052 ロマチェンコ、3戦目で世界王者 [Jun 21,2014]

WBO世界フェザー級王座決定戦(6/21、米カーソン スタブハブ・センター)
O ゲイリー・ラッセル(米、24戦全勝14KO)2.25倍
ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ、1勝1敗1KO)1.72倍

5月のマカオでドネアがWBAスーパー王座を奪取して、いよいよフェザー級戦線が混沌としてきた。個人的には、現状でのクラス最強はWBCのジョニー・ゴンサレスとみているが、ゴンサレスにKOされたアブネル・マレスもこの階級にとどまるようだし、ダルチニアンをあっさり倒したWBA正王者のウォータース、激戦型のIBFグラドビッチもいる。

そして空位のWBO王座を争うのがこの両者である。ロマチェンコは体重超過のオルランド・サリドに1-2判定負け。以前は相手が体重超過の場合は優先的に王座決定戦出場が認められていたが、最近はそういうことはないようだ。ならばウェイトオーバーの相手とわざわざ戦うこともないと思うのだが、そういう契約になっているのだろう。

体重超過の故意性やスポーツマンシップ云々はさておき、ロマチェンコの側に、それでも楽勝という油断・慢心があったことは否定できない。試合自体は完敗といっていい内容であり、すでにアマ時代にボクシングができ上がっていたことからして、上がり目がどの程度あるのかは疑問。唯一収穫だったのは、12R戦うことに問題はないことを確認できたことである。

もしここを敗れるようなことがあればプロ戦績1勝2敗となり、ロマチェンコの商品価値は暴落することは避けられない。その意味では背水の陣で、本気を出して準備してくることは間違いないが、仮に100%の出来だったとしても、ロマチェンコのボクシングがそれほど圧倒的であるとは思えないのである。

打たせずに打つ技術では、リゴンドーに遠く及ばない。パンチのパワーで、ドネアやジョニゴンに及ばない。体格的にはウォータースに及ばないし、打たれ強さではグラドビッチに及ばないだろう。個人的にボブ・アラム路線が好きでないこともあるのだけれど、ロマチェンコの強さが具体的にイメージできないのである。

対するゲイリー・ラッセル。全米ゴールデン・グローブなどアマチュアタイトルを数多く獲得し、北京オリンピック代表にもなったアマ・エリートである。北京ではウェイト調整に失敗して出場できなかったという失敗談があるが、バンタム級でそれだけウェイトがきつかったとみれば、プロでフェザー級というのは悪くない選択である。

ロマチェンコとは対照的に、2009年以降の5年間で24戦のキャリアを積んで、満を持しての世界戦登場である。世界戦へのステップとしてははるかに妥当なキャリアであり、好感が持てる。課題があるとすれば強敵と当たっていないことで、地域王座さえ戦っていないという点は懸念材料だが、素材は間違いない。

前に出る圧力ではラッセルが上回るとみるが、ロマチェンコのコンビネーションがラッセルの前進を止めることができるかどうかはやってみなければ分からない。ラッセルが前に出られなければ、ロマチェンコのテクニックが試合を支配するだろう。ある意味、未知の要素が多くてどちらに転ぶか予測が難しい。

ラッセルを推す理由は、五分五分の勝負でUnderdogだということと、話題のアル・ヘイモン傘下であることを考慮した。GBPでも、シェーファー+ヘイモンはメイウェザー寄りで反ボブ・アラムだから、ロマチェンコには負けたくないだろう。もともとこの試合は、GBPが落札した試合でもある。まあ、実力に差があれば関係ないが。

この日のメインは「ゴースト」ロバート・ゲレロvs亀海だが、マウリシオ・エレラに完敗している亀海では世界レベルとは差が大きいとみるのが妥当で、あまり強調できそうにない。望みがあるとすればゲレロ自身がウェルターにフィットしているとは言えないことだが、メイウェザーにさえ決定打を許さなかったゲレロが、亀海に一発もらう場面も考えづらいところだ。PPVではないらしいが、SHOWTIMEのメインは快挙であり、それはそれで大したものである。

WBO世界フェザー級王座決定戦(6/21、米カーソン・スタブハブセンター)
ワシル・ロマチェンコ O 判定(2-0) X ゲイリー・ラッセル

私の採点では116-112ロマチェンコ。ラッセルは9Rを明白に取ったのと、ロマチェンコが手を出していないラウンドが多かったから、中差の判定となった。ジャッジも一人はドローであと2者は私と同じ。完勝とはいえないまでも、ロマチェンコが「ハイテク」というだけの動きをみせた。

サリドとラッセルの最大の差は、打たれ強さだったと思われる。サリドも相当にクリーンヒットをもらっていたけれど、効いたそぶりもみせずに前進して判定をものにした。今回のラッセルは露骨にボディを嫌がっており、それが原因で微妙なラウンドを失ったことは間違いない。

序盤5Rまでのロマチェンコは完璧だった。序盤はラッセルが前に出ると予想したのだが、1Rラッセルのジャブにロマチェンコがカウンターを入れると、予想とは逆にラッセルが下がってしまった。この一発で距離を押さえて、序盤は完全にロマチェンコのペースとなった。

ところが中盤以降、ラッセルが打たれるのを覚悟で手数を出し始めると、ロマチェンコが急激に失速してしまう。やはり12Rに不安があるためだろうか、ほとんど手を出さずに休むラウンドを作ってしまっては、くずれかけた相手が立て直す余地が生まれてしまう。WEB中継なので画面がよくなくて確かではないが、9Rはダウンに見えた。

おそらくロマチェンコは、いったん自分のペースにしてしまえば、誰と戦っても優勢に試合を進めることができるのだろう。しかし基本的に攻防分離の傾向があり、相手がノンストップで攻めてきた場合に、ディフェンス一辺倒になる。カウンターも相手の打ち終わりだけなので、ある意味で読まれやすいともいえる。アマチュア最強との呼び声が高いが、これから先フェザー級で抜けた存在となるのは難しいように思える。

一方のラッセルにとって、これまでの経験で苦しい試合をやっていないというのが、大いに響いたと思う。確かにロマチェンコのボディは強烈だが、あれだけ効いたそぶりをみせてしまっては勝てない。ハンドスピードは大したものだが、手が短い選手が下がりながらハンドスピードを出しても、届く訳はないのである。

メインイベントは「ゴースト」ロバート・ゲレロvs亀海。思ったよりもいい試合だったけれど、判定は明白。ヘスス・ソト・カラス的にまた呼ばれるといいのだけれど。

ところで、スタブハブ・センターは空席が目立った。チャド・ドーソンもデボン・アレクサンダーも、ラッセル・ロマチェンコもさほどの集客能力はなく、ゲレロも知名度のない日本人相手では客は集まらないということである。