052 城山・葛城山・発端丈山 [Apr 16, 2016]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

三島から修善寺まで走っている伊豆箱根鉄道駿豆(すんず)線。車窓の右側、西の方向には、大場(だいば)あたりまで沼津アルプスを望むことができる。そして、韮山から伊豆長岡に近づくと、頂上までロープウェイが通る険しい山が見えてくる。葛城山である。次に峰続きに岩壁が垂直に立ち上がっている山が出て来る。城山である。

この2つの山と、さらに西に続く発端丈(ほったんじょう)山を加えた3座は、伊豆三山と呼ばれる。前回の沼津アルプスはあまりの傾斜と路面状況の悪さに途中でエスケープを余儀なくされたが、ここはいかがなものだろうか。いま住んでいる借上げ社宅から歩いて行けるところなので、まだ暑くならない4月の内に行ってみることにした。

社宅を7時ちょうどに出て、途中にあるトップバリュー(7時から営業)で食料と飲み物を調達する。飲み物は500mlペットボトル2本しか買わなかったが、後から考えるともう少し多く持っていった方がよかったかもしれない。

城山の登山口まで、国道を通っていくと狩野川の対岸に渡ってしまうので、伊豆縦貫道(修善寺道路)の下を通って山の方に向かう。このあたりの集落を熊坂といって、昭和33年の狩野川台風の際にほとんどの家屋が流されてしまうという大きな被害のあった地域である。

この台風は「狩野川」台風と名づけられているくらいで、いま私の住んでいるあたりの被害が甚大であった。台風による大雨によって狩野川上流で土石流が起こり、その土砂が修善寺橋に堆積してダムのようになり大量の水がたまってしまった。本当のダムではないものだから水の重さに耐え切れずに橋が決壊して、大量の水と土砂が下流の集落を襲ったのであった。

いま、熊坂の集落を歩いていると、狩野川からはかなり距離があるし、そんなに水が来るのだろうかと思ってしまう。けれども、JAの敷地内にはいまも「狩野川台風浸水標識碑」が残り、1階の天井あたりまで浸水したことを示している。

話は伊豆とは関係ないが、十数年前に東北を旅行した際、「三陸沖地震でここまで津波が来た」という標示が残っていたことを覚えている。堤防などが整った現在にそんなことはありえないだろうと思っていたら、東日本大震災で再び同じことが起こったのである。こういう過去の事例はないがしろにするものではないと改めて思う。

道は次第に登り坂となり、左側に登山道の分かれる登山口に着いた。時刻はちょうど8時、出発して1時間である。WEBにはトイレのある駐車場があると書いてあったような気がするが、路肩に4、5台駐車スペースがあるくらいで、トイレなどは見当たらない。違う場所なのだろうか。

登山口にはたくさんの案内板があり、そのうちのひとつが「長嶋茂雄ランニングロード」の写真入り看板である。これによると、現役時代(というから50年前!)、大仁ホテルを拠点に冬のトレーニングをしていた長嶋さんが、狩野川河川敷から走り始めて城山に登っていたということである。ランニングできるくらいなら沼津アルプスのようなことはあるまい、とちょっと安心する。

竹林の中を上り始めた登山道は、すぐに自然林になる。足下はガレ場で、水の流れなくなった沢を遡っているようだ。浮いた岩を踏まないよう注意が必要だけれども、滑りやすいということはない。傾斜は、長嶋さんとはいえランニングしていたくらいだから、手を使わなければ登れないということはない。30分ほど登ると、右手樹間から垂直に切り立った岩盤が見えてくる。

2度ほどクライミングコースとの分岐があり、危ないからハイキング客は入らないように注意書きがある。その少し上で、葛城山・発端丈山へのコースと城山頂上へのコースが分かれる。その分岐から15分ほど、少しやせた岩尾根があり2つほど小ピークを越えると、城山頂上に達する。時刻は9時、登山口から1時間ちょうどであった。

ここから見る景色は雄大である。狩野川をはさんで通る太い道や、駿豆線の線路がおもちゃのようである。はるか遠く山並みの間からは、2020年東京オリンピックの自転車競技が行われる伊豆ベロドロームの屋根も見える。はるかな下界を望んで、登ってきてよかったと思った。ふと、「男組」という言葉が脳裏をよぎるのであった。

 


JA敷地内に建つ「狩野川台風浸水標識碑」。過去の災害の記憶は、ないがしろにしてはならないと思います。


いよいよ間近に迫ってきた城山。垂直の岸壁はクライミングコースになっており、この日もクライマーが登っていました。


城山頂上から望む狩野川流域。絶景です。

 

さて、ここまでの道は沼津アルプスとは雲泥の差である。とはいえ、あと2つの山が残っている。そして、周辺環境はというと、沼津アルプスと同様に車の音が近くに聞こえるのと、大砲の音がひっきりなしに聞こえるのはやや興ざめするものであった。

はじめは、小鳥の声に混ざって花火でも上げているのかと思っていたのだが、腹の底まで響くこの音は前にも聞いたことがある。何度も聞くうちに思い出した。富士演習場の自衛隊である。ここまで結構距離はあるものの、考えてみれば遮るものがないのである。

それを除けば、たいへん快適なハイキングコースであった。起伏のゆるやかな尾根道は沼津アルプスではほとんど見たことがなかったのに、ここではしばらく続く。加えて足下が腐葉土というのか、黒土が主体でほどよくクッションが利いて歩きやすい。このまま下山口まで続いてほしいと思う。

ほとんど高低差のないまま、20~30分歩くと向こうに車が止まっているのが見えた。林道と交差することから林道峠というらしい。林道をはさんで、向こう側に登山道が続いていて結構な傾斜である。おそらくこのあたりから、二つ目のピーク、葛城山に向かう登りになるものと思われた。

ひとしきり登ると、道はふたたび平らになってくねくねと曲がって続く。峰をひとつトラバースしているような湾曲した道である。すると出てきた標識が、「←外山 内山→」。よく分からないので、道なりに左の「外山」に進む。このあたりから、よく分からない標識が続く。どうやら管理上のものらしい。

城山からちょうど1時間歩いたくらいで、「葛城山背面登山口」の標識が出てきた。しかし、「急坂」と書いてあるのはちょっとびびるし、背面というくらいだから正面登山口もあるのだろうと思って先に進む。ところが、 発端丈山へのコースを分けてしばらく進んでも、それらしい登山口は出てこない。それどころか、道はどんどん下っていくのである。

10分ほど進んだところで、これは先ほどの道が正解らしいと思って引き返す。約20分のタイムロスで再び「葛城山背面登山口」へ。上から声が聞こえるので、前に登っているグループか、あるいはそこが頂上なのか。いずれにせよそれほど心配することはあるまいと思って登り始めた。

道自体はロープのない沼津アルプスという感じで、結構な傾斜である。ただ、足下はそれほどスリッピーではなく、きちんと足を乗せるところはある。しばらく登ると、左に平行移動するトラバース道になった。そういえば標識のところに、手書きでそんなことが書いてあった。上からの声は相変わらず間近に聞こえる。頂上までそれほどの距離はないようなのだが。

トラバース道が終わると、いよいよ最後の急登である。ここは結構な傾斜で、しかも鎖もロープもない。幸いに木が密集しているので、手がかりには困らないのと、ピンクテープや太いゴム輪が進路を指し示してくれる。上を見るとそれほど登らなくてもよさそうで、最後の大岩を越えると平らな道に出た。草むらを抜けると、下草に覆われて広くなっていて、展望が開けている。

ところが驚いたことに、そこにいる人達はパラグライダーを膨らませていたのである。ひとしきり急登をクリアしてきた後だから、リュックを下ろして水分補給したのだけれど、なんだか雰囲気が違う。だいたい、葛城山の頂上にはロープウェイが通じていて、ちゃんとした休憩所もあるはずだったのではないか。

とすると、ここはパラグライダーの基地で、一般登山客のいるところではないのではないかと思った。そうなると私は場違いな存在である。休んでいけないことはないのだろうが、早々にリュックを背負って逆側の道に進んだ。考えてみれば、背面登山口の下から聞こえていた声は、ここにいた人達の話し声だった訳である。

実際、すぐ先に本当の山頂園地があった。けれども、鐘の鳴る展望台では来る人来る人みんな鐘を鳴らすので落ち着かないし、頼朝像のある頂上にはクマンバチが何匹も飛び回っていて長居できない。結局、発端丈山方向の標識に沿ってしばらく下ったところで休憩したのだけれど、考えてみればパラグライダーの場所が一番の休憩適地だったように思う。

さて、後からWEBを調べてみると葛城山背面登山口は廃道のため立入禁止なのだそうだ。確かにロープがないので下るには難儀しそうな道だが、登る分にはそこまできつい道のようにも思えなかった。いずれにせよそういうことなので、通る方は自己責任でお願いします。

 


沼津アルプスではほとんどなかったゆるやかな尾根道。ずっとこういう道を歩いていたいと思う。


どうも写真ではうまり写らないのだが、葛城山背面登山道の急登。廃道ということのようです。


葛城山頂上と思ったらパラグライダー基地のようで。でもここの方がよっぽど山頂らしい。

 

葛城山の山頂付近には、あれやこれやで30分以上いた。背面登山口からパラグライダー基地に登って来たのが10時半、それから休憩適地を探して鐘の鳴る丘や頼朝像のある頂上を探し、結局下山道途中の切り株のいくつかある斜面でお昼休憩をとって11時10分過ぎに出発した。足場は斜めっていたけれども、切り株に腰掛けると結構具合がよかった。

葛城山の後は発端丈(ほったんじょう)山に向かう。登りに通った背面登山道は傾斜が急な上に鎖やロープがなく、下りにはとても使えそうにないので通常ルートに向かう。ただ、標示のとおりに進むとどんどん下ってしまうし、GPSを見ると先ほどまで歩いていた場所とはかなり離れている。まあ、下り始めてしまった以上、考えても仕方がない。

浮き岩が多く歩きにくい急坂をひとしきり下っていくと、下を通るコンクリ道路が見えてきた。そこまで下りてみると「かつらぎ山 山頂登山口 30分」と看板があった。このコンクリ道路を左(西)へ10分ほど歩くと、ようやく、いつか見た風景が見えてきた。ひとしきり登ると、やっと2時間ほど前に通った城山方面・発端丈山方面の分岐点に達した。

いま葛城山から下ってきた正規ルートで登ったとしたら、45~50分は確実にかかったと思われる。背面登山道はきつかったけれど30分かからないで登ったから、時間的にはかなり違ったことになる。

分岐点を抜けると、再び尾根を進む快適な道である。時折展望が開けて、沼津アルプス方面や駿河湾方面の景色を望むことができる。この日は雲が多くて富士山はよく見えなかったが、駿河湾や淡島を間近に見ることができた。

心配だったのは、葛城山には「発端丈山まで90分」と書いてあり、ここまで30分かかっているのであと60分で着くはずなのに、いつまでたっても道が登りにならなかったことである。峠にあたる益山寺分岐に着いたのは、1時間近く歩いた12時過ぎであった。さあ、ここから登りだ、と気合を入れる。

確かにこの日3回目の登りはきつく、ふくらはぎにも太ももにも疲れが残っていて痛む。今度の登りは階段である。丹沢の階段でよく使う方法、左足で10段、右足で10段ずつ登っていると、それほど長くは感じない内に肩にあたる部分まで来た。肩まで来ればこっちのものである。最後の一登りをクリアして、発端丈山に着いたのは12時20分。短いと思ったのも道理、最後の登りを20分ほどでクリアしてしまった。

発端丈山の頂上では、何組かの先客がリュックを置いているが、みなさん姿が見えない。清掃活動かな、ご苦労様と思ってみていると、どうやらそうではなくて、みなさん山菜採りをしているのであった。そういえば、震災前まで東北ではGWに春の山菜を売っていたものである。暖かい伊豆では、早くもこの時期に山菜が採れるのであった。

緑色の下草に寝転んで、しばしまどろむ。暑くもなく寒くもなく、風もない絶好のお天気である。このまま何時間かうとうとのんびりしたかったのだが、残念なことに、この時点で飲み物が100mlくらいしか残っていなかったのであった。のんびりしたいのが半分、水分を補給したいのが半分で、結局10分ほど休んで下山路に向かった。

下山路は、この日唯一といっていい沼津アルプス並みのコース。よく地図をみてみると、このルートはこの日唯一の北側の尾根だったから、そういうものなのかもしれない。これまで出てこなかったロープも何度か登場してやっぱり伊豆は油断ならないと思ったが、二つほど驚かされたことがあった。

一つは頂上からそれほど下りないうちの登山道脇の草むらに、でかい蛇がいたことである。模様からしてまむしではなくヤマカガシだったように思うが、まだ春先なのにあんなに大きな蛇がいるんだなあと思った。そういえば、いつか湯河原の幕山で、蛇が多いから気をつけるように言われたことを思い出した。

もう一つは、頂上から10分ほどしたところで、引き返してくる女性登山者とすれ違って、「三津(みと)への道は、これでいいんですか」と聞かれたことである。これでいいはずですよとお答えしたのだが、上の分岐点を見逃したということでそのまま登って行かれたのであった。その後、帰りのバスでお見かけしたので安心した。

下山口からバス通りに出たところがちょうどバス停だが、まだバスは来ないし自販機もないので一つ先の「農業会館前」のバス停まで歩く。けれども、そこにも自販機はなかった。

ちょうどバス待ちをしていたおばあさんから「ほったんじょうに行かれましたか?」と尋ねられて、バス待ちの間おしゃべりをした。おばあさんも、山頂でお祭りがあるので4回くらい登ったことがあるそうだ。でも、地元のおばあさんでも4回だから、山菜採りでもなければそんなに登らない山なんだろうな、と思った。

 


葛城山から発端丈山に向かう途中の稜線から、沼津アルプスの稜線を望むことができる。


発端丈山頂上。このグループの他にもいくつかリュックがあって、どうやら山菜採りをしていたようです。


三津方面への下り坂は、まさに沼津アルプス級。まあ、最後まで楽をするという訳にはいきません。

この日の経過
修善寺社宅 7:00
8:00 城山登山口 8:00
8:55 城山 9:05
10:05 葛城山裏登山口 10:05
10:30 葛城山 11:10
12:20 発端丈山 12:35
13:20 三津登山口
(GPS測定距離 13.3km)

[May 23, 2016]