062 山中神の左不発、辛くも防衛 [Sep 22, 2015]

WBC世界バンタム級タイトルマッチ(9/22、大田区総合体育館)
O 山中 慎介(帝拳、23勝17KO2引分け)1.25倍
アンセルモ・モレノ(パナマ、35勝13KO3敗1引分け)4.5倍

山中が早くも9度目の防衛戦。相手は歴戦の雄アンセルモ・モレノ、かつて亀1がレギュラーチャンピオンだったWBAバンタム級のスーパーチャンピオンで、亀田サイドがWBAの対戦指示に従わず階級を下げたといういわくつきの相手である。

その後、そのタイトルをファン・カルロス・パヤノに負傷判定で奪われ、今回は無冠から再び王座奪取を目指す。かつて、ダルチニアンやシドレンコ、モンシプール、セルメニョといった一線級を下してきた実績は申し分ないが、世界戦のほとんどが判定決着であるように、破壊力のある選手ではない。

そして、それよりも私が気になるのは、中南米の選手の一般的な傾向として、力が落ちるときには一気に落ちるということである。最近の例ではロレンソ・パーラやアレクサンデル・ムニョスといったところだが、世界最強クラスから若手の登竜門へと後退する時間が非常に早い。例外としては古くはデュラン、アルゲリョ、最近ではマヨルガのように、活躍場所が米国内に移った場合だけである。

想像するに、おそらく生活環境とか練習環境といった要因が大きいのだろう。通貨の安定していない途上国ではせっかく稼いだカネも高いインフレ率でどんどん目減りしてしまい、堅実な投資対象も少ない。だから結局は準備不足でも何でも試合をして稼がざるを得ず、それで力が落ちると急斜面を転がるように落ちていくのではないだろうか。

特に軽量級の選手については、中量級以上と比べてファイトマネーも高くないし、全米のPPVに乗るほどの人気を獲得するのも困難である。その意味では、日本でおなじみのローマン・ゴンサレスがPPVに乗りつつあるというのは軽量級では破格の扱いであり、今後のさらなる活躍を期待するものである。

話を戻すと、日本のボクシングファンには亀田絡みで有名になったモレノであるが、世界的には無名に近いし、ファイトスタイルもアメリカ受けはしないので、パヤノに負けてからの生活環境、練習環境がどうだったのかという疑問がどうしてもぬぐえないのである。

2009年にシドレンコ、モンシプールを、2010年にセルメニョを下したモレノも、もう30歳になった。先進国で恵まれた環境で生活・練習していれば30はまだまだ強くなる年齢であるが、途上国ではそうもいかない。まして、世界的にみれば高いとはいえないファイトマネーも、かの国の一般大衆にとってみれば大金であることは確かである。生活に乱れがあったとしてもおかしくはない。

一方、山中は32歳であるが、まだまだ力は落ちていない。モレノとの年齢比較は32対30であるが、実際には30対35くらいではないだろうか。もちろん、視力やスピードは加齢によって衰えるとしても、パワーやインサイドワークは一度には落ちない。今回も、山中の得意な距離では戦わないようにするくらいの芸当はモレノにはできると思う。

ただ、山中の左ストレート系のパンチは距離をとったりクリンチしたりしてごまかせるとしても、そこから一歩進んで山中にダメージを与えることは難しいのではないかとみている。見ている側にストレスのたまるような展開になる懸念はありそうだが、山中の判定勝ちとみている。

 

WBC世界バンタム級タイトルマッチ(9/22、大田区総合体育館)
山中 慎介 O 判定(2-1) X アンセルモ・モレノ

私の採点は114-114ドロー、試合前に予想したとおり、消化不良ながら山中の判定勝ちであった。

それにしても疑問なのは、モレノが最終ラウンド全く手を出さなかったことである。公開採点で8Rまで2者が引分けである(1者はモレノ)。9Rは3者ともモレノで、10Rは3者とも山中というのはほぼ確実である。だとすれば、仮に11Rモレノが押さえたとしても、12Rを流してしまっては勝てる試合が引分けになってしまうのである。

私の採点では11Rモレノに振ったけれど(あのスリップは腰砕けだろう)、山中というジャッジがいてもおかしくはない(実際2人が山中につけた)。だから12Rは勝つつもりなら決して失ってはいけないラウンドであった。にもかかわらず、モレノはほとんど手を出さなかった。なぜなのだろう。

最もありうるシナリオは、9Rを取ってエンジン全開で臨んだ10R、逆にいいパンチをもらってしまい、残りラウンドは逃げるだけで精一杯だったということである。だとすれば、やはりモレノの力が落ちていて、12Rを戦い切るだけのコンディションができていなかったということだ。

あるいは、11Rを失ったと思ったので、仮に12Rがんばって取ったとしても引分けにしかならないと思ったのだろうか。そうだとしても、挑戦者である以上勝たなくてはタイトルは手に入らない。何とか最終ラウンドに逆転KOを狙うのがプロだろうし、いいのが当たれば山中が倒れてもおかしくはない状況であった。

今回の山中は、やたらと髪型を気にして額に手をやっていた。あれはヘアスタイルが気になるのが一つと、やはりジャブをもらって顔面の感覚がおかしかったのではないかと思っている。いずれにしても、これまで見てきた山中チャンピオンの試合とは違っていた。反面、モレノ自身のコンディションも良くなかった。再三いいカウンターを決めていたけれども、あれだけ消極的では微妙なラウンドは失ってしまうだろう。

とはいえ、モレノのようなインサイドワークに優れた相手に対して、何はともあれ引分け以上の試合ができたというのは、悪いことではない。特に私が山中陣営でよかったと思うのは、左ストレートをボディに集めていたことである。顔面は避けられてもボディを避けるのは困難だし、とにかく空振りを少なくするというのはああいう微妙な判定をもらう場合には重要である。

今回は消化不良だったが、1年くらい置いて再戦したら、きっとKOできると思う。