039 安房高山から三郡山 [Jan 17, 2015]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

さて、年末に撤退した安房高山である。再挑戦ということになると、天祖山三ノ木戸山の例があったけれど、いくら山のむずかしさは標高ではないといっても桁が1つ少ない300m級である。万難を排して今回は成果をあげなくてはならない。

前回の撤退は土砂崩れによる道路の不通が大きな理由であり、現場に来るまでそのことが分からなかったことによるものだから、そこを通らなければ心配はないはずである。ただ、再挑戦の日は午後から強い北風が吹くという予報だったので、早めに出発して早くに上がるに越したことはない。清和県民の森駐車場に着いたのは8時過ぎ。前回より小一時間早く着いた。

国道410号から林道のルートは土砂崩れ、県民の森から尾根道を行くのはやや歩きにくかったので、谷を越えてさらに東の尾根を行くことにした。この尾根を通っているのは林道であり、前回土砂崩れで行く手を阻まれた道を逆側から大回りで攻めることになる。大回りとはいっても、県民の森案内図によると4~5kmくらいだから、1時間半みれば十分であろう。

駐車場を出たのは8時10分。今回は奥に見えるトンネルをくぐって行く。しばらく林間の静かな道を歩いていくと、急にあたりが開けて、県民の森のキャンプ場・ロッジ村と大きな駐車場になる。とはいえこの季節なので、車は全く駐まっていない。左手にオートキャンプサイトを見ながら進むと、別の林道に突き当たる。ここを右(南)に折れて、安房高山を目指す。

下はアスファルトで歩きやすいが、左右にスイッチバックしながら標高を上げていくので、さすがに息が切れる。登り切ったあたりで、左からの林道と合わさる。じきに、大きな岩盤を切り開いたと思われる地点となる。「切り通し」と呼ばれる、房総ではよくある地形である。高さは10m以上はありそうだ。

いまにして思うと、なぜここに無理に道路を開かなければならなかったのだろうと思うけれど、当時はやむにやまれぬ事情があったのだろう。このあたりから、木立が途切れると向こう側の山が見えてくる。途中で見覚えのある津森山が見えた時にはちょっとうれしかった。

なかなか着かないなあと思ってるうちに進行方向にひときわ高い山が見えた。安房高山のようである。ただ、道は山を迂回して、南側に回り込むように続いている。右側の崖の上だろうなと見当をつけていると、林道が二方向に分かれた。

左の道は砂利道。右側は引き続きアスファルトながら、「この先、法面崩壊により通行止」と道路工事用コーンにプリンタ印刷された紙が貼りつけられている。法面崩落といえば、この間の土砂崩れの場所に違いない。だとすると、ここを少し進むと登山口になるはずである。


安房高山への林道で出てきた切り通し。ここにどうして道路を通す必要があったんだろうと思うけれど、登山道と比べると歩くのは大分と楽である。


向こうに見えてきたのが、おそらく安房高山。

 

分岐を過ぎてすぐ、後ろから乗用車が3台つながってやってきた。舗装してあるとはいえ道幅が狭いので、路肩に避けてやり過ごす。こんな林道を、しかも「法面崩落により通行止」の注意書きがあるにもかかわらず、何しに来たんだろうと思っていると、しばらく先の道が分かれているところに車を駐めてがやがや騒いでいる。

下りてきたのは10人以上の中高年グループ。安房高山という単語が聞こえたので同じ目的地のようだ。それにしても、ここまで車で来てあと10分かそこら登って、何が楽しいのだろう。WEBで見るとそんなに広い山頂でもないようだし。

せっかくの休みに大騒ぎしながら登る人達と一緒になりたくはないので、ちょっと考えて道を先に進む。安房高山の登山道は、北と南の両方の尾根道があって、北の尾根道は遠回りになるが、すぐ向こうに見えるトンネルを越えて引き返すようなルートである。車3台グループは駐車した位置からすると、南の尾根を行くらしい。だとすれば私は北の尾根を行くのが正解である。

まだがやがやしているグループを背に、トンネルを越える。ここらに登山口があるはずなので周りをよく見ると、路肩の岩に「↑安房高山」とペンキで描いた跡がある。ところがかなり前のものらしくほとんど消えかけているのであった。

そしてこの先の道というのが、標示が消えかけているのも無理はないと思えるようなルートであった。足下が粘土質の赤土でよくすべる上に、傾斜がきつい。そしてやせ尾根である。切り立った尾根の片側が崖になっているところや、赤テープがどこに続くのか分からないところもあった。

方向としては、トンネルの上を登っているし、頂上と思われる方向から先ほどの大騒ぎグループの声も聞こえるので間違いはない。ときどき錆びた行き先案内が出てくるのだが、「この先キケン」みたいな表示もあってかなりビビる。ロープを下ろしてある急斜面を登りきると、少し先に頂上が見えた。トイレの大きさの何かの施設は、WEBでおなじみである。

頂上到着は9時55分。幸いに大騒ぎグループは下りたようだ。誰もいない山頂は静かである。山は静かに登りたいものである。県民の森駐車場から1時間45分。せっかくの山歩きならこれ位の時間は歩きたいものだが、無理無理狭い道を車で来て、10分やそこらで登って楽しいものだろうか。

山頂のすぐ下に広くなっているところがあり、そこでしばらく休憩。ここまでほぼ予定どおりに来たので、南の尾根道を下りて林道を西に進み、請雨(しょうう)山、三郡(みこおり)山と続く本日後半のルートに向かう。

安房高山の南尾根は、北尾根とは違って広々とした尾根道である。切り立ったところに危険防止のトラロープが張ってあるのだが、これをやるなら北尾根は全部ロープや鎖が必要だと思われるくらいである。いったん登り返した小ピークに祠があり、祠のすぐ下からコンクリで補強された急坂となる。昔はこの祠まで車で登って来ることがあったのだろうか。

急坂を下りきったところで林道に合流し、そこに馬頭観音と書かれたものなど四柱の石碑と「→安房高山」と書かれた標示がある。いまやこちらから登るのがメインルートになっているようだ。そして林道は先ほどまで歩いて来たのとは違って、もはや管理されていないように思われた。


安房高山の北尾根(w)。けっこう危ないやせ尾根があります。


北尾根から見た安房高山山頂。右手によく分からないブロック作りの倉庫様のものが見える。

 

下に写真を載せてあるが、ガードレールもあるし舗装はしてあるものの、道幅の半分以上はもはや雑草の領分であり、それすらしばらくすると砂利道になってしまう。県民の森を出てから人家は全くない。時々「県有林・ゴミ捨て禁止」の標示があるので、森林の管理用道路として使われているのもしれない。

ただ、歩く分には、登山道と違って急傾斜やアップダウンのない林道は快適である。30分ほど歩くと、前方に見覚えのある補強された法面が見える。ここで林道から右に分かれた愛宕神社の参道を登って行く。法面工事の時に整備したのだろうが、道自体はかなりくたびれた階段状の道である。登りきったところに、「愛宕神社」と書かれた立派な鳥居がある。ここが請雨山である。

法面補強のすぐ上にあるこの鳥居からは、南にすばらしい展望が広がっている。眼下からは君鴨トンネルを出た国道410号線が大動脈となって鴨川市内へと続き、正面には自衛隊レーダー基地のある千葉県最高峰の愛宕山、両側を山に囲まれた長狭街道が左右に走り、金束(こづか)から鴨川にかけての平野部が一望できる。

この請雨(しょうう)山、別名を勝負山ともいうらしい。眼下に大きな風景が広がるこの地で、雨ごいをしたのか、丁半博打をしたのかは定かではないが、愛宕神社というからには山の神様として昔から信仰を集めてきたものと思われる。鳥居の先には社殿はなく、祠が2つ置かれているだけというのも、かえって神様らしい。

しばらく展望を楽しんだ後、法面の逆側・西方向へと進んでいく。10分ほど細い登山道を歩くと、もと歩いていた林道に復帰する。ただし、さきほど歩いていた地点よりさらに「こなれていて」、タイヤの跡もほとんどみられないほどの状態であった。もちろん、歩くのには問題はない。

登ったり下ったりを30分ほど繰り返して、そろそろかなと思うと道端に「三郡山入口」の表示がある。しかし、道とも踏み跡とも判然としない進路は、すぐに倒木に行く手をはばまれてしまう。再び周囲をよく見まわすと、斜面の上の方に赤テープが貼られているのに気が付いた。この道で正しいようである。

次第に急斜面となる。後ろを振り返ると、山と山の間、谷間から尾根へと上がってきたのが分かる。手がかりとなる木の枝は豊富にあるのだけれど、とにかく斜面が急傾斜で足下がすべるので登りにくい。テープもあったりなかったりするので、尾根筋をたどって登る。一度など、赤テープと思って登ってみたら椿の花だった。ようやく傾斜が緩やかになり、平らな場所に出た。

三郡(みこおり)山の表示があるのでここが山頂のようだけれど、残念ながら展望はない。ネタ本である「房総のやまあるき」によれば、山頂を北に下りると好展望の休憩適地があるようなのだが、残念ながらよく分からなかった。仕方がないので、少し行ったところの小ピークに、一人二人休めるスペースがあったので腰を下ろす。

ちょうど12時になったので、チョコクロワッサンとお汁粉でお昼にする。この日は午後から風が強まるという予報だったので、いつも持ってくるガスバーナーはやめて、テルモスに温かいお汁粉を入れてきたのである。午前中はほとんど風がなく、天気予報はいい方に外れたと思っていたのだけれど、残念ながらこの時間から予報通り風が強くなってきた。

さて、三郡山まで来てしまうと、午前中に通ってきた道を引き返すのは距離的に大きなロスだし、南に下りても西に下りても駐車場まで遠い。残る選択肢は北に行くしかないのだが、ここからは林道ではなく純粋な登山道である。そして、尾根道の途中から県民の森に下る道が分かりにくいという情報もある。でも、ここを行かないと帰れないのである。


安房高山を過ぎると、林道もかなり自然に還っています。後方尾根は安房高山に連なる。


WEBで見覚えのある請雨山への法面補強。上がったところに愛宕神社の鳥居と祠がある。鳥居や階段は立派なのに、なぜか本殿がないのが不思議。


三郡山山頂。まったく展望はない。展望のいい休憩適地があるという情報だったのだが。

 

テルモスのお汁粉でお腹があたたまったし、急に風も出てきたので、休憩を早めに切り上げ12時20分に出発する。

さて、ここで少し迷った。めざす方向は北の尾根道のはずなのだが、磁石が示す北方向は深い谷である。尾根はほぼ90度に北西と北東、それと進んできた南方向である。ここを間違えるとまたもや枝尾根に迷い込みという危険がある。ちょっと考えて、もっとも起伏がなだらかで道の広い北東の尾根を進んだ。

ところが、2つほどアップダウンを繰り返したあたりで、続く道が見当たらない。赤テープも森林標識もいつの間にかなくなっている。進路を枯れ枝がふさいでいて、かき分けて進まないと尾根筋をたどれない。どうやら枝尾根に入ってしまったようだ。かなり道幅のある踏み跡だったので、入ってしまった人がかなりいるようである。

早めに気づいたので、スタートした休憩場所まで戻る。時間ロスは10分もなかったと思う。北東がダメだから残るは北西である。休憩場所から北西の尾根はけっこうな急傾斜の下りであった。これまではほとんど林道歩きだったのだが、ここからは登山道である。階段などの整備がほとんどない本当の山道で、登りより下りの方が足場が確保できずにつらい。

このあたりが奥多摩・丹沢と房総の大きな違いで、1年通じて入山者が途切れることのない奥多摩・丹沢は整備してある道がほとんどであり、そうでないところもしっかり踏まれている。ところが房総は入山者が基本的に少ないため、道のように見えて落ち葉が積もっているだけだったり、すでに道でなかったり、整備していない急斜面だったりするところが珍しくないのである。

先ほどの枝尾根に懲りて慎重に赤テープや森林標識を追うのだが、目印のある道は基本的にピークを忠実にたどっているので、けっこう登り下りがある。なぜかというとこの尾根を俗に郡界尾根といって、市町村の境界になるからである。見るからに歩きやすい巻き道には目印がなくて、苦労して登って下りてくると結局合流したりすることもあるのでちょっと落ち込む。

そんなこんなで1時間ほど歩くけれども、まだ県民の森分岐には到着しない。実は今回のコース、10年前の2005年のインターハイ登山競技で使われたルートであり、要所要所に「高体連」と書いた行先標示がある。また、もっと昔に、県民の森で作ったと思しき錆びた金属の標識もあるので、それなりに心強いのであるが、それすらなかなか出てこないのであった。

12時過ぎに三郡山を出れば2時には駐車場に戻れて、日帰り温泉に寄れると考えていたのだけれど、GPSの進み具合を見ても先は長い。結局、県民の森への分岐点となる「尾崎分岐」に着いたのは1時40分、休憩から1時間20分歩いてようやく着いた(計画では1時頃に着くはずだった)。ここから郡界尾根は去年行った高后山に続いているが、尾崎というのは県民の森近くの集落である。

尾崎分岐からの下り道も植林地の急傾斜といった趣きだったが、枯れ枝を組み合わせた「X」印で方向を変えると、ほどなく尾根の両側にめざす小糸川の水面が見えてくる。水音が聞こえてから谷まで、奥多摩や丹沢だと1時間近くかかるのだが、房総だと10分か15分で着いてしまうのがありがたい。

尾根末端で川岸に下りる。ここの渡渉も、迷いやすいという情報だったが、インターハイの際の整備で意外と分かりやすかった。対岸に渡って赤テープを追っていくと、カヤトの原、イノシシ除けの電線のある畑を抜けて国道410号線に戻ってくる。あとは国道沿いに駐車場まで歩いて、到着は2時40分。予定よりも40分オーバーしたけれど、前回の雪辱を果たすことができた。

思ったより道を探すのに苦労しなかったのと、小ピークへのアップダウンを繰り返した割には足にダメージがこなかったことは収穫。ところが、秘密兵器CW-Xが縫い目のところから破れてきてしまった。2年使っているのでそろそろ寿命だったのかもしれない。渋滞になると困るので、この日は人目のないのを幸いに車の中で着替えて、そのまま家に戻ったのでありました。


三郡山から郡界尾根に入ると、小ピークへの登り下りばっかりです。


高宕山方面と県民の森方面の分岐。「尾崎→」の指示にしたがって右方向へ。


尾根末端まで下りると小糸川へ。向こう岸の赤テープを目印に林を抜けると、カヤトの原。ここまでくれば国道410号線がすぐ。

 

この日の経過
清和県民の森駐車場 8:10
9:55 安房高山 10:10
10:50 請雨山 10:55
11:50 三郡山 12:20
13:40 尾崎分岐 13:45
14:15 小糸川渡渉 14:15
14:40 県民の森駐車場
(GPS測定距離  12.2km)

[Feb 5,2015]