068 カネロKO勝ち、カーンも善戦 [May 7,2016]

WBC世界ミドル級タイトルマッチ(11/21、ラスベガス・Tモバイルアリーナ)
O サウル・アルバレス(46勝32KO1敗1引分け)1.3倍
アミール・カーン(31勝19KO3敗)4.6倍

ミドル級タイトルマッチと聞くと違和感があるのだけれど、よくよく考えてみるとカネロはメイウェザーに完封されている。メイウェザーvsカーンは実現しそうだったし、スピードだけみればカーンはメイウェザーに匹敵するものを持っているから、いい勝負になるかもしれない。実際、カーンはかなりその気になっているようだし、オッズもそれほど開いていない。

カネロのメイウェザー戦は、まさに完封されたといっていい試合だった。あまりにもパンチが空を切るので、終盤では手を出せなくなってしまった。だらしがないと言うときびしいかもしれないが、「みっともなく」負けるのが嫌だったのだろうかと思う。どうせ負けるなら、当たらなくてもパンチを出して前進してほしかった。

その後のカネロは、アルフレッド・アングロ、ジェームス・カークランドをそれぞれKO。難敵エリスランディ・ララ、ミゲール・コットを判定で下した。戦ってきたメンバーをみるとかなりのハイレベルであり、人気だけでなく実力でも世界の上位にあることを示しているといえる。しかしそれでも、6~7年前の、どこまで強くなるんだろうという頃の勢いはなくなってしまったように思う。

その最大の要因はおそらく、当たれば倒れると思われたパワーが、強い相手に対してはそれほどではなかったということである。GGGゴロフキンは当たれば倒れるを16回続けているからパウンド・フォー・パウンドであるが、カネロはメイウェザーのみならずララもコットも倒せなかった。もの足りなく思われるのもやむなしである。

もう一つ加えるならば、体格的にはスーパーウェルターなのだけれども、スピードという点ではそれほど抜群のものがあるわけではなく、どちらかというと力の選手だということが指摘される。だから、アングロや昔戦ったカーミット・シントロンなど力の選手に対してはたいへん強いのであるが、メイウェザーやララ、コットに対しては手こずるということになる。

となると、カーンに対してはどうかということになるが、カネロにとって有利なことに、カーンのスピードは攻めには生かされているのだけれど、ディフェンスにはあまり生かされていない。加えて、足も、攻めの足であってディフェンスの足ではない。スウィフト・ガルシア戦のように、追い込まれた時に足を使って逃げるのは得意ではない。

カーンが非常に強かった試合というと、コテルニクとかマリナッジとか、ザブ・ジュダーとか、あまり攻撃力がない相手にテクニック(ハンドスピード)で勝った試合ばかりが思い浮かぶ。パワーのある相手を迎えると、ブレイディス・プレスコットに1RKO負けしたり、マルコス・マイダナにKO寸前まで追い込まれたりしている。

だから、カネロの攻撃をまともに受けたら、ひとたまりもないという懸念がぬぐえないのは残念なところである。カネロが接近した時に手数で圧倒できれば、カネロの手が出なくなるという欠点も出てくるのだけれど、 やっぱりパワーが違うと思う。カネロKO勝ちに1票。

 

WBC世界ミドル級タイトルマッチ(5/7、ラスベガス)
サウル・アルバレス O   6RKO   X アミール・カーン

1R早々に、カーンのワンツーが決まってアルバレスがたじろいだ。ウェイトが五分であればもう少しダメージを与えられたところだが、ここを持ちこたえてアルバレスが巻き返す。そして6R右の一発でノックアウト。やはりメイウェザーよりもカネロのボクシングの方がおもしろい。

飯田さんの全ラウンドカーンというのはやり過ぎで、私は3R以降カネロにつけた。1Rはクリーンヒットを決められ、2Rは空振りばかりとよくないスタートを切ったアルバレスだが、3Rくらいからボディにパンチを当てるようになった。かたやカーンはカネロの圧力に押されたし、もともとカーンの足がディフェンスにあまり生かされないのは予想記事に書いたとおりである。

メイウェザーの時はできなかったボディ打ちが今回できたのは、カーンのパンチは大部分が手打ちで、速いのは速いけれど、もらってもあまり効かないというのが分かったせいだろう。メイウェザーのようにスナップの効いたパンチだったら、カネロがあれほど無造作にボディを攻められたかどうか。

決め手の右ストレートは、カネロの成長はもちろん認めるにせよ、カーンの打たれ弱さに救われたという面は否定できない。確かに強烈な一発ではあったものの、あれを持ちこたえる選手は少なくないだろう。カーンの場合はブレスコットやガルシアに一発でやられているし、マイダナ戦もかなり危なかった。

一方のカーン、体格的にはカネロとそん色なく、もしかするとスーパーウェルターで戦った方がコンディションがよさそうなのだが、この打たれ弱さは致命的である。序盤ではいいワンツーも決めたし、ハンドスピードはさすがというところだが、手打ちのパンチと打たれ弱さはこのクラスでは無理。年齢的にも、これから巻き返すというのは難しいように思う。

試合前に、アミール・カーンのファイトマネーが1300万ドル(13億円)というニュースが入ってきた。もちろんPPVの歩合も含めた数字だろうが、これでカーンが妙にハイテンションだった理由が分かった。逆に、勝負という観点では若干関心が薄れてしまったのはやむを得ない。

カネロにとって、独立記念日にネームバリューがあって勝てる相手と戦うことにはメリットが大きいけれども、カーンにとって九分九厘負ける相手と戦うことにあまりメリットはない。キャッチウェイトだから本来のミドル級と戦う訳ではないにしても、やっぱり「壊されるリスク」はないとはいえないからである。

それを受けなければならないほど、カーンにとって待望のビッグマッチだったということである。これまで人気を博してきたキング・カーンだが、2012年のダニー・ガルシア以降の相手は残念ながらいずれも二線級である。メイウェザーやパッキャオ戦にも名乗りを挙げたが実現せず、ここ2年間は100万ドル以上のファイトマネーは受け取っていないものと思われる。

だから、カネロ戦で、おそらくメイウェザー、パッキャオと戦って受け取るレベルのファイトマネーを得ることはたいへん魅力的だっただろう。ましてムスリムのカーンにとって、ラマダン明けになる秋はコンディション調整が難しい。いまを逃せば、来年の春までビッグファイトのチャンスはないかもしれなかったのである。

さて、既定路線ということではアルバレスはGGGと、カーンはケル・ブルックと戦うということになっているが、そんなにすんなりとはいかないだろう。アルバレスがミドル級の体格でないことは明らかだし、カーンは今年の稼ぎを確保したので次は来年でいい。もっともアルバレスはすでに1敗しているので、不利を承知であえて戦うことはあるかもしれない。