049 関豊愛宕山・木之根峠 [Dec 30, 2015]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

塔ノ岳を登るのに大分と苦労したので、もう一度標高差のあるところに挑戦しようと思っているうちに年末となってしまった。冬から春にかけては房総の山歩きである。

房総の山は標高はないものの、結構アップダウンがあって歩くときつい。丹沢・奥多摩のように登山道が整備されていないので、道標もあまりないし踏み跡も微かである。地図に載っていない道もあるし、短時間で距離を歩いてしまうし、他の登山客と会うこともまれなので、迷うと大変である。

それに、標高1000mでも標高200mでも、30~40mの崖があると危ないのは同じである。標高がないといっても油断大敵なのである。今回も、それを思い知らされることになったのだが、ともかくも2015年も押し詰まった12月30日、天気は上々で風もほとんどない山日和の一日であった。

今回目指したのは関豊(せきとよ)愛宕山。房総には愛宕山がいくつかあり、こちらは関豊にあるのでその名前で呼ばれている。なぜこの地域を選んだかというと、2015年12月に松丘トンネルのモルタル剥落事故があり、久留里・亀山方面は避けた方がよさそうだったからである。それに、あちらの方面には、松丘トンネル以外にもモルタル吹付の簡易補強トンネルが山ほどある。

関豊は、もともと国鉄バスの駅があったところで、付近の集落である「関」と「豊岡」からとったものと思われる。房総では国鉄バスの駅は列車と同様に規模が大きく、昔、国鉄時代にはホームのある駅もあったということである。「関豊」駅のあった付近はいまは戸面原(とづらはら)ダムがあり、富津市民の森となっている。

この日の計画は、戸面原ダム近くの市民の森駐車場をスタートして関豊愛宕山に登り、峰続きに西に進んで三角点の地蔵峰、そこから豊岡林道を引越集落まで南下し、東に折れて大山林道から木之根峠を経由し戸面原ダムに戻るというルートであった(参考:ハイキング社「房総のやまあるき」木之根峠から関豊愛宕山)。

いつものように館山道を走り、富津中央で下りて戸面原ダムを目指す。この時間、高速を下りると真正面からお日様が目に入ってまぶしいので、サングラスを着けるのが定番である。ほぼ1年振りの房総だが、ちゃんと覚えていた。7時45分頃に市民の森駐車場に着く。車は私の1台のみ。身支度をして7時55分に歩き始めた。

「パノラマ広場」の案内表示のある林道を登って行く。舗装道路だが、かなりの傾斜がある。道端に電柱が続いているのは、上に電気を使う施設があるということである。ちょっとばかり息が切れるが、それでも30分も登ると訶具土智(かぐつち)神社前の石段に到着した。本殿の隣には遊具がいくつか見える。山頂が公園になっているのだ。

年末でもあり、この日の山歩きの無事をお願いして二礼二柏手一礼。いずれにしても、こうして一年つつがなく暮らして、のんびり山歩きを楽しめるのはありがたいことである。本殿を一周して山頂表示がないかどうか調べてみたけれど、見当たらなかった。その代わりに、西側に景色が開けていて、遠く東京湾、横浜あたりまで一望できる。

低空には雲がかかっていて富士山こそ見えなかったが、間近に見える房総の山々はくっきりと見える。間近に見えるピークはこれから行く地蔵峰だろう。その向こう側の稜線は一昨年行った房総アルプスか。さらに3つ4つと稜線が重なり、一番向こうに山頂だけが三角に突き出ているのが鋸山である。鋸山がこういうふうに見えるのはこちら側からだけである。

ちなみにこの日回ったのは、西を房総アルプス、東を石射太郎から高宕山、南を津森山・人骨山にちょうどコップのように囲まれた山域で、それぞれの方向にいつか登った山が見えたのは楽しかった。

文字通りパノラマ広場で大パノラマを楽しんだ後に林道に戻る。ここから先の林道は砂利道になるが、道は一本で間違いようがない。しばらく下って少し登ると、林道の突き当りになった。このあたりが地蔵峰のはずである。見回したところ、ピークらしいのは進行方向右手の藪の上だけである。

傾斜のなだらかなところを探して斜面を登って行くと、ちょうどピクニックシートを敷けるくらいのピークとなっていた。三角点があるので、ここが地蔵峰のピークには違いない。しかしながら、ほとんど林道に削られてしまい、わずか7~8mの高さになってしまっているのは、なんだかかわいそうだった。山頂に置かれていた石仏は、お地蔵さまではなく大日如来と観音さまだった。

 


関豊愛宕山の山頂は、富津市民の森パノラマ公園になっています。建物は訶具土智(かぐつち)神社。


関豊愛宕山の頂上(パノラマ広場)からは、西の方向が開けています。山頂だけ見えているのが鋸山。その前には三重四重に稜線が重なっている。


コーンの向こう側が地蔵峰頂上。踏み跡をたどって斜面を登ると、なんと三角点があるのでした。

 

地蔵峰の三角点を確認して、豊岡林道に入ったのは9時過ぎ。まだ1時間しか歩いていないとはいえ、山道といえるのは地蔵峰の登り下り5分ほどだけである。

しかし、豊岡林道入り口には三角コーンが置いてあって「土砂崩れにより通行止め」と書いてある。WEB情報では北と南からそれぞれ工事をしていて、開通したのはつい2、3年前ということだったはず。ということは、開通して早々にまた通行止めということだろうか。いずれにしても、歩行者は大丈夫だろう(歩行者もダメだと、トラロープとかチェーンで道がふさがれる)。

それにしても、房総には林道が多い。「林道XX線」で検索すると結構ヒットすることが多く、オフロードバイク愛好者の間では好まれているようだ(この日も大山林道で二人組と会った)。そして、きちんと舗装され維持されている林道もあるけれども、荒廃し自然に還りつつあるものもある。以前、八良塚から戻るときに通った道もそうだし、安房高山から請雨山の間もそうだ。

豊岡林道を入ってしばらくは、以前から開通していた部分である。ときどき西側の景色が開けて、房州アルプスを間近に望むことができる。一番北側のピークが志駒愛宕山で、この日訪れた関豊愛宕山から直線距離で3kmほどしか離れていないだろう。尾根が違うので歩くと半日以上かかるだろうが。

路面は砂利道だったり簡易舗装だったりするけれども、基本的に四輪車が通ることを想定して作っているようで、要所要所にはガードレールも整備されている。そして、結構な起伏がある。歩いていてきついなと思って後ろを振り向くと、結構な登り坂だったりする。

20分くらい歩くと、高さ20mくらいはありそうな岩盤を切通しにして通している場所がある。このあたりから難工事でなかなか開通しなかったところかもしれない。ここの切通しの土止めは細かいネットのようなものでしてあるのだが、そのすぐ後から、数百m、あるいは1km近くの距離続いているモルタル補強の場所が現れた。

左はコンクリ、右もコンクリ、下も簡易舗装のコンクリである。思わず、「モルタル通り」という言葉が頭に浮かんだ。山の中をこんなふうにセメントで真っ白にしてまで、道路を通す意味がどこにあるのだろうか。ちなみに、林道のこの部分には人家はいっさいない。材木を運搬するような植林された地域もない。ここを通らなくても、遠回りすれば何の問題もなさそうである。

過去、林業が盛んな時代に作られたのなら分かる。奥に人が住んでいるのであれば多少の困難は克服して道路を通す意味がある。しかし、これはいただけない。なにしろ、ここを通したのはせいぜい5年前。50年前ではないのだ。もとのまま残しておいてくれればいいハイキングコースになったかもしれないのに、モルタル通りとなってしまってはわざわざ見に来る人はいない。

ではモルタル通りにしなかったらどうなるかというと、下の写真のような土砂崩れ現場となる。第一の現場では、高さ十数mにわたり表層の土砂が流れてしまっている。房総の山奥の土砂はこうした砂っぽい水気を含むと崩れやすい地盤が多い(こことかここ)。思うに、有史以来何回も噴火している富士山の火山灰の影響ではないだろうか。

なんてことを思いながら1時間ほど歩いていると、林道の右側に広い場所が現れた。平らになっていて腰を下ろすのに具合よく芝や下草が生え、その上にお日様がさんさんと降り注いで暖かそうだ。おそらく、工事の際に資材置き場か何かに使われた場所と思われた。ちょうどいい頃合いなのでここでお昼にする(結果的には、この後に昼食適地は出てこなかった)。

EPIガスでお湯を沸かしてインスタントコーヒーを飲み、アルファ米とフリーズドライのビーフシチューで洋風おじやを作る。困ったのは途中でガスがなくなってしまい、いまひとつ加熱ができなかったことである。それでも、ほとんど風がないぽかぽか陽気で食べる暖かなお昼ごはんは、2015年を締めくくるハッピーな時間でした。

通行止めなので当り前かもしれないが、昼食休憩の1時間の間、前を通る人は誰もいなかったのも、静かで何よりのことであった。

 


通行止めの豊岡林道には、両側をコンクリで固めた「モルタル通り」が数百m続きます。


土砂くずれその1。砂含みのもろい地盤が、十数mにわたり地崩れ。しかしわずかな隙間をオートバイ?が走っているようです。


土砂崩れその2。土砂の下にも石垣は続いています。斜面は20mくらいの高さで、ヘアピンカーブで下りてくるとこれ。このままひと夏越したようです。

 

お昼を食べて出発は11時。木之根峠まで1時間、駐車場に戻るまで1時間とすると午後1時には駐車場に着いてしまうなあと考えながら歩いていたのだが、もちろんそんなことはなかったのである。

休憩場所のすぐ下が十字路になっていてここまでが豊岡林道。左右が舗装道路で直進が登山道。ここは左(東)に折れるのが正解。まっすぐ進むと山の中を進んで長狭街道まで行ってしまう。点々と農地や廃屋(だと思う)が続く中を東に進路を取る。東に進めば戸面原・金束間を結ぶ県道に突き当たるはずなのだが、なかなか出てこない。

そればかりか、1/25000図にも電子国土にも載っていない道が出てくるので、迷いに迷った。最後の方では、南や東に行かなければ少々の遠回りでもいいやと思って歩いた。帰ってからGPSをカシミールに落としてみると、そもそも林道出口が500mほど1/25000図より東で、県道に出た道も1/25000図に出ていなかった。結局、県道に出るまで1時間近くかかってしまった。

県道に出てからは、南下して郡界尾根を越え鴨川市に入る。すぐに大山林道の分岐が出てくるのでそこを左へ。しばらく舗装道路が続いたが、ここからは久しぶりの砂利道である。それほどの傾斜ではないが登り坂である。ところどころに「携帯通話ポイント」の表示があるが、房総の山で携帯が圏外になる場所はほとんどない。

大山林道に入って10分ほど歩くと、峠のような地形になった。ここから先は道は下っているので、峠というからにはこのあたりである。踏み跡をみつけて藪の中に入る。「房総の山歩き」には有志が下草を刈って行先表示も設置したと書かれているが、探したけれど見つからない。よく見ると藪の中に倒れた石碑がいくつかあるので、落ち葉を踏んで上に向かってみる。

尾根を外さないように高い方へ登って行くと、次第に踏み跡がはっきりしてきて、小高いピークの上に自然石を削った石碑が見えてきた。「嶽神」と彫ってあり、おそらく山の神を祀っているのだろう。傍らには小さな石仏の観音様もある。ここが御所覧場で、昔、里見の殿様が振り返って安房の景色を望んだ場所ということである。いまは木々が茂って展望は開けない。

さて、木之根峠はこの先なのだが、行先表示もなければ赤テープも見当たらない。唯一手がかりとなるのは頭を赤く塗った杭で、おそらく市町村の境界を示すものと思われた。コピーをとってきた「房総の山歩き」には、「自然林の尾根を少し行き、道は尾根の西側山腹をたどるようになる」と書いてあるのだが、少しというのはどの程度なのだろう。

とりあえず分岐を気にしながら尾根を進む。市町村界の杭を目印にするが、結構きつい斜面である。踏み跡もほとんどない。確かに木の根を踏みながら登るので「木之根峠」という名前となったのは分かるし、少なくとも市町村界の杭を打った人は来ているのだろうけれども、本当にこの道でいいのだろうか。でも、他にそれらしき分岐もないのである。

とうとう尾根道は、左が崖というとんでもない場所にさしかかる。見た目20mくらいは垂直に切り立っている。足を滑らせたら、ケガで済むかどうか微妙なところである。そして、足もとの木の根の間から中空が見える。どうやらオーバーハングしているようだ。

余人はともかく、体重約100kgの私が乗って木の根が折れないという保証はない。計画を断念し木之根峠はあきらめることにした。こんな危ない場所が本当に官道だったのか首をひねりながら登ってきた尾根を戻る。あるいは、ここの道はもともとヤセ尾根であったものが、大雨か何かで地崩れを起こしてしまったのかもしれない。

1/25000図をみると、大山林道の途中から戸面原ダム方面に向かう道がある。ここをたどって行けば時間はかかるかもしれないが駐車場に戻れそうである。再び「嶽神」の前を通って大山林道に戻り、来たのとは逆方向に進む。金束方面へ下る道と分岐すると、あとはほとんど一本道である。20分ほど歩くと再び分岐となるが、北方向「松節林道」という表示がある方に進む。

ここから先、5分おきくらいに農家が現れる長い道を右に行ったり左に行ったりしながら歩く。今年は暖かいせいか、ところどころで紅葉が色あざやかだった。結局誰とすれ違うこともなく歩いて、2時過ぎに駐車場に着いた。撤退地点から1時間10分で戻れたので、あまり時間的なロスはなかったようである。

家に帰ってからGPSデータをカシミールに落としてみたところ、撤退地点までは市町村界を忠実にたどっていて、行き着いた場所は1/25000図上では林道が通っているはずのところなのである。ちなみに木之根峠はその先の鞍部で、市町村界をそのまま進み標高差で40mほど下っているように見える。

いずれにしてもあそこを通るのは中高年単独行の私には難易度が高すぎるし、1日ほとんど誰とも会わなかったことを考えるともしもの時が心配である。機会があれば逆方向からチャレンジしてみる手はあるかもしれないが、今回はこれで仕方なかっただろうといまのところは考えている。

 


大山林道の最高点にあたる部分から、踏み跡をたどって尾根を登ったところが御所覧場。「嶽神」の碑と石仏、石臼のようなものが置かれています。


木之根峠は本当にこの道なのだろうか。私にはちょっと無理です。


木之根峠越えは断念、松節林道をぐるっと回って戸面原ダムに戻る。暖冬のためか、まだ紅葉がとてもきれい。

 

この日の経過
富津市民の森駐車場 7:55
8:25 関豊愛宕山 8:40
8:55 地蔵峰 9:00
10:05 林道資材置場跡 11:00
12:20 御所覧場 12:20
12:45 木之根峠下? 12:50
13:10 大山林道 13:10
14:05 駐車場
(GPS測定距離 15.0km)

[Jan 25, 2016]