス(メキシコ、42勝30KO1引分け)  +175(2.75倍)

メイウェザーが現役選手としてパウンド・フォー・パウンド最強であることは多くの支持を得られることと思うが、それではここ50年というスパンでみた時に最強かというと、かなり疑問が残る。その最大の理由は一発KOの破壊力がないということで、その観点からみればロベルト・デュランやシュガー・レイ・レナード、マービン・ハグラーの最盛期の方が上だったろう。

しかし、理由はそれだけではない。メイウェザーの対戦相手としてその時点でクラス最強といわれたのはコラレス、カスティージョくらいのもので、あとは盛りを過ぎた選手(コットとかモズリー)、適正ウェイトでない選手(マルケスとかゲレロ)だった。その点では、ハットン、コット、デラホーヤ、マルガリトなど難敵を退けてきたパッキャオの方が印象深い。

その点でいえば、アルバレスがスーパーウェルター級最強であることは間違いなく、メイウェザーにとってコラレス、カスティージョ以来の強敵といえる。かつてマルガリトやパッキャオとの対戦に難癖をつけて実現を避けてきたメイウェザー陣営は、アルバレスとも「体重が違いすぎる」と対戦に消極的だったはずが、急転直下実現した。

キャッチウェイト152ポンドなら、アルバレスにとってもそれほどマイナスはない。それなのになぜ、イウェザーがこの試合を受けたのかを想像するに、アルバレスの前の試合(オースティン・トラウト戦)をみて、くみし易しとみたということだろう。

確かに、トラウト戦のアルバレスはよくなかった。ダウンこそ奪ったものの手数が少なく、トラウトを追うことができなかった。加えて、ボディをはじめとした打たれ弱さも垣間見せてしまった。ただし、アルバレスは成長途上である。前の試合よりも今度の試合の方が、間違いなく力をつけてくる。

考えてみればトラウトも無敗のチャンピオンで、決して楽な相手ではなかった。アルバレスはこれまで、「勝てる」相手を選んで戦っており、カーミット・シントロンやシェーン・モズリーは盛りを過ぎた選手。本来の意味の強敵と戦うのは、前回が初めてと言ってよかったのである。だとすれば、苦しみながらも3-0判定を勝ち取り、今回さらに上の力を発揮すると考えてもいい。

確かにメイウェザーは速いしディフェンスは神業だが、パワーがないという欠点は階級を上げるにしたがって弱点となるだろう。アルバレスが被弾覚悟で前半からボディを攻め続けた場合、階級は違うもののカルデロンvsセグラのようにメイウェザーが失速することがありうる。

メイウェザーはここ数戦厳しい相手と戦っていない。かつてのカスティージョのようにアルバレスが徹底して攻めれば、メイウェザーもすべてのパンチを避けきることはできない。問題はアルバレスのディフェンスだが、もともと勘のいい選手なのでダメージをため込むことがないことを期待したい。

アルバレスの2-1判定勝ち。試合が終わってメイウェザーが、「彼のパンチなんか全然効いてないよ。こんなおかしな判定があるもんか。」って言うことを期待したい。

 

WBA/WBC統一世界スーパーウェルター級タイトルマッチ(9/14、ラスベガス)
フロイド・メイウェザー O 判定(2-0) X サウル・アルバレス

単にメイウェザーが強かったということなのかもしれないが、個人的にはとても期待外れだった試合。ちなみに私の採点は117-111メイなので、判定は明白。

なぜ期待外れだったかというと、初めの3Rでほとんど試合の帰趨が見えてしまったからである。カネロがああいう序盤の入り方をしたということは、もしかすると普通にやれば自分が勝つと思っていたのだろうか。それはちょっと甘いだろう。少なくとも、ビクター・オルティスとやった時の方が、まだ番狂わせの期待を持たせる戦い方だったように思う。

メイウェザーは、2009年にカムバックして以来最も出来がよかったと思うし、試合が決まるまでほとんど遊ばなかった。普段はよくロープ際で相手のパンチを交わして休むのだが、カネロのパワーパンチを警戒したのだろう。ほとんどロープに詰まらなかった。かえって、メイウェザーがプレッシャーをかける場面すらみられた。

アルバレスはとうとう最後までL字ガードを崩すことはできなかった。単発とはいえボディを攻める場面もあり、そこから左フックを返せればいい展開もあったと思うのだが、メイウェザーに鋭いストレートを打ち込まれて左をディフェンス中心に使ってしまった。ウェイトが違うのだから相打ち狙いをする作戦もあったと思うけれど、そのあたりがアルバレスの現状ということだろう。

それでも、まともにストレートや左フックを食らったカネロがダウンしそうにも見えなかったから、パンチのパワーという点でみるとメイウェザーにはスーパーウェルターは厳しいということだろう。まして当日計量が前日よりアンダーなどと聞くと、今後はウェルター級が主戦場となるのではないか。

負けたアルバレスで一番気になったのは、手数の少なさである。メイウェザーにそうそうクリーンヒットなどできるはずもないのだから、5回6回空振りしても当り前と考えなくてはいい試合はできない。手数を減らして狙いを定めてなどとやるから、メイウェザーの思う壷になる。

村田選手の解説で、「空振りは疲れるしモチベーションが下がる」と言っていたが、テクニックで劣る側がこれでは困るのである。その意味では、メイウェザーの選ぶ相手が、実績があってカネがある選手がほとんどというのは、戦略的なのかもしれない。相手の3倍4倍体力を使って、いくら打たれても前進するなどという選手は、それこそカスティージョ以来やっていない。そういうハングリーさを持たない選手では、メイウェザー攻略はできないだろう。

現状では、ウェルター級周辺でメイウェザーと組まれる選手では、誰がやっても今日の試合のようになりそうだ。最も善戦できそうな選手はプロボドニコフのような気がするが、ネームバリュー的にビッグマッチとはなりにくい点で、実現は難しそうだ。

 

メイウェザーvsカネロ後日談(PPV新記録とシンシア婆さんの判定)

世紀のメガマッチ、メイウェザーvsアルバレスは、大方の予想通り過去最高のペイパービュー収入を記録したとのことである。概算で150ミリオンダラーというから150億円!ただし視聴者数は220万世帯で、メイウェザーvsデラホーヤ(248万世帯)をわずかに下回った様子とのこと。vsカネロが$75、vsデラホーヤが$50という単価の差が効いたことになる。

メイウェザーの相手としてカネロ以上にネームバリューと実力のある選手はいないから(ゴロフキンとやるとも思えないし、やったとしてもカネロよりは盛り上がらない)、この記録はおそらくメイウェザー時代の最長不倒となるだろう。日本のボクサーで1試合1億円取れる選手はほとんどいないから(薬師寺vs辰吉とか畑山vs坂本でやっとこさ1億くらい。)、夢のような話である。

さて、この対戦で114-114のドローをつけたジャッジ、C.J.ロスが大変な非難を浴びている。知らなかったのだがこの方、御年64歳のお婆さんでC.J.のCは”Cynthia”だそうである。非難されている大きな要因は過去にも物議をかもす判定があったからで、その最大のものはブラッドリーvsパッキャオで115-113ブラッドリーとつけた判定だそうだ。

他にも、アブネル・マレスvsジョゼフ・アグベコ第一戦で114-114ドロー(他の2人は116-112マレス)、ファン・カルロス・ブルゴスvsルイス・クルス戦で95-95ドロー(他の2人は98-92、97-93ブルゴス)など、Fightnews.comでは6試合の疑惑の判定をあげている。

こうした非難を受けて、C.J.ロスはネバダ州コミッションに対し、「しばらくボクシングから離れます。」と申し出たということである。以前から、ラスベガスの判定には不可解なものが少なくないとされてきたのだけれど、ここまで目立ってしまっては仕方ないだろう。

正直なところ、メイウェザーvsカネロでドローをつけるというのは、どこを見て評価していたのかと言われても仕方のない判定である。しかし、あのジャッジだからおかしな判定だったと過去に遡られてしまうのは、自業自得とはいえ気の毒である。個人的には、ブラッドリーvsパッキャオは、ブラッドリーにつけるジャッジがいても仕方ないと思える試合だった。