039 パッキャオ、壮絶KO負け [Dec 8, 2012]

Special WBO belt “Fighter of the Decade”12回戦展望(2012/12/8、ラスベガス MGMグランド)
O マニー・パッキャオ(フィリピン、54勝38KO4敗2引分け) 1.3倍
ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ、54勝39KO6敗1引分け) 3.0倍

4回目の対戦で、これまでパッキャオの2勝1引分け。ただし今回の注目は、2人のどちらがより劣化しているかということだと思っている。

パッキャオ33歳、マルケス兄39歳。ともに20世紀から戦っている。54勝という勝ち星も同じなら、KO数も勝てなかった試合数も大して変わらない。パッキャオの年齢は選手寿命の長くなった今日の中量級では珍しくないが、それでもピークを過ぎていることは否定できない。

パッキャオの複数階級制覇路線は、後から考えると下降線に向かっていたビッグネームをうまく選んで勝ち進んできたという要因がある。デラホーヤはじめ、ハットン、コット、モズリー、マルガリトといった面々は、パッキャオと戦った時には全盛期の動きにはほど遠いものであった。とはいえ、体の大きい相手にスピードで対抗したパッキャオの強さは特筆すべきものだ。

パッキャオがマルケスと戦うといつも接戦となるのは、マルケスのスピードやカウンターをとる巧さ、ディフェンスの堅さがパッキャオに匹敵するからである。マルケスは計4度パッキャオからダウンを奪われているが、いずれも出会い頭の一発で、連打で追い詰められたという場面はほとんどない。逆に連打を食う場面はパッキャオの方が多いのである。

ともあれ、両者とも実力のピークから落ちていることは間違いない。今週WOWOWで放映されたマルケス弟のように、どちらかが急激な下降線をたどっているとすれば、一方的な試合となる可能性も含んでいる。

その可能性がより大きいのは、マルケス兄の方であろう。ディフェンスがうまいので弟ほどパンチは食らっていないが(弟の場合は、イスラエル・バスケス4連戦の影響が大きい)、パッキャオとの3戦、バレラ戦、カサマヨル戦、メイウェザー戦、カチディス戦など激闘は数多い。蓄積したダメージは反射神経の遅れを招くことが多い。

加えて、スーパーライトのタイトルを持っているにもかかわらずそれが懸からないということは、この試合はウェルター級で行われると思われる。前回も144ポンド契約のようだから、そのあたりかもしれない。マルケスの場合、スーパーライト以上で体を作るのがやや難しいのではないかと思われる。

パッキャオも衰えが懸念されるが、こちらはウェルター級以上ではほとんどまともにパンチを受けていない。ブラッドリー戦は微妙な判定を失ったものの、140ポンド超(ウェルター級以上)では6勝1敗と、マルケス兄より実績のある体重での試合である。

マルケス兄も意地があるのでKOまでは難しいかもしれないが、パッキャオが明白な判定勝利を手にしそうな一戦である。

 

Special WBO belt “Fighter of the Decade”12回戦(12/8、ラスベガス)
ファン・マヌエル・マルケス O TKO6R X マニー・パッキャオ

3Rにマルケスのロングフックでパッキャオが吹っ飛んだ時、右と左の違いこそあるがパッキャオvsハットン戦を思い出した。あの試合では、パッキャオがハットンにインサイドからの右フックを再三ヒットした後、長い左フックでハットンをマットに沈めたのだった。今回は逆にパッキャオがKOされる番だった。

あのダウン以降パッキャオの足元はずっと定まっていなかったし、マルケスの左ボディやアゴへのフックが的確に決まっていた。パッキャオはダウンを取り返して攻め切れると思ったようだが、ジョーさんが言っていたように、「調子に乗って攻めるとカウンターが来る」のは明らかだった。マルケスとしては、インタビューで答えていたとおり、勝てると思ってチャンスを待っていたのだろう。

それにしても、パッキャオが踏み込んで左ストレートを打つよりも早く、カウンターを決めてしまうマルケスはさすがである。あのタイミングでカウンターを打てれば勝負になるのは分かってはいても、これまでそれができる相手はいなかった。マルケスにしても、第一戦では全く対応できなかったくらいである。

ではなぜ今回それができたのかというと、第一にパッキャオの年齢的な衰えがあり、第二にある意味ラッキーだった3Rの右フックのダメージがある。第三に、私が考えるにそれに加えて、フェザー級ではできてもウェルター級ではできなかったということなのではないか。

パッキャオがクラスを上げて以降、主武器となったのは右フックである。左ストレートはそれと比較して、より全身のスピードが要求される。同じ骨格により多くの筋肉がついているのだから、速さは落ちてしまうのはやむを得ないところである。動きのスピードそのものは軽量級時代と変わらないように見えたのだが、左ストレートを打つ動きは以前より遅くなっていたのである。

さて、ブラッドリー戦で微妙な判定を失いこの一戦でKOを食らったことで、パッキャオがこれまで築いてきた絶対的な地位は失われたと考えざるを得ない。というのは、パッキャオの衰えもさることながら、相手選手がパッキャオに抱いている「パッキャオは強い」というイメージが変わってしまったからである。現時点においてスピードのある若手、たとえばダニー・ガルシアあたりとやれば、おそらく好きに動かれてしまうだろう。

その意味では、ボブ・アラムが“Why not?”と繰り返し言っていたパッキャオ・マルケス5が、両者にとって最も望ましい引退の花道ではないかと思う。そうなると一番割を食うのは、数千万ドルの儲けをフイにすることになる“Money”メイウェザーということになるが、あまり同情できないのはカネにうるさすぎるからであろう。