057 パッキャオvsアルジェリ@マカオ [Nov 23,2014]

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ展望(2014/11/23、マカオ)
マニー・パッキャオ(フィリピン、56勝32KO5引分け2敗) 1.07倍
Oクリス・アルジェリ(米、20戦全勝8KO) 9.0倍

アルジェリが勝つと本気で予想している訳ではないけれども、このオッズでパッキャオは買えないと思っている。

10月のスタブハブセンターの後、Fightnews.comに「メイウェザーとゴロフキン、どちらがパウンド・フォー・パウンドか?」というアンケートが掲載された。さすがにメイウェザーの方が多かったのだけれど、その比率は6:4。ゴロフキンが本当の一線級相手の試合をやっていないことからすると、いまやメイウェザーの評価は下降線にあるといえそうだ。

パッキャオについてもこれは同様のことで、思うに、彼ら二人ともカネの稼げる相手、知名度の高い相手とばかり戦っていて、クラス最強とみなされる相手との対戦を微妙に回避しているのである。特にパッキャオについては、パッキャオ戦に敗れて「以降」に世界チャンピオンとなったのは、ライト級より上ではミゲール・コットだけである。

だからパッキャオは弱い相手とばかり戦っているというつもりはないけれども、彼が本当に強かった時期はいつのまにか終わったのではないかと思っている。マルケス第4戦にしても、KOされるまでの展開がすでに一進一退であったことを認めない人はいないだろう。リッキー・ハットンを失神させ、コットやモズリーをダウンさせた左フックは、最近ほとんど決まらなくなった。

そして、アルジェリ自体、かなりの難敵ではないかという気がして仕方がない。プロボドニコフ戦では1RにKO寸前まで追い込まれ、あとのラウンドをアウトボックスしまくってポイントアウトした戦い方には全く脅威を感じられないし、アルジェリがパッキャオをKOすることはほとんど可能性ゼロと言わざるを得ないが、あの逃げ足をパッキャオが追えるかという懸念は大きいのである。

パッキャオがいい試合をした相手はほとんどが好戦的な選手で、一発当てようと接近したところでパッキャオのカウンターをもらったり、打ち疲れを待とうとガードを固めていたらペースを握られてしまったというパターンが非常に多い。徹底して足を使うという選手はこれまでいなかったし、足を使われたブラッドリー第一戦では微妙な判定を失っている。

アルジェリが12R逃げ回って、細かいジャブでポイントを稼ぎ、パッキャオは空振りばかりという展開は、オッズほどには低くはないとみている。とはいえ、-400と+350くらいが妥当なところだろうという意味で、アルジェリ有利とまではとてもいえない。それでも、一時期の日本選手の世界挑戦ほどには、可能性がない話ではないと思うのである。アルジェリ判定にちょっとだけ。

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ(11/23、マカオ)
マニー・パッキャオ O 判定(3-0) X クリス・アルジェリ

パッキャオが6度のダウンを奪って(内2回はスリップ判定が妥当だったが)、予想以上の完勝。ただ、この試合を見て思ったのは、対戦相手がパッキャオをこわがらなくなっているということだった。

予想では、アルジェリはもっとアウトボックスをすると思っていた。しかし実際には、最初のダウン(本当はスリップ)で緊張がほぐれたのか積極的に攻めて行った。むしろもっとディフェンスに徹した方がよかったような気がするが、浜田さんの言うように、パッキャオの左は見切ったと思っていたのだろうか。だとすれば、パッキャオ健在とは必ずしも言えないことになる。

2回目と4回目のダウンを奪ったカウンターはさすがにパッキャオで、結果的にみればアルジェリとは格が違ったということになる。さらにいえばプロボドニコフも大したことはなかったということになるし、プロボドニコフに追い詰められたブラッドリーも力が落ちていたということになる。最近はHBOとSHOWTIMEの仲が悪いので交流戦がないけれど、このあたりのクラスはSHOWTIMEの方が強いということになりそうである。

アルジェリがもっとアウトボックスしたらどうだったろうか。5R6Rあたりのもたつき方をみると、パッキャオは捕まえるのに相当苦労しただろうと思うが、勝負だから「たられば」を言っても仕方がない。おそらく、序盤戦の感触でアルジェリは勝負になるとみたのだろうし、もし番狂わせを起こせばさらなるビッグマネーが入ってくる。責める訳にはいかない。

さて、これでパッキャオは念願のメイウェザー戦に一歩前進、というより踏みとどまった形になる。とはいえ、メイウェザーはボブ・アラムが嫌いだし、ウェイティングリストは数年分待ちだそうだし、今日の出来ではメイにパンチは当たらないように思うので、あまり興味がわかない。何か、3、4年前にやるべきカードだったように思う。メイにとっても、パッキャオにとっても。

アンダーカードのロマチェンコ、ゾウ・シミンともにKOチャンスに決めきれず判定決着。両者とも、技術ほどにはパワーがないし、打たれるとひるむところがプロ向けとは言えない。ゾウ・シミンはアムナットには苦労しそうだが、判定ならスプリットで勝ちそうだ。ロマチェンコは、ウォータースとやったら破壊力の差でやられるのではないだろうか。