031 ウラディミール・クリチコ vs ヘイ [Jul 2, 2011]

WBA/IBF/WBO世界ヘビー級タイトルマッチ展望(2011/7/2、ドイツ・ハンブルグ)
ウラディミール・クリチコ(ウクライナ、55勝39KO3敗) 1.57倍
O デビット・ヘイ(イギリス、25勝23KO1敗) 2.35倍

久しぶりのヘビー級における大一番である。オッズは拮抗しているもののややクリチコ弟有利と出ている。とはいえ、世界の期待はデビット・ヘイがウラディミールを倒して、ヘビー級に新時代が到来することであろう。

いつからクリチコ時代であるのかについては議論の余地があるが、早く考えるならビタリがWBCチャンピオンとなった2003年(レノックス・ルイス戦の直後)、遅く考えてもウラディミールがクリス・バードを倒し、現在も防衛を続けるIBFチャンピオンとなった2006年ということになるだろう。いずれにせよここしばらくクリチコ時代が続いているということになる。

とはいえ、クリチコ兄弟と一口に言っても、クリス・バード戦の肩の故障とレノックス・ルイス戦のパンチによる目のカットというアクシデントで敗れたビタリに対し、ウラディミールのKO負けは見事に倒されたものである。2003年のコーリー・サンダース戦、2004年のレイモン・ブリュースター戦とも、いまだに記憶に新しい。

確かに、ブリュースータとの再戦、サミュエル・ピーターとの再戦を含んで現在13連勝。全く危なげのない連勝を続けてはいるものの、よく見ると主武器である左ジャブ、右ストレートはそれほど速いパンチではない。スピードのあるヘイをとらえられるかどうかは微妙なところだし、時折見せる左手を前に相手を押さえるようなやり方は、ヘイにとって思う壷だろう。

一方のヘイ。ウラディミールの次はビタリを倒すと豪語するだけあって、新時代のヘビー級盟主としての魅力は十分にある。クルーザー級から上げたところは“リアル・ディール”イベンダー・ホリフィールドと同様だが、当時よりクルーザー級のリミットは10ポンド重い。ワルーエフをぐらつかせジョン・ルイスを倒したように、ヘビー級でも攻撃力は通用する。

むしろ一発の破壊力という点では、見えない角度からフックを打ち込むヘイの方が上ではないかとみている。そして、一発決められた時のウラディミールのもろさは、かつての戦いで証明されているのである。

おそらく試合は、ヘイが連打のチャンスを狙って速くて小さな動きで接近し、ウラディミールがそれをジャブとストレート系のパンチで撃退するという展開になるだろう。そして、ヘイの戦略としてはウラディミールのパンチの帰り際に合わせることになるだろうが、ウラディミールの側がこれに対抗する有効な手段を有するとは考えにくい。

大胆かもしれないが、デビット・ヘイのKO勝ちを予想する。この試合は、日曜日のWOWOWでライブ中継される。

 

WBA/IBF/WBO世界ヘビー級タイトルマッチ(7/2ドイツ・ハンブルグ)
ウラディミール・クリチコ O 判定(3-0) X デビット・ヘイ

ヘイの動きが本来のものではなく、試合中に腰を痛めたのかと思ったら、どうやら試合前から足と拳を痛めていたらしい。それにしても、クリチコが徹底してヘイのスピードを警戒して、右手をアゴから離さなかったのが印象的だった。ヘビー級の大一番にふさわしく、最後まで緊張感がある試合だった。

クリチコの2mの体格からすると、ラウンドを重ねるごとにスタミナを消耗し後半の動きが鈍るだろうという想定をヘイ陣営はしていたはずで、その意味では後半勝負という作戦もうなづけるのであるが、結果からみると序盤1、2Rにもう少し攻めるべきだったのだろう。

前半のクリンチで上からのしかかられた場面以降、ヘイの踏み込みに鋭さがなくなった。クリチコのジャブもいつも以上にコンパクトだったが、それでも本来のヘイならもう少し左右の揺さぶりができたように思う。クリチコの攻撃はストレート系なので、時折ヘイに動かれてバックハンドブローになっていたように、横の動きに弱い。

それでもクリチコが工夫したのは、ジャブをいつも以上にコンパクトにしてヘイが打ち終わりに右を返す際にうまく肩を使っていたことと、右をディフェンスに使ってヘイの左をほとんど封じたことである。だからKOが難しいことは最初から分かっていたはずで、ともかくヘイをペースに乗せないことに全力を尽くしたといっていいかもしれない。

だから中盤でクリンチした際、クリチコの表情は結構しんどそうに見えた。それがブリュースター第一戦のような急激なペースダウンとならなかったところが、クリチコのクレバーなところであろう。

ただし、クリチコと最後までほとんど互角に戦ったという点で、ヘイの評価は下がらない。クリチコのジャブ、ストレートを上体の動きで殺し致命的なダメージを受けなかったということだけでも、ここ7、8年誰もできなかったことなのである。

惜しかったのは3Rに右を決めた時に、レノックス・ルイスがビタリに与えたようなダメージを与えられなかったことで、今後はヘビー級相手でも一発で決められるような破壊力を身につけることだろう。その意味ではもう少しヘビー級の経験が必要なのと、フック、アッパー系のパンチがほしい。

クリチコ王朝はもうしばらくは揺るがないということになりそうだ。