053 天城山 [May 5, 2016]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

この春は修善寺に拠点が移ったこともあって、伊豆の山を歩いている。せっかくの機会だし、来年にはここにはいないだろうからである。

ということになると、せっかくだから百名山となってしまうのは、根がミーハーだからやむを得ないところである。残念なことにギリヤーク師匠の関西公演がキャンセルになってしまったので、5月3~5日のスケジュールがぽっかり空いた。3日4日はぐずつきそうだが、5日は晴れる予報である。行ってみることにした。

天城山というのは天城連峰の総称であって、天城山というピークはない。尾瀬の燧ヶ岳や那須の高原山、わが房総の鹿野山と同様である。普通は主峰である万三郎岳(ばんざぶろうだけ)を指す。万三郎岳から東側は万二郎岳を経て天城高原に続き、西側は八丁池を経て天城峠に至る。有名な浄蓮の滝は天城峠の北にある。

車がないと登山口までのアプローチが不便だが、縦走して逆側に出ることもできるメリットがある。バスの時間をチェックした結果、伊豆高原から入って八丁池に抜けるコースを計画した。万三郎岳の標高は1402m、沼津アルプス、伊豆三山と比べると1000m高い。もちろん、今年に入って最も高い山ということになる。

修善寺から伊東まで、朝一番のバスに乗って冷水峠という峠を越えていく。乗客は2、3人で、峠越えの時には私だけだった。伊東郵便局前で天城高原行のバスに乗り換えるが、こちらは満席で、終点まで小一時間、立たなければならなかった。GWの好天ともなれば、このくらい人が来ないとバス会社もやっていられないところである。

朝方には止んでいた風が、終点のゴルフ場まで来るとかなり強くなっている。このあたりですでに標高1000mであり、山の天気だからこうなるのも仕方がない。身支度して9時ちょうどに出発。予報では30度近い暑い日になるということだったが、風が強くて少し肌寒いくらいである。あまり薄手のシャツにしなくてよかったと思う。

バス停終点から反対側が登山道入口である。登山道の中は木々に遮られてあまり風が来ないのはよかったが、小さい虫がたくさん寄ってくるのは鬱陶しい。虫除けシールがあまり効かないのでよく見てみると、虫だけではなくてハエも交じっているようだった。道がえぐれているのは、雨の時に水が流れるからだろう。湿気が多いから、虫もハエも出て来てしまう。

左右に生えている木をみると、シャクナゲが多いようである。ただ、まだ時期が早いらしく、花は咲いていない。20分歩いて四つ辻という交差点になり、ここから万二郎岳に方向を変える。このあたりから、まだそれほど登っていないのに休む人達が目立つ。そういう人に限って大声でしゃべっている。満員のバスに加えて自家用車で駐車場も一杯だったから、普段歩く山とは違って人が多い。

まだ休む訳にはいかないと思いながら歩いていたら、気付かずにハイペースになっていたようで、残り300mのあたりで息が上がってしまった。振り向くと、結構な急坂を登ってきたようである。2、3分休んで息を整え、再び登りに挑む。10時15分、登山口から1時間と少しで万二郎岳に到着した。

頂上に出るとさらに風が強くなっているが、木々に囲まれているので吹きさらしということはない。二十人近くがくつろいでいる。空いている岩を確保して、元気一発ゼリーで栄養補給。ここまでは順調だが、1/25000図をみると、次の万三郎岳までいったん下ってからピークを越えなければならず、坂もきつそうだ。10分ほど休んで出発する。

そして、万二郎岳からの下りは1/25000図で見たとおりの急傾斜でいきなり難儀したのだが、鞍部から登り返したあたりで景色が開けて気持ちよかった。いま登ってきた万二郎岳と向かいの遠笠山をはさんで、ゴルフ場のフェアウェイが広がっている。その向こうには青いピラミッド型の大室山と、さらに相模灘を望むことができた。

 


天城高原ゴルフ場入口付近から、万二郎岳への登山道が始まる。


登山口から1時間少しで万二郎岳。さすがに天城山、人が多い。


時折、樹間から風景が開ける。左が遠笠山、右がいま登った万二郎岳。中央ゴルフ場。標高が1000mあるので、飛距離が出そうだ。

 

万二郎岳の頂上で、1/25000図を再確認する。標高差で5~60m下ると、一転して登り坂になり、頂上が平坦になっている1325のピークに達する。そこから再び5~60m下って、万三郎岳まで標高差150mほどのだらだらとした坂を登り返すはずである。ところが実際は、すごい急傾斜だと思ったのは万二郎直下の下りだけで、あとは緩やかな尾根道のように感じた。

ただ、ピークは一つだけではなく、1325の後も小さなピークを2つ3つ越える。その一方で、ほぼ平坦な尾根道も登場する。こういう道を歩いていると、山に来てよかったと本当に思う。ただ悲しいところは、あまり長くは続かないということである。伊豆の山はこの春3回目になるが、これまでの中では随一と言っていい尾根道でありました。

景色を楽しみながら歩いているとそれほど苦しむこともなく最後の登りもクリアして、1406mの万三郎岳頂上に到着した。時刻は11時35分、登山口~万二郎岳とほぼ同じ1時間少しで到着することができた。考えてみれば、登山口ですでに1000mあるのだから、標高差で1時間、距離で1時間、合わせて2時間で歩いて不思議ではないのである。

それにしても、1/25000図ではすぐそこ、10kmも離れていないところに海があるのに、ここは標高1400mなのである。本当に急に山が立ち上がっているということである。だから、トンネルができるより前には、陸路で天城山を越えるのはなかなか大変なことであった。「天城越え」という歌ができるくらいである。

また、1400mの標高があるということは、麓との温度差が10度近くあるということである。海からの暖かい湿った風が山を吹き上げることにより急激に冷やされるから、このあたりは雨が多い地域とされる。土地の人に聞くと、特に夏場は気候が急変するので注意が必要であり、ハンキング気分で軽装で歩くと降られたりして大変だということである。

万三郎岳の頂上では、二、三十人がすでに休んでいた。ちょうどお昼時なので、みなさん思い思いにお昼ごはんをとられている。EPIガスを持ってきている人もいたが、風が強いので大変そうだった。私も、夕張メロンクリームパンと午後の紅茶でお昼にする。そうしている間にも次々に登山客が頂上に到着するので、15分ほど休んで出発することにした。

万三郎岳を下りたあたりに国有林の看板が立ち、ここから2時間後の八丁池までずっとブナの原生林が続く。ブナという木は水を貯める機能があり、自然環境保護のためにはたいへん有意義な木なのであるが、ごつごつした根が地表に突き出てくるのでたいへん歩きにくい。また、幹や枝も思い思いの方向に伸びるので、目の前に立ちふさがるし道もくねくね曲がる。

いったん下ってまた登るあたりが、この日一番つらかったところである。1/25000図には名前が載っていないが、小岳(こたけ)というピークで、標識が立っていた。登って下ってを続けて、万三郎まで着けばあとはたいしたことはないだろうと思っていたところの登りなので、疲れが足にきた。思わず、「天城越え」のメロディーが頭をよぎった。

小岳に着いた12時30分から後は、登りで苦労する場所はなかった。とはいえ小岳から戸塚峠への1.2kmに35分かかると小岳の標識に書いてあったとおり、きつい下り坂だった。

 


気持ちいい尾根道が多いのは、伊豆では随一でしょう。さすが百名山。


万二郎岳から1時間少しで万三郎岳。たまたま写ってませんが人が多く、みなさんお昼休みをとっています。


万三郎岳から西は、ブナの原生林が2時間以上続く。ここから目立って人が少なくなる。

 

小岳から戸塚峠への急傾斜は、1/25000図でも等高線の幅がきわめて狭いので見当がつく。そして、国有林ということもあって標示が少ないので、何度か道を間違いそうになった。ゴルフ場から万三郎岳まではほとんどそういう箇所はなかったので、えらい違いである。そして、万三郎岳を過ぎてから、人の姿が急に減って、すれ違うのも数人くらいになった。

あたりを見回すと、ほとんどはブナである。幹が灰色で曲がりくねって、根元の方はコケが生えている。しかし、時々茶色のまっすぐな幹が混じっている。最初は鹿に表皮を食べられたブナかと思っていたのだが、それにしては鹿ではとどかないほど上まで茶色である。帰ってから調べてみるとヒメシャラであったようだ。家の庭にもあるのだが、あんなに大きくなるとは驚いた。

万三郎岳を12時前に出て、小岳に12時半、戸塚峠に1時10分過ぎに通過した。かれこれ1時間以上もブナ林の中を歩いているが、いつ果てるともなくブナが続く。丹沢あたりだとブナ林は重要で貴重だという感覚になるが、ここまでブナが続くと当り前のような風景である。戸塚峠からはほとんど平坦になるが、道は等高線に沿ってうねって続いている。

時折、空に向かって直線的に伸びている杉の木を見ると、なんだかほっとする。確かに、材木として使うなら杉の方がよさそうだと思う。しかし花粉症のもとになるからなあ。ほとんど平坦とはいえ1時間半も歩き続けたので、次のチェックポイントである白田峠で一息つく。ここにはベンチが置かれていて、休むのに具合がいい。

万二郎岳の頂上あたりではかなり強い風が吹いていたのだが、ここらあたりまで来るとほとんど風は感じられない。風が弱まったのかもしれないし、頂上からかなり下ってきたので風が遮られているのかもしれない。この日は水を1.5リットルと午後の紅茶500mlを持ってきたので、水はまだ十分にある。

さて、白田峠を出たのは1時50分である。八丁池まで45分と書いてあったから、2時半頃には着くだろう。さて問題は、八丁池口発のバスの時間が3時40分ということである。八丁池から八丁池口までの時間と距離が分からなかったが、道中の地図をみると50分と書いてある。ちょっと急がないといけないかもしれない。

白田峠から先も、引き続きブナ林である。一度、行く手にガレ場とその先にピークが見えて、方角的にはこれを越えていくのかなと一瞬思ったのだけれど、道はピークを巻いて平坦に続いていた。ちょっと疲れていたのでほっとした。ときどき、トラバースする道が細く斜めっているところがあるので用心が必要だが、それを過ぎると道は徐々に下って行く。

時間通り2時半過ぎに八丁池に到着。静かだし、とてもきれいだ。休んでいる人は数人しかいない。結構大きい(周囲が約800m=八丁あるから八丁池と言うともいう)湖だが、売店とかボートがないのは何よりである(昔はあったらしい)。後から気づいたのだが、八丁池口まではバス専用道で、そこから3kmは車両通行止めなので、こんなに静かに保たれているのである。

湖畔に立てられている案内板を読む。この八丁池は昔、天城山のカルデラ湖だと思われていたが、最近になって、地殻変動により生じた谷の奥の窪みに水がたまって今日の姿となったということが分かったそうだ。言われてみると、カルデラ湖とはちょっと立地的に違うように思える。それにしても、これだけ水がたまるということは雨が多く湧き水も豊富だということであろう。

さて、風も止んだしいい天気だし、できれば私も草の上に寝っ転がってゆっくりしたかったのだが、バス停までの時間が読めないのでくやしいけれど先に進む。湖畔を右に進んで道なりに登って行くと、トイレが置かれている。そこからは道が太くなって、いざという時は車が通れるようになっているのだが、なんと八丁池口まで3km、1時間と書いてある。

本当に1時間かかったら、バスに間に合わない。最終バスなので、乗り過ごすと麓まで車道を歩いていかなければならず、それはちょっとつらい。下り坂の3kmで車道規格の道なら1時間はかかるまいと思いつつも、やや急ぎ足となる。立ててある地図を見ると、途中で登山道をショートカットできるところがある。そこを過ぎると、バス時間を目処に下りてきているらしい何組かが前後に見える。大丈夫、間に合いそうだ。

八丁池口のバス停に着いたのは3時20分で、八丁池から30分で着いた。バスの時間まで、非常用に残しておいたチョコチップメロンパンを食べる。できればコーラがあるとうれしかったのだが、バス停にあったのはトイレだけで、売店や自動販売機はなかった。バス待ちの人は最終的には十数人になったが、半分は麓にある駐車場のところで下りた。

バスは天城トンネル、しろばんばの里湯ヶ島を抜けて、終点の修善寺まで1時間ゆるゆると進むのでした。

 


小岳から先の急傾斜で、この日はじめてのロープ場。他に梯子も何ヵ所かありました。


ようやく急傾斜を下りきって振り返る。登るのは大変そうだ。


延々とブナ林を歩いて、八丁池に到着。車道はバス専用なので、人が少なくいい雰囲気。ここからバス停まで、さらに30分ほど下る。

 

この日の経過
天城高原ゴルフ場 9:00
10:15 万二郎岳 10:25
11:35 万三郎岳 11:50
12:25 小岳 12:30
13:10 戸塚峠 13:10
13:40 白田峠 13:50
14:35 八丁池 14:45
15:15 八丁池口
(GPS測定距離 12.4km)

[Jun 20, 2016]