074 ロマゴン、落城 [Mar 19, 2017]

WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ(2017/3/19、ニューヨークMSG)
O ローマン・ゴンサレス(46戦全勝36KO)
シーサケット・ソー・ルンビサイ(41勝38KO4敗)

クアドラスを辛くも退けて4階級制覇を果たしたロマゴンの初防衛戦。当初はクアドラス直接再戦という情報もあったが、クアドラスの前のチャンピオン、シーサケットに落ち着いた。

米大陸のファンにとって、シーサケットの知名度などなきに等しく、ロマゴンが何RにKOするかにしか興味はなさそうであるが、日本のファンにとってこの対戦はかなり楽しみである。というのは、ロマゴンのスーパーフライはとても圧倒的とはいえないし、シーサケットがバンコクでの佐藤戦くらい強ければ、結構いい試合になりそうだからである。

ロマゴンは軽量級離れしたパワーとさりげないテクニックで勝ち星を重ね、米国での地位も確立しつつある。この試合が47戦目で、これを勝てばあと2つでメイウェザー(とロッキー・マルシアノ)に並ぶ。ロマゴンとの高額ファイトを求めて、エストラーダやカシメロがクラスを上げてきているのは周知のとおり、その中には井上尚弥も含まれる。

クラスを上げるということは、自分の体を上のクラスにフィットするということが一つと、対戦相手のパワーも耐久力も大きく上がることに対応するというもう一つのリスクがある。前者については時間をかければ対応可能な部分が大きいのだが、後者についてはそうではない。だから、メイウェザーもパッキャオも、上のクラスではKO率が極端に落ちている。

ロマゴンについても、スーパーフライへのフィットについては、前の試合よりこの試合、この試合より次の試合とますます対応していくだろう。一方で、対戦相手が相対的に強くなることについては、まだ未知数な要素がかなりある。個人的には、スーパーフライならロマゴンより井上の方が強いと思うけれども、シーサケットと井上だって井上の圧勝だろう。

そのシーサケット、ムエタイからの転向当初は別として(八重樫と戦っている)、国際戦の負けは実質的にはクアドラスのみ。その負けも、テクニックの違いで完封されたという訳ではなく、クアドラスのカット(バッティング)で負傷判定になった負けである。いまだ後に下がって負けたことはない。

バンコクで佐藤を追いかけまわしたようなプレッシャーを、ロマゴンにかけることができるかどうか。体格的にはシーサケットが上回るので、全く可能性がないとはいえない。それでも、ロマゴンの強打を受けてそれでも前進できるかどうか。ロマゴンは下がってもある程度テクニックは発揮できるだろうが、シーサケットは後に下がったら勝ち目はない。

とはいえ、シーサケットのタイ国内全勝、国外全敗という「内弁慶」振りを否定するのは難しく、タイ選手特有の「勝負にならなければ早々にあきらめる」式が出ないとは限らない。それでも、佐藤洋太を追いかけまわしてから4年しかたっていないことを考えると、それほどみっともない試合にはならないことを期待したい。予想としてはロマゴン判定勝ち。

WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ(3/19、米ニューヨークMSG)
シーサケット・ソールンビサイ O 判定(2-0) X ローマン・ゴンサレス

私の採点は115-111ロマゴン。だから判定にはちょっとびっくりだし、連勝記録が途切れてロマゴンかわいそうと思わないでもないが、少し前からのロマゴンの試合ぶりは全試合1RKOで売り出した頃とは雲泥の差で、これでメイウェザーの記録に迫るというのも何なので、いろいろ考えると妥当な結果といえなくもない。

1Rのダウンは、バッティングもあり足も引っかけられたように見えたのでそれほどのダメージはなかっただろうが、その後のカットは影響が大きかった。おそらく8Rくらいで負傷判定になっていれば連勝が続いたかもしれないが、それも含めてあのボクシングでP4Pとはとても言えない。

思うに、かれこれ10年も戦ってきて、最軽量級からのスタートではそろそろ年齢的に厳しいのかもしれない。上に書いた繰り返しになるが、ここ数戦の体のキレの悪さは隠しようがなかった。クラスを上げたことによる余分な肉ということもあるし、全身にたまってしまった疲労の影響もあるのだろう。

それに、いくらバッティングとはいえ、あそこまで嫌な顔を見せるのはいただけない。当り前のことだが、クラスが上がればパンチ力が増すけれども、それと同時に頭突きのパワーだって大きくなる。まして体格的に劣るものだから、バッティングをまともにもらってしまうのである。もちろん反則ではあるのだが、ある程度は気を付けておかない方が悪い。

微妙な判定だし、これで引退ということはなさそうだが、今後誰と戦っても、スーパーフライではかつてのロマゴンの迫力を期待するのは難しいような気がする。目標がなくなってしまった井上は、もしかするとバンタムに上げることになるのかもしれない。それはそれで面白そうだが、せっかく日本人選手がアメリカでPPVに乗れるチャンスだったのに残念である。

チャンピオン奪回のシーサケットだが、私の採点では負けだし、MSGでも首をひねった人が多かったのではないだろうか。前半こそ佐藤を追い詰めた前進がロマゴンを後退させたが、中盤でボディを効かされて以降、後に下がる場面が多くなった。ジャッジはあの声を出しながらの手打ちパンチにポイントを割り振ったのだろうか。

次の試合はWBCの指示によりクアドラスになるのだろうが、シーサケットvsクアドラスにHBOやShowtimeが興味を示すとは思えないので、再び米国では不人気なクラスとなる可能性が大である。今日の出来であれば、井上はもちろんのこと、エストラーダとやってもカシメロとやっても、もしかして井岡とやっても勝てないのではないかと思う(MSGでやらなければ)。