035 山中、ダルチニアンを下して初防衛 [Apr 6, 2012]

WBC世界バンタム級タイトルマッチ展望(2012/4/6、東京国際ファーラム)
山中 慎介(帝拳、15勝11KO2引分け)
O ビッグ・ダルチニアン(アルメニア、37勝27KO4敗1引分け)

西岡がラファエル・マルケスに完勝し、石田順裕がポール・ウィリアムスに善戦するなど世界第一線に急速に近付いている印象の日本ボクシング界であるが、いよいよ軽量級における世界的ビッグネームの一人、ビッグ・ダルチニアンが日本に上陸した。長谷川と対戦したフェルナンド・モンティエルに続く大物の日本登場である。

何といっても注目はダルチニアン。フライ級時代の破竹の連続KOは記憶に新しい。問題は、最近負けが込んでいる点をどう考えるのかということである。最近の負けは、2009年ジョゼフ・アグベコ、2010年アブネル・マレス、2011年アンセルモ・モレノの3戦である。(その前の負けは2007年、ご存知ノニト・ドネア戦である)

この3戦はいずれもバンタム級。フライ級、スーパーフライ級では圧倒的な攻撃力を誇ったダルチニアンも、3ポンド4ポンドの差が意外に大きかったという印象だったが、その間にもトマス・ロハス、ヨニー・ペレスに勝っている。トマス・ロハスはその後日本に来て、河野、名城を相手にしなかったし、アグベコ戦の前にはクリスチャン・ミハレスとホルヘ・アルセをKOしている。戦ってきた相手は山中とは比較にならない。

一方の山中。世界ランキング上位に進出して、決定戦に勝ってチャンピオンとなった。確かに決定戦のエスキバル戦は強かったが、相手もチャンピオンではないし、世界レベルでの実績がなかった選手。その前の日本タイトル・岩佐戦も強敵だったし、このところ9連続KO勝ちと波に乗っているが、破ってきた相手は世界レベルとまでは言えない。

アドバンテージがあるのは体格面で、身長・リーチとも山中が上回る。だから普通にジャブを突き合う相手ならば有利な展開といえるのだが、ダルチニアンは変則ファイターである。射程圏外から一気に距離を詰めてくるし、出会い頭の一撃も強烈である。

勝負の鍵を握るのは、山中のディフェンスと耐久力だと思う。マレスやモレノのようにダルチニアンに決定打を許さず、後半動きが鈍ったところをポイントアウトすることができるかどうかである。攻めて勝ちたいようなコメントが出ているが、山中の攻撃にドネアのような切れ味やアグベコのようなパワーがあるのかちょっと首をひねるところ。

ダルチニアンが昨年春のバンタム級トーナメントの出来を維持していれば、山中が攻勢に出たところにカウンターを決める可能性が大。山中が勝つには、ダルチニアンの攻撃を12R空転させることが必要で、そのためには「倒しに行く」などと本気で思わない方がよさそうだ。

 

WBC世界バンタム級タイトルマッチ(4/6、東京)
山中慎介 O 判定(3-0) X ビック・ダルチニアン

山中の快勝。私の採点でも117-111で、ダルチの取ったラウンドには山中が安全策をとった12Rが含まれるから、試合のほとんどで主導権をとったといっていい。

山中の最大の勝因は、相手をよく分析していたことだと思う(その意味では、本田会長のマッチメークの勝利)。ダルチニアンは年齢とともに後半タレてしまう傾向が強まっている。試合前半の4Rくらいまでは一発を警戒してディフェンシブに戦い、中盤以降で左を大きく振るうようになった。相手に合わせて大振りになったところは改善の余地があるが、クリーンヒットは明らかに山中の方が多かった。

また、疲れたダルチニアンに追う足がないのも見抜いていたのか、終盤でフットワークを使ってアウトボクシングしたのもよかった。5Rで目をカットしたのも大きかったが、それがなくても山中が押し切ったのではないか。

問題があるとすれば、この日のダルチニアンが亀1号と戦った場合に勝てたかということである。先週行われたWBAタイトルマッチは例によって弱敵相手にパフォーマンスばかりの試合で特に論評に値しないが、そのこととダルチニアンが興毅より明らかに強いかどうかは別の問題である。ここ数試合を材料に判断すると、ダルチニアンはバンタムでは厳しいように思う。

もともとダルチニアンのボクシングはセオリーとは離れたもので、展開に関係なく一発で試合を決めてしまうものであった。カウンターとかコンビネーションではなく大振りの一発なので、相手を体力的に凌駕していないと決まらない。フライ、スーパーフライはともかく、バンタムで苦戦が続くのは体力的な問題も大きいのではないか。

山中としては、この勝ち星をステップにアメリカに進出したいところだが、このクラスの人気は本場ではあまり高くはないというところはちょっと厳しい。アグベコとかヨニー・ペレスと戦ってほしいものの、実現するとしてもMGMのグランドアリーナを埋めるのは厳しいかもしれない。

個人的には、それらのクラスを日本に呼んでの防衛路線を期待したい。