042 日向山から梅の木尾根 [Mar 14, 2015]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

さて、冬の間は房総の山で過ごしてきたが、今年は大雪も降らずそろそろ奥多摩・丹沢への遠征が可能である。まだ山の上の方は雪が残っていそうなのと、いきなり標高差1000mを登るのも不安が大きいので、まず低山をトレーニングがてら登ってみることにした。WEBで研究したところ、おととし大山から下りてきた雷ノ峰尾根から谷を挟んだ梅の木尾根がおもしろそうだ。

例によって朝一番で小田急線に向かう。土曜日朝の新宿は前の時と同様、駅で寝ている人がいて朝帰りの酔っ払いがいて、鼻にピアスをしているヤンキーがいる。できれば通りたくない経路なのだけれど、丹沢に行くのは小田急が便利だしフリーパスがあってお得である。町田を過ぎるあたりまでは我慢しなければならない。

伊勢原で下りてバス停へ。大山ケーブルに向かう人で混雑しているが、日向薬師行きのバスには楽勝で座ることができた。それどころか、みんな途中で下りて行って終点まで乗っていたのは私ひとりであった。私としてはありがたいのだけれど、みんな同じ経路で同じところに行って楽しいのだろうか。

まずは20分ほど登って、日向薬師にお参りする。現在、本堂の改修工事中で、あまり広くない境内は工事の仮設フェンスでおおわれている。露店で地元の人達が準備していたけれど、これではお客さんはあまり来ないかもしれない。でも、店を開かない訳にもいかないんだろう。声をかけられたら「帰りに」とか言おうと思っていたが、幸いに話しかけられなかった。

日向薬師からは梅園の坂を登って行く。ほとんどが白梅で、いまが見ごろである。梅園の半ばから日向山に直行する道があるはずだが、ガイドブックによると現在は通行禁止となっている。きっとトラバースの登山道が崩れているのだろうと思って、指示どおりいったん峠まで行ってから尾根を登ることにする。

ここの峠は向こう側に抜けると弁天の森キャンプ場で、左右の尾根は右(東)が日向山、左(西)が梅の木尾根である。だから、日向山に登ってから再度ここまで下りてきて、それから梅の木尾根に行くことになる。仕方ないとはいえ面倒である。WEBに載っていたように「クマ出没注意」の立看板が目立つ。単独なのでもちろんクマ鈴は付けている。

日向山まではけっこうな登りである。まず丸太の階段があって、それから木の根と岩の登り坂。2ヵ所ほど小ピークがあって、最後もうひと登りで頂上に達する。ここで、この日初めての登山者とすれ違う。そして、山の中で出会った最後の登山者であった。頂上の東は開けていて、相模原から相模湾にかけての展望を望むことができ、遠く江の島も見える。

頂上には、奇しくも先日の石尊山と同様の石の祠が建てられている。この祠は江戸時代天明年間の建造だそうで、以前は観音像が祀られていたそうだが、現在はお札が納められているのみである。そして驚いたのは、祠と並んで「ナイスの山頂上」なる看板が立てられていたことである。ナイスという会社がこの山を買い取ったようなことが書いてある。

そして、頂上から南に下りる登山道の入口には、「ここから先私有地のため立入禁止」と書いてある。ガイドブックに書いてあった通行禁止とは、道が崩れていて危険とかそういう理由ではなくて、私企業の所有地なので通れませんということだったのである。本来、山とか川とかには排他的な所有権は認められないはずであるのに、世知辛いことである。この先この会社と関わりができたとしても、いい印象は決して持たないであろう。


日向薬師から上がった「クマ注意分岐」(w)。十字路になっていて、右が日向山、左が梅の木尾根、向こう側が弁天の森キャンプ場。


日向山山頂。東側に厚木から相模湾にかけての展望が開けます。日向薬師からの直行ルートの通行禁止は、私有地のためだそうな。向こう側が「ナイス」の碑(爆

 

バス停から日向山まで休憩を入れてちょうど1時間。これからいよいよ梅の木尾根である。WEBでは「梅ノ木尾根」と書かれていることが多いのだが、「梅の木」とはこのあたりの小字名であり、日向薬師の案内図にも「梅の木」とひらがなで書かれているので、今回のレポートではひらがなで書くことにしたい。

バス停の標高が150mほど、クマ注意峠が350mほど。日向山404mすら房総にほとんどない高さなので、これから先は去年以来の高さへのチャレンジとなる。峠からいきなり急傾斜の階段、そして一息ついて再び急登である。2つの急登をクリアして出てきた道標が「天神キャンプ場分岐まで0.18km」、なんと、まだ180mしか歩いていなかった。前途多難である。

3つ目、4つ目の急登を何とか登りきったあたりにベンチが置かれていて、約1時間歩いたので休憩にする。1/25000図の537p付近のようだ。今回のルートである梅の木尾根は、私の持っている平成14年の1/25000図には載っていない。最新の電子国土ポータルには載っているので、緯度経度も入れてちゃんとプリントアウトしてきた。前々回の石尊山の反省である。

梅の木尾根は893pを経由して不動尻分岐、大山頂上へとつながっているが、今回目指すのは途中の778pである。これでも標高差は600mあり、房総の山ふたつ分である。WEBによるとたいへん雰囲気がよく快適な尾根ということだが、トレーニングが足りないためか、ここまでのところ結構きつい登りである。

休憩地点からしぱらくして、通算6つ目の急登が始まる。登り坂の途中で浄発願寺奥ノ院への分岐を過ぎると、ここから先は神奈川県の水源林巡視路で、「関係者以外立入禁止」の看板が立てられている。その看板の足下に小さく「←大山」の手作り案内板が置かれていて、ここから先は自己責任のバリエーションルートとなる。

それにしても、奥ノ院分岐の少し前から始まった急登がずっと続く。ピークらしきところは何度か見えるのだが、そこまで行くと傾斜が少し緩くなっただけで、まだまだ登りである。しんどいけれど、このトレーニングに来たんじゃないかと自分で自分を励ます。天祖山だって小雲取山だって、笠取山だってクリアしたじゃないか、これくらい何だ。(もっとも、確実に歳はとっている訳だが)

とにかく休まずに登り続けようと思って40分ほどがんばったら、ようやく小ピークに到達した。水源林標示のところにマジックで、「二ノ沢の頭」と書いてある。GPSをみると標高660mほどなので、きついと思った割にはこの急登の標高差は150mくらい。やっぱりひと冬のブランクは大きいなあ。

自分としてはここまでの登りがきつかったので、ここからは思いのほかすんなり登ることができた。ニノ沢の頭から先は噂に聞いていたヤセ尾根。尾根の狭さ自体は房総にもあるのでそれほど圧迫感は感じないのだが、これが延々と続くのは房総にはなかったことである。木の根の張ったヤセ尾根やら、岩場のヤセ尾根やら、ザレ場のヤセ尾根やらが長々と続いた。

ようやくヤセ尾根が終わり、進行方向右手に見えていた尾根と合流したところが大沢分岐である。右手に見えていた尾根が大沢方面、鐘ヶ嶽に続く尾根で、合流地点に小さな手作り道標がある。この分岐を過ぎて、いよいよ最後の急登である。逆くの字型の狭い尾根を登りつめて、その先をもう少し登ると、今回の目的地である778ピークである。

 


二ノ沢の頭を過ぎると、噂のヤセ尾根が始まる。怖いというより長い。


大沢分岐を過ぎて最後の登り。あともう少しというところ。

 

さて、778pは建前上巡視路であるので、ベンチも置かれていないし親切な案内板もない。ただ、ピークに生えている木の太い幹にほとんど読めなくなった行き先標示があり、左に進むと日向キャンプ場と書いてある。その方向の尾根には、「関係者以外立入禁止」の立札がある訳だが(下の写真)。

778p到着は11時30分。あれだけ苦しい登りだったにもかかわらず、出発前に立てた計画どおり到着することができた。おあつらえ向きに倒してある丸太に腰かけてお昼にする。この日は風が強くなるという予報だったので、テルモスにお湯を入れてきて、コーヒーとランチパック、セブンのマカロニサラダの昼食である。

幸いに風は強くならなかったのだけれど、道中で空気が冷たくなってきて、脱いでいたウルトラライトダウンを再び着込む。インスタントコーヒーが温かくておいしい。そうこうしていたら、空から何か落ちてきた。なんだ花粉が飛んでるよと思ってよくよく周りを見てみると、なんと風に乗ってあたりを白くしているのは雪である。どうりで冷たい空気だった訳である。やはり早めに撤収すべきだろうとばたばた片付ける。

これまで進んできた梅の木尾根は、マイナールートとはいえ電子国土ポータルに載っている道だけれど、ここから日向キャンプ場への下りはまったく掲載のないバリエーションルートである。赤い杭や赤・青のテープ、ピンクのリボンを見逃さないように先に進む。入ってすぐに左右に尾根が分かれるのだが、杭の打たれている左の尾根に進む。

しばらく緩やかな下りになって安心していたら、いきなり「→日向キャンプ場(急坂)」の案内標示が出てくる。案内標示がある以上は登山客の通行を想定しているはずなのだが、見た目一直線の急傾斜を下って行く難路である。(急坂)でない日向キャンプ場への案内はないものか探してみたけれど、そんなものはなかった。

意を決して、急坂ルートを下って行く。幸いに、杭やテープは続いているのだけれど、さすがに立入禁止になるコースである。第一に、急傾斜がずっと続く。第二に、地盤が弱くて崩れている箇所がいくつかある。第三に、手掛りになる岩や立木が多くないのである。WEBには「特に問題はなくて正規のルートと思って下りてきた」なんて書いてあったが、とんでもなかった。

下の写真で急傾斜を感じていただければと思うのだが、下向きに歩いて下るのは非常に困難である。後向きに下るにしても、地面が斜めでしかも滑るのである。なぜにここにテープがあるのかというような木に赤テープが張ってあることもあった。鎖場となっていてもおかしくない場所では、鹿除けのフェンス(それも半分崩れている)を鎖代わりに下りたくらいである。

1時間ほど歩くと、水の音が大きくなった。だが、ここから谷までが長いのが丹沢や奥多摩なのである。ほとんど垂直に落ち込んでいる急傾斜の向こうに、堰堤らしきものが見えた。ようやく終わりかと思うと、赤リボンが踏み跡もない斜面に見える。どちらかというと正規の道っぽいのは尾根伝いにいったん坂を上がる踏み跡なのだが、テープは谷にまっすぐ続いている。

やっぱりテープ重視と思い急斜面を下りて行ったのだけれど、このテープはどうやら別の用途に使われたものらしく、結局この先に道はつながっていなかった。しかし、下りることはできても登り返せないような急斜面で、仕方なくトラバースして堰堤方向に向かっていく。再び鹿除け柵が登場して正規の道に戻ることができた。

いずれにしても、これでぬかるんでいたりしたら目も当てられないような難路である。WEBに書く人も、スキルがあるからバリエーションルートを行くのだろうけれど、「おすすめできません」くらいは書いてほしかったものである。

以前下った雷ノ峰尾根からキャンプ場へのバリエーションルートを想像していたものだから、相当面喰ってしまった。私としては、「このルートは急傾斜で危険なので、コンディションの悪いときにはここを下りるのはやめましょう」とあえて言っておきたい。(コンディション=天候、路面状況、体調、荷物等)

堰堤からは車道なので問題なくキャンプ場へ。その先のクアハウス山小屋の立ち寄り湯で汗を流して、思わず生ビールを飲んでしまいました。

 


p778から90度進路を変えて日向キャンプ場に向かう。立ち入り禁止の立札はダテじゃなかった。


凶悪な急傾斜の尾根道。上に見える木のあたりから、一直線に下りてくる。赤テープの指示どおり来ても、まっさかさまのこんな道(w

 

この日の経過
日向薬師バス停 8:05
8:20 日向薬師 8:30
8:45 クマ注意分岐 8:45
9:00 日向山 9:10
9:20 クマ注意分岐 9:20
9:55 p537付近 10:05
10:45 二ノ沢の頭 10:48
11:15 大沢分岐 11:15
11:30 p778(昼食休憩) 12:00
13:15 キャンプ場堰堤 13:20
13:40 クアハウス 14:30
14:50 日向薬師バス停
(GPS測定距離  9.2km)

[Apr 2,2015]