046 サリド、プロの意地を示す [Mar 1,2014]

WBA世界ウェルター級タイトルマッチ展望(2014/3/1、米テキサス・アラモドーム)
; チャンピオン オルランド・サリド(40勝28KO12敗2引分け) 4.5倍
O挑戦者 ワシル・ロマチェンコ(1戦1勝1KO) 1.2倍

現時点でのフェザー級最強は、私としてはジョニー・ゴンサレスを推すけれども、オルランド・サリドも強いチャンピオンであることは間違いない。

12敗の多くはキャリアの初期に喫したものであり、過去10年の敗戦はファン・マヌエル・マルケス、ユリオルキス・ガンボアなど一線級が相手である。ファンマ・ロペスには2度KO勝ちしているし、ロバート・ゲレロにも勝っている(ドーピング違反でノーコンテスト)。

そして前の試合の「オルランド対決」クルス戦も、実力の違いを見せつけた勝ち方だった。本来ならばさらなるビッグマネー・ファイトであるジョニー・ゴンサレスやノニト・ドネア戦を目指すところなのだろうが、あえてアマチュア・エリートであるロマチェンコとの対戦を選んだ。

サリドとしては、仮に負けたとしても商品価値がそれほど落ちることはないし、もし勝てばさらに評価が上がるという意味でおいしいマッチメイクなのかもしれない。また、見る側にとっては、ロマチェンコと他の一流選手とを比較するものさしとして、サリドは非常に有効である。

個人的には、マイキー・ガルシアに一方的に敗れたことで、サリドの現時点の力はリゴンドー、ドネア、ジョニゴンよりも確実に下とみている。それでも、ファンマやポンセ・デ・レオンよりは上だし、レオ・サンタクルスともいい勝負だろう。

一方のロマチェンコ、何しろオリンピック2連覇だから期待は非常に大きいのだが、プロ1戦しかしていない。相手のラミレスも世界ランカーとはいえ一線級という訳ではなく、実力は未知数というのが現時点の評価だろう。ボブ・アラムの目論見としては、ドネア、リゴンドーと絡ませたいのだろうが、ここは試金石である。

最近の日本では、井上や村田といったアマチュアから転向した選手が、プロのチャンピオンを寄せ付けない試合をしている。世界的にそうした傾向が続くとみるのは早計かもしれないが、サリドが超のつく一線級でないことも確かだ。ロマチェンコの判定に一票。

 

WBO世界フェザー級タイトルマッチ(3/1、テキサス)
オルランド・サリド O 判定(2-1) X ワシル・ロマチェンコ

私の採点は144-144ドロー。最終回10-8を付ければロマチェンコだなと思っていたのだが、意外と点差が開いてサリドの勝利。

WOWOWでのジョーさんのコメント、「どこがハイテクなんでしょうかね。2戦目で世界というだけの試合を見せてくれませんでした」がすべて。試合通してサリドの泥臭いインファイトに巻き込まれて、ロマチェンコはほとんどクリーンヒットはできなかった。

ロマチェンコがあと1~2戦でもキャリアを積んでいるか、あるいはセンサク(3戦目で世界獲得)並みのパワーがあれば、今日の試合も勝てたはずである。ところが実際は、サリドの突進を持て余し、少なくとも力の差を見せることはできなかった。

こういう試合をみると、最短での世界獲得に何の意味があるのか全く疑問に思う。観客が望んでいるのは強敵相手に優れたパフォーマンスを見せてくれることであって、これまで何試合のキャリアがあるのかにはほとんど関心はない。仮に今日接戦で判定をものにしたとしても、センサクとの迫力の差は歴然としていた。日本のなんとかオカいうボクサーも肝に銘じてほしいものである。

さて、試合全体を通して言えることは、サリドが本気でロマチェンコを止めにかかったということである。想像だがウェイトオーバーも承知の上でやったことで、タイトルよりも、「昨日今日プロになったボクサーに、目に物見せてやる」という意地で戦ったのだと思う。そう思わせた時点で、また相手の本拠アラモドームで戦うという時点で、ロマチェンコには慢心があったと思う。

聞くところによると、初戦で世界チャンプ相手でもいいと言っていたそうである。相手がWBAとかWBOのバンタムならともかく、サリドは一線級である。あるいは前評判のとおり、ロマチェンコがアマチュア史上最強であれば問題なかったかもしれない。しかし今日の出来をみる限り、アマルールで戦ったとしてもリゴンドーに勝てるとは思えない。

個人的には、トップランクの金メダリストプロモーションには大きな疑問符が付いていたけれど、これでその予感が正しかったことがよく分かった。プロだろうがアマだろうがボクシングの本質には変わりがなく、限られた相手で戦うアマチュアが、その戦績のみでプロよりも評価されるのはおかしいということである。

もちろん、アマチュアで優れた戦績を残した者がプロでの経験を積めば、一流の選手となる可能性は大きい。しかし、アマチュアでの経験がそのままプロで通用するはずがないのである。その意味では、ゾウ・シミンが層の薄いフライ級とはいえ、そのまま世界で通用するかどうか(“ハワイアン・パンチ”ブライアン・ビロリアとやるという噂もあるが)は大いに疑問だと思っている。