048 パッキャオ・ブラッドリーⅡ [Apr 12, 2014]

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ(2014/4/12、米ラスベガス)
O  ティモシー・ブラッドリー(米、31戦全勝12KO)  +160(2.6倍)
マニー・パッキャオ(比、55勝38KO5敗2引分け)  -200(1.5倍)

Showtime+ゴールデンボーイ vs HBO+ボブ・アラムの冷戦により、パッキャオの相手が限定されてしまっている。本来であれば、メイウェザーはもちろん、ブロナー、マイダナ、ダニー・ガルシア、アミール・カーンなど、ウェルター近辺の錚々たるメンバーが候補に挙がってもいいところなのに、ブラッドリーとマルケス兄くらいしか相手がいないのが残念である。

さて、前回の対戦が微妙な判定だったことで組まれた再戦であるが、それではパッキャオが明らかに勝っていたかというと、そうではないと思っている。少なくとも、パッキャオはブラッドリーからダウンを奪ってはいないし、ラスト2ラウンドは明らかにブラッドリーが取っていた。シンシア婆さんが絡んでいたためミスジャッジとの評価もあるが、スプリット・デシジョンとなっておかしくはなかった。

その後、ブラッドリーはマルケス兄を完封しており、かたやパッキャオはマルケス兄にKO負けしているのだから、今回はブラッドリーが明白に判定をものにするだろうと考えるのが机上の計算である。ところがオッズはパッキャオ。人気があるからといえばそれまでだが、それだけでないのはご存じのとおり、ブラッドリーのプロボドニコフ戦があったからである。

パッキャオのトレーナーであるフレディ・ローチが、ジョーク半分ではあるが「ブラッドリーはプロボドニコフに壊されたんじゃないの?」とコメントしている。確かに、ブルファイターであるプロボドニコフとまともに打ち合い、13R以降があれば明らかに倒されていたと思われるブラッドリーが、かつてのように負けない強さを維持しているかどうかは課題といえるだろう。

ただ忘れてはならないのは、ブラッドリーはプロボドニコフ戦の後にマルケス兄と戦っていることである。例によって安全運転、勝利最優先のつまらない試合ではあったものの、全く危なげがなかったことは認めざるを得ない。となると、今回も同じような結果になる可能性の方が大きいと思っている。

パッキャオの試合の傾向として、的の大きい相手には非常に強みをみせ、圧倒的なパワーでねじふせてしまう(ハットンとかマルガリト)のだが、体格差がなく動きの早い相手を圧倒したという試合はそれほど多くはない。その意味では、前回のリオスは前者のケースだし、ブラッドリーは後者である。

あえて言ってしまえば、勝負最優先のブラッドリーと打ち合いを望むパッキャオでは、もともと噛み合わないのである。その噛み合わない相手と、プロモーターの関係で何度も戦わなければならないのが気の毒ではある。パッキャオが倒せば痛快だろうが、やっぱりブラッドリーが判定をものにしそうだ。

WBO世界ウェルター級タイトルマッチ(4/12、ラスベガス)
マニー・パッキャオ   O  判定(3-0) X  ティモシー・ブラッドリー

私の採点も116-112パッキャオ。しかし内容的には、ブラッドリーが勝手に負けた印象で、パッキャオが強さを見せたとは決して言えない試合であった。

5Rあたりにブラッドリーがコーナーに戻る足がおかしかったのは気付いていたが、試合中のアクシデントというよりも、慣れないスタイルで開始早々スタミナを使ったツケが回ってきたというのはうがち過ぎだろうか。マルケス戦の緻密なボクシングではなく、プロボドニコフ戦の大味なボクシングが一試合おいて再現されたようだ。

もともとブラッドリーのようなボクサーは、客にどう見られようが勝利最優先のつまらないボクシングをするのが持ち味であって、大して効かないパンチを単発大振りで振るったところで効果は知れている。1Rからパッキャオと正面から押し合い、いいカウンターを入れてはいたものの、それでパッキャオが倒れそうだったかというとそうではなかったろう。

一方のパッキャオ。同じウェルター級なのに、ジョシュア・クロッティ戦のようなノンストップの攻撃をかけることができなかったのは、やはり年齢からくる衰えではなかろうか。途中でブラッドリーの動きがおかしいのは気付いたはずなのに、追い打ちをかけるどころかカウンターをもらわないのが精一杯だった。

パッキャオの本当にいい頃は、相手がガードしようが体の動きでディフェンスしようが、それをかいくぐって強打を決めていた。今日ほとんど出なかったのは右フック。いつものブラッドリーには難しいパンチでも、今日のように意地になって前に出てくるならば右を合わせられたはずなのに、出なかった。左ストレートは、やはりマルケス戦が響いたのか踏み込みが浅い。判定は間違いないものの、見ている側には欲求不満が残る試合だった。

ブラッドリー第一戦、マルケス第四戦連敗の後、これで連勝。ブラッドリーに借りを返して完全復活と言いたいところだが、残念ながらクラス最強には程遠いと言わざるを得ない。トップランクで試合する以上相手が限定され、次はマルケスvsアルバラドの勝者が有力だろうし、それならどっちが出てきても勝つだろうが、マイダナやブロナー、キース・サーマン、ましてメイウェザーとははっきり差がついてしまったように思う。

現状でいい勝負と思われるのは、来週行われるIBFウェルターの両者とアミール・カーン。ただしプロモーターの関係もあり、実現するかどうかは不透明である。今日のアンダーカードもそうだったが、トップランク傘下の選手はぎりぎりの勝負をしていないだけ、GBP傘下の選手より弱いのではないだろうか。

一方のブラッドリー。明白な判定負けとはいえ足を痛めたという言い訳がききそうだから、また出てくるだろう。ただし、プロボドニコフ戦とか今回の戦いをするなら、このクラスではきつそうだ。そもそも筋肉を付ければパワーパンチが打てるようになる訳ではない。デボン・アレクサンダーもそうかもしれないが、パワーがない選手がクラスを上げるのは考えものだと思う。