054 八重樫vsロマゴン @代々木第二 [Sep 5, 2014]

9月5日金曜日はフライ級世界最強を決める八重樫vsロマゴン戦である。すでにチケットは入手しているが、会場は代々木第二体育館である。

数日前から大騒ぎになっているデング熱の代々木公園からは目と鼻の先で、大橋ジムからは「代々木公園は封鎖されていますが予定通り開催します」とのメールが届いている。ロマゴンと戦わなくてはならない八重樫を思えば、蚊に刺されるのが怖いなどと言ってはいられない。

5時半まで仕事で、会場についたのは6時10分過ぎ。あまりひと気がなかったので、人が集まるのはこれからだろうと思っていたら、すでに会場は8分以上席が埋まっていた。そして、まだ試合開始から10分しかたっていないのに、すでに第一試合が終わってしまっていた。

アンダーカードの結果と感想は改めてお届けするとして、今日はメインイベントの八重樫vsロマゴン戦。

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WBC世界フライ級タイトルマッチ(2014/9/5、代々木第二体育館)
ローマン・ゴンサレス O TKO9R X 八重樫 東

試合前の予想では、ゴンサレス優位は動かせないものの、ロマゴンの圧倒的なパワーはミニマム級の頃と比べて相対的に落ちてきているし、戦い方によってはいい勝負できるのではないかと思っていた。この試合は海外でもオッズが出ていて、ロマゴンfavoriteではあるものの2対5程度の接戦とみられていたくらいである。

ところが試合が始まってみると、パワーの差は明らかであった。考えてみれば八重樫自身ミニマム級から上げてきた訳であり、フライ級に上げてからの期間は長いけれどもミニマム当時のような激闘王という試合ではなく、パワーを強化したというよりスピードとタイミングで防衛を重ねてきたからである。

1Rから足を使って出入りしようとはしていたものの、肝心のパンチにそれほど効果があるように見えなかった。ロマゴンは攻撃にばかり目が行くが防御勘も優れており、軽いジャブはもらうけれども大振りのフック系はもらわない。3Rのダウンは大声援を背に攻めてきた八重樫に、軽く左を合わせただけ。八重樫にダメージはなかったが、精神的に大きいダウンだと思った。

4R途中採点は39-36が一者、残り二者はフルマークでロマゴン。ここまでロマゴンの手数が少なく、八重樫も果敢に攻めているように見えたので会場からはため息がもれる。私の採点でも39-36。ただし2Rはダウンさえなければ八重樫のラウンドだったので、それほど一方的という訳ではない印象であった。

途中採点を聞いて八重樫が前に出ようとするが、ロマゴンもプレスを強める。会場からは「八重樫!足使え!」と悲壮な声が飛ぶけれども、八重樫も後退せずに打ち合う。結構まともに入ったパンチもあったが、パワーだけ比べればロマゴンが明らかに上であり、八重樫は徐々に消耗が進む。8R終了時点でコーナーに向かう八重樫の足はふらふらで、もうちょっと無理という感じ。

8R途中採点は79-72が二者、残り一者はフルマークでロマゴン。ここまでの採点でひいき目に見れば八重樫が2R取っていたようにも見えたが、それ以前に最後まで持ちそうもなかった。

9R、ロマゴンのパンチは大振りにはならず、的確に当てて八重樫にダメージを蓄積する。八重樫は逆転を狙って一発に賭けるが、残念ながらクリーンヒットしてもロマゴンの前進は止まらない。コーナーに詰まってふらふらになりながら脱出を何度か繰り返し、最後は赤コーナー近くでダウン。カウント途中で八重樫が手を振って、レフェリーがストップした。

ロマゴンはこれで3階級制覇。WBA/WBO統一王者のファン・エストラーダにはライトフライ級時代に勝っているので、フライ級最強は異議のないところであり、チャンピオンになったとたんに相手がいないことになりそうだ。それとも井上がやるのかなあ。せめてアムナットとやってからにした方がいいと思うけど。

あと気になったことは、八重樫の健闘は本当に大したものだったけれど、「日本で最も勇敢な男」を連呼するのにはやや興ざめした。そんなことは見る人それぞれが判断すればいいことであって、リングアナに押し付けられる意見ではない。八重樫だって、チャンピオンである以上強い挑戦者ともやらなくてはならないことは分かっていることで、大げさに言われたくはないだろう。

「勝てない相手とは戦わない方が賢い」ならば、原田はジョフレと、柴田はサルディバルとやらなかっただろうし、日本でアルゲリョやウィルフレッド・ゴメスを見ることができたのはロイヤル小林のおかげである。 格闘技である以上勝ち負けはあるし、強い相手と戦うこと自体に価値がある。何の世界であっても、最高の相手と戦うことに価値があるのがあるべき姿のはずである。


午後6時過ぎ、夕やみ迫る代々木第二体育館前。あまり人がいないなと思っていたら、すでに会場には80%以上入っていました。


肩車される3階級制覇のロマゴンと応急手当中の赤コーナー。中央にWBCスライマン息子会長。

では、八重樫vsロマゴンのアンダーカード回顧を。第一試合の井上弟は間に合いませんでした。

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スーパーフライ級8回戦
松本 亮 O KO2R X デンカオセーン・カオウィチット

1Rにデンカオが左右フックを振るって前進した時には、「今日はなかなかやる気あるじゃないか」と思ったのだが、2R松本のボディ打ちで悶絶。タイ選手のやる気のない時のパフォーマンスをもろに見せてもらいました。もっとも、体格からしてデンカオとはかなり差があった。

デンカオは坂田に勝った時はポンサクレックを受け継いでタイの強いチャンピオンになるだろうと思ったが、亀2、河野、今回の松本とだんだん負け方がひどくなっていくのは残念。これで世界ランクも失うことになりそうだが、まだ誰かの当て馬にされるとしたら悲しい。

松本は、4月の久高との試合があまりぱっとしなかったのだが、今日はすっきりと決めた。これで世界ランキングに入るが、大橋ジムだからナルバエスかクアドラスと当てるのだろうか。現時点で河野より強そうだ。せっかくだから井岡ジムの石田とやってほしいものだが、相手が受けないかもしれない。

ミドル級10回戦
村田諒太 O 判定(3-0) X アドリアン・ルナ

私の採点は97-93。98-92のジャッジとは比較的意見が近かったが、どこをどう見れば村田のフルマークになるのだろうか。

村田の手数が何としても少なかった。おそらく3対1とか4対1でルナが手数で上回っただろう。そして、右ストレートの精度が非常に悪い。オーバーハンドどころかオーバーヘッド(頭上を通る空振り)を連発し、散漫な印象で10Rまで行ってしまった。

ガードをしっかり固めているように見えて結構被弾していたのは、攻撃にばかり頭が行ってしまっているから。相手の打ち終わりに左フックの上下ダブルを入れるだけでもかなり違ったはずなのに、ワンパターンの右ストレート狙いでは相手にも読まれるし、効果が上がらない。それでも勝てたのは体力差。押し合いでは村田に分があった。

初の判定となったけれども、倒せる相手ばかりとやるより今回のような苦戦をして、それを練習で克服していくところにキャリアを積む意味がある。今日の出来ではゴロフキンどころか、オーストラリアあたりの世界ランカーにはとても歯が立ちそうにない。奮起を促したい。

WBC世界ライトフライ級タイトルマッチ
井上 尚弥 O TKO11R X サマートレック・ゴーキャットジム

サマートレックは意外な難敵で、体が小さく頭を下げてガードを固めると急所がすっぽり隠れて、井上も打つところが少なかった。それでも4Rにガードが下がったところに右フックが一閃、早々にダウンを取った時には長くはかからないだろうと思った。

しかしそこからサマートレックが粘る。結構な被弾はあるのだが何とか持ちこたえるし、ボディをがまんするのはデンカオにも見習ってほしいくらいだった。それと、各ラウンドともゴングが鳴ってからセコンドが下がる準備を始め、コーナーにお祈りをしてからおもむろにリング中央に進むものだから、1分間にプラスして10秒以上の休憩時間があった。

ゴングが鳴っている以上井上が攻めて行っても問題ないと思うのだが、その間レフェリーは左手で井上を制していて、サマートレックの用意が整って初めてファイトをかける。会場からは苦笑が聞かれるけれども、レフェリーは最後までこの流儀を通した。

もっとも、11R半ばで唐突に試合をストップしたから、「チャンピオンの方が全然強いんだから多少のことは許してやりなさいよ」ということだったのかもしれない。ただ、インターバル1分間というのはルールなのだから、そこまでレフェリーが裁量してしまうのもどうかと思う。

試合後のインタビューで、井上はフライ級に上げることを宣言、エストラーダとアムナットの名前をあげた。そして、「八重樫さんの心が折れそうな時には、みなさんの声援で後押ししてください」と妙なエール。心が折れるのかよ、と会場からは率直な感想に笑いが起こったのでした。


井上は小さい相手にてこずったが終盤TKO勝ち。相手はこうやって最初の10秒くらい出てこないし、その間レフェリーがファイトをかけないので間延びしました。


村田はもたもたして10R判定。ラウンドガールおのののかちゃんも、こんなにリングに上がらされるとは思っていなかっただろう。