041 藤本、KOで日本ヘビー級チャンプ [Jul 25,2013]

日本ヘビー級王座決定戦展望(2013/7/25、後楽園ホール)
藤本 京太郎(角海老宝石、6勝4KO1敗)
O オケロ・ピーター(緑、21勝19KO6敗)

ランカーが4人しかいなくても、クルーザーにもライトヘビーにもチャンピオンがいなくても、ともかく半世紀振りに日本ヘビー級タイトルが復活する。しかも、オケロ・ピーターは元世界挑戦者である。何はともあれ、楽しみである。

ランキング1位は元K-1選手の藤本。K-1で戦っていたのでリング慣れしているだろうし、勝てばチャンピオンなので張り切るのは間違いないが、そもそもボクシングスキルがどの程度あるのかは大いに疑問である。というのは、日本国内では練習相手がいないし、これまで戦ってきた相手のレベルも高くない。一発決めれば倒せるかもしれないが、試合がこう着した時に打開できるかどうか。

昨年12月のOPBF王座決定戦では、オーストラリアチャンピオンのソロモン・ハウモノに5RTKO負けを喫している。そのハウモノは次の試合で、世界戦経験者のケビン・ジョンソン(2009年ビタリ・クリチコに判定負け)にKO負けしているので、世界との距離は相当に遠いのは間違いない。

かたやピーター。何と言っても世界戦経験者である。2006年オレグ・マスカエフのWBCタイトルに挑戦したが判定負け。マスカエフ以外にも、カリー・ミーハン、シナン・サリム・サンといった世界ランカーと戦っている。

実績ではどう考えても藤本よりかなり上だし、ボクシングテクニックにも差がある。問題は41歳という年齢と、マスカエフ戦の後にブランクがあり、決して世界レベルとはいえない相手にKO負けするなど、かつてのレベルに戻っていないのではないかと思われる点である。

とはいえ、40代で現役というのは特に重量級では珍しくないし、藤本とは身長差・リーチ差があって体格的にもかなり有利である。しかも頭が小さいので、藤本はかなり踏み込まないと届かないだろう。ピーターが細かくジャブを突けば、藤本は近づけないのではないだろうか。

ヘビー級でレベル的には今一歩ということになると、大振りで一発狙いという大味な試合を想像してしまうが、ピーターにはぜひスタイリッシュな試合を見せてほしいものである。ピーターKO勝ちに一票。

 

日本ヘビー級タイトルマッチ(7/25、後楽園ホール)
藤本 京太郎 O TKO6R X オケロ・ピーター

予想記事を書いていたら、できたら行って見てきたいなあと思った。木曜日の仕事も何とか定時に上がったので、水道橋で下りて後楽園ホールへ。5000円払って後から2番目の列。後楽園ホールは、考えてみれば内山がフセインをKOした時以来である。

アンダーカードもなかなか面白かったがそれは改めてお届けするとして、メインイベントの藤本vsピーター戦。56年振りの第2代日本ヘビー級チャンピオン決定戦である。場内はほぼ満席。「ほぼ」というのは、アンダーカードを見て帰ってしまった応援団がいて、やや空席が目立ったからである。

まず、青コーナーにオケロ・ピーター登場。後楽園ホールに190cmを超えるピーターが入ると、最後方の席からみてもはっきり分かるくらいでかい。続けて赤コーナー藤本京太郎登場。髪を黄色と赤に染め分けている。個人的にはボクシングなんだから髪を染めちゃいかんだろうと思うが、最近は刺青しててもリングに上がれるので仕方がない。

日本タイトルが懸かるからか、国歌独唱がある。森口博子である。ここ20年くらいはバラエティにしか出ていないように思うが、そういえばもともと歌手である。後楽園ホールくらいならアカペラでやってほしいが、マイクが入るのはテレビ中継だからなのだろうか(金曜日の深夜にTBSで録画放送あり)。

さて試合が始まると、ちゃんとボクシングの試合になっている。体格に勝るピーターが左のゆるいジャブを突きながら前進すると、藤本はフットワークを使って距離を置く。ピーターのジャブは当たらず、かえって藤本のジャブがよく当たる。一発当てるとすぐに足を使って回り込むのに対し、ピーターは追う足がない。

4Rくらいから、ピーターも距離を詰めだしたが、接近しても藤本のカウンターがよく当たる。ピーターは藤本をロープに追い込んで、さあパンチを打とうとするともうそこには藤本はいない。藤本は体重を絞ってきたというだけのことはあって、動きが軽い。また、ちゃんとボクシングができているのには感心した。

5Rまでピーターのパンチはほとんど当たっていないので、採点は藤本だっただろう。6R、このままではいけないと思ったのかピーターはさらにプレスを強めるが、ジャブに鋭さがなく動きも緩慢なので、上体だけが出ている感じ。ジャブだけだったら、同じ緑ジムの竹原の方がよっぽどちゃんとしたジャブを打っていた。

このラウンド終了間際、フック気味の右ストレートが入ってピーターが足をもつれさせ、そこに藤本が連打で追撃するとピーターダウン。さすがにヘビー級のパンチである。ビーターはなんとか立ち上がったが、ストップされてもおかしくないほどふらふらである。残り10秒もなかったが、藤本さらに追撃してピーター再びダウン。レフェリーが止めてTKO。

試合が決まったので、混む前にダッシュで出口に向かう。エレベータが空いていたので滑り込む。「ピーターも強かったんだけどね。今日はスピードがなかったね。衰えたんだろうね。」と言っている人がいたのでよく見てみたら渡嘉敷だった。56年ぶりの日本ヘビー級戦。ともかく試合になっていたので、見に行っただけのことはあったようである。


例によって携帯なのでよく撮れてませんが、ピーターはでかかったです。

藤本vsオケロ・ピーター アンダーカード回顧

藤本vsピーターのアンダーカードはそれぞれに面白く、角海老ジム選手のインタビュー(15分位かかった)を除いては退屈しなかった。

惜しむらくは、あまりボクシングに興味がないであろう角海老応援団(お揃いのTシャツ着用。ヤンキーっぽい)が、ラウンド最中に立ち上がったり、ビールの受け渡しをしたり、トイレに行ったりして、しばしば視界をさえぎられたことである。まあ、MGMでもステープルズセンターでも、同じような人はいるのだけれど。

第一試合 フライ級8R
坂下優友(角海老) ○ 判定(3-0) × マーク・デュラン(フィリピン)

坂下は2011年新人王。デュランは2週間前に急きょ試合が決まったそうだが、なかなかアグレッシブで打たれ強かった。私の採点は78-74坂下。ジャッジもほぼ同じ。坂下はもう少しパンチが切れないとなかなか上は難しいだろう。

第二試合 バンタム級8R
藤原陽介(ドリーム) ○ 判定(2-1) × 久保賢治(角海老)

久保は元K-1選手。藤本、土屋もそうなので、今回はそういう興行だったようだ。2Rにボディーで2度ダウンを奪った久保だが、追い込みきれず、かえって藤本の反撃を許した。クリーンヒットは試合全般を通して藤原が多かった。私の採点は76-74藤原だが、角海老の興行なので久保が取るのだろうなと思っていた。スプリット・デシジョンで藤原。

第三試合 ライト級8R
中谷正義(井岡) ○ KO3R × 土屋 修平(角海老)

実はこの日の隠れメインはこちらだった。両者ともKO率は80%を超え、いずれも日本ランカーという対決。中谷は興国高校出身の24歳だから、井岡・宮崎のWBA軽量級コンビと同級生。スタイルも井岡に似ている。やたらと挑発的なパフォーマンスをやるのがどうかと思うし、実際ノーガードで土屋のクリーンヒットをもらっていた。

最大の勝因は距離の違いで、180cm対170cmの身長差でリーチ差もかなりあった。土屋が強打を打ち込もうと体が伸びきったところに中谷のボディが炸裂し、座り込むようにダウン。再開後もまともにボディの連打を食ってカウントアウト。体の柔軟さにも差があったように思う。この試合後に大阪応援団が退出。井岡もいたらしい。

第四試合 ヘビー級8R
竹原 虎辰(緑) ○ 判定(3-0) × 樋高リオ(渥美)

ピーターと竹原が勝ち残らない限り、この勝者がヘビー級タイトルの挑戦者となる一戦。竹原は7勝3KO8敗3引分け、樋高が10勝8KO1敗と戦績では樋高だが、私は竹原の方に分があると思っていた。キャリアと戦ってきた相手が違うからである。

実際、竹原の右フックで樋高がロープに下がって防戦一方という展開が目立った。樋高もアッパーを決めて応戦したが、体格差もあり試合全般を竹原が支配した。二人とも8Rまで手を出し続けたのは立派だが、残念ながらメインの2人とは差があった。私の採点では78-74竹原。

第五試合 女子4R
高野 人母美(ともみ) ○ 判定(3-0)  × ヨッカオ・ローエイシティジム(タイ)

高野はモデル・ボクサーとかで、180cm近い背の高さ(身長差15cm)、手足の長さは目立った。しかしヨッカオもさすがムエタイの国から来ただけのことはあって、高野の攻勢をしのぐと大振りの左右フックを放って威嚇。これで高野の前進が止まってしまった。

あとは高野が遠距離からジャブを放って4R判定。モデルだから顔が大事なのは分かるが、お客さんはボクシングを見に来ていると思う。とはいっても、この試合が終わって席を立った人もいたから、それでもいいのだろう。女子が2分1ラウンドだということを知ったのは収穫だった。


第三試合・土屋vs中谷。手前青コーナー長身の選手が中谷。パフォーマンスが余計だが、なかなかいい選手。