054 高原山(釈迦ヶ岳) [Nov 13, 2016]


この図表はカシミール3Dにより作成しています。

久しぶりの山は、2年前に登ったのに霧の中で何も見えなかった高原山である。紅葉狩りを兼ねて奥さんも一緒なので、あまりきつくない山ということで選んだつもりであった。行く前には、2時間半で登って2時間で下りて、鬼怒川に回ってかご岩温泉に入って、まつたかでゆばを買って帰ろうと話していたのである。

なんといっても、前回1539mの八海山神社まで登っている。釈迦ヶ岳は1794mでプラス250m、最後の頂上は急傾斜のようだが、それ以外は稜線伝いの歩きである。1/25000図を見ると、八海山神社から釈迦ヶ岳まで、距離的には丹沢の塔ノ岳~丹沢山と同じか短いくらいである。起伏のある稜線だから、あのイメージで考えていたのである。

家を午前5時に出て、柏から外環・東北道経由矢板ICまで。今回も、オリオン座が西の空に見え、冬の大三角形もくっきり現れていた。前回もそうだったのに、途中から雨になったのだ。矢板で下りて一般道を北へ。県民の森の標識を折れてしまい引き返す。前回もここで間違った。正解は矢板カントリーを目指して泉交差点を左折である。道がだいぶ新しくなっていた。

八方ヶ原に至る十数kmの登り坂では他の車はまったく見かけなかったのに、大間々の駐車場に着いてみるともう二十台以上が駐まっていて、残りあとわずかだった。支度して出発したのは8時半。これは予定どおりで、釈迦ヶ岳に11時、休憩して帰ってきて午後2時という計画だったのだ。

遊歩道をしばらく進み、登山道に入って傾斜のある道を登って行く。晴れているので、上が見えるのは安心である。前回は雨が降ってきて風が強いのに、歩き出すと暑いものだから、着たり脱いだり忙しかったが、今回はそうしたこともない。最初の急登をクリアし、眺めが開けた稜線に出て、あとはゆるやかな熊笹の道を登って行くと八海山神社が見えてきた。

今回はここまで途中休憩なしで、八海山神社到着は9時30分。前回より5分早かった。南への眺めが開けて、大パノラマが眼下に広がる。目前に見えるゴルフコースは矢板カントリークラブ。ここは35年前に来たことがある。600ヤードの超ロングホールがあって、第一打を200ヤード飛ばさないとOBになってしまうのだ。

先に登っていた地元のおじいさんの言うことには、日光連山の奥に見える男体山から左に15度のあたりに富士山が見えることもあるそうだ。この日は気温が上がりつつあるようで富士山は雲の中だったが、それでも広大な展望を十分楽しむことができた。

ここまでは全く問題はなく、しかも最終目標である釈迦ヶ岳も目の前にある。あと1時間もあれば着きそうだと思ってさらに油断してしまった。実際、あのくらいの距離感覚だと、それほど時間はかからないはずなのだ。ところが実際は直径と円周みたいなもので、登山道は向かって右の尾根からぐるっと回り込むのであった。

 


大間々駐車場からスタート。今回は快晴無風、絶好のコンディション。


見晴コースから八海山神社に向かう。強風でもない限り、こちらのコースの方が気持ちがいい。


前回は霧で何も見えなかったけれど、今回は抜群の眺め。間近に釈迦ヶ岳と、ちらっと鶏頂山。すごく近く見えたのに遠かった。

 

八海山神社にお参りし、石の上に座って少しゆっくりしてから出発。ここの標高が1539m。大間々が1278m、釈迦ヶ岳が1794mだから、標高差ですでに半分登っているということである。

さて、前回触れた大失敗というのは、水をあまり持ってきていないということであった。もちろん登山カードは作ってあり、そこには水1リットルと書いてあるのに(しかも奥さんと二人で確認しているのに)、500mlペットボトルとテルモスにお湯が400mlあるから大丈夫と思ってしまったのであった。標高差で半分登ったのだから、あとはそれほど水はいらないだろうと思って、八海山神社で半分近く飲んでしまう。

他にも、いつもは忘れずに持ってくる薬品類も目薬も、クエン酸もブドウ糖も持ってきていない。元気一発ゼリーすら用意していない。でも、最大の問題は水であった。しかも、車の中にはペットボトルがもう1本置いてあるのである。ただ、そういうことに気が付いたのはこの後の話で、八海山神社の時点では全く問題とは思っていなかった。

10分ほどなだらかな登りで、矢板市最高点に到着。このピークには名前が付いておらず、もう一つ先のピークには剣ヶ峰という立派な名前が付いているのに、高さは矢板市最高点の方が50m高い。ただし、林の中で展望は全くない。

まずいと思ったのは、この最高点ピークからの下りである。最初はこれは下山道で道を間違えているのではないかと思ったくらい、際限なく下る。しかし、方角を確認すると間違いない。とすると帰りはここを登り返さないといけないということである。登ったらあとは下るだけだと思っていたのは、大間違いであった。

ようやく下り終えて、剣ヶ峰下の三叉路に出る。2、3分で剣ヶ峰に登るけれども、ここも展望は開けていない。ただ、三叉路を過ぎたあたりで釈迦ヶ岳が見えて、八海山神社で見たよりも遠くなっているような気がした。剣ヶ峰通過が10時10分、これは予定どおりである。

計画とはおおいに違ったのは、ここからである。1/25000図では小さなコブが一つあるくらいで、あとはなだらかな稜線のはずなのに、たいていは起伏のある道で、平らになったかと思うと片側は崖のヤセ尾根で神経を使う。しだいに、いつもなら登りだとペースアップして先に行ってしまう奥さんが遅れ気味となる。聞いてみると「おなかがへった」という。

時刻は普段の日はお昼にしている11時。まだ釈迦ヶ岳には大分ありそうなので、少し広くなっているところで昼食休憩にする。何の気なしに見つけた場所だったが、帰ってからGPSに落としてみると1543mピークのあたりだった。ということは、剣ヶ峰と釈迦ヶ岳の中間地点であり、まだまだ先は長かったのである。

計画していた登り時間の2時間半は経過してしまったものの、あと30分もあれば登れるだろうとその時は思っていたのだが、それも大きな間違いであった。ただ、エネルギーを補給した奥さんは急に元気になり、いつものように登りでは私よりかなり先を飛ばしていく。急傾斜の坂をしばらく登り、いったん平らになる。しかし、釈迦ヶ岳はかえって遠ざかっているように見える。

私の方はこのあたりから水不足が気になり出した。こうなると、天気がいいだけにただでさえ発汗する。その上帰りにこれだけ登りがあるかと思うと、残っている水で足りるかどうか心配になった。テルモスのお湯も、お昼休憩で半分飲んでしまった。

釈迦ヶ岳への最後の急斜面になり、固定ロープの引かれている場所もある。この頃から下りの登山者と頻繁にすれ違うようになり、待ち合わせるケースも多くなる。結構な人数が登っているようだが、駐車場がほぼ満杯であったのだから当り前といえば当り前である。

この登りは、北側の尾根ということもあり、道の左右にはほんのり雪が残り、登山道は霜でぬかるんですべりやすくなっていた。お昼を食べた1500mあたりでは、木の根に腰かけることもできたくらいなのに、1600m越えたあたりから手を付くと泥だらけになる。途中、鶏頂山への分岐があり、そこから最後の最後、もう一段登る。

なんとか急傾斜をクリアして、釈迦ヶ岳に着いたのは12時15分。奥さんよりも10分ほど遅れたようである。お昼休みの1543mピークから1時間もかかってしまった。大間々駐車場からは休憩を入れたとはいえ3時間45分。2時間半で計画していたのだから、準備不足もはなはだしいということである。

 


八海山神社で一休み。後方は矢板市最高点ピーク(だと思う)。


矢板市最高点の無名ピーク。三角点の剣ヶ峰よりも高く、ここからの下りで早くも弱気になる。


剣ヶ峰のあたりから撮った釈迦ヶ岳。ちっとも近づかないのは、尾根伝いに回り込んでいるため。

 

釈迦ヶ岳頂上はまさに360度の大パノラマで、苦しんで登ってきただけのことはあった。よく知られているようにこの頂上には釈迦如来の大仏が置かれていて、八海山神社、三角点とともに頂上の3点セットとなっている。熊笹の中に向こう側からの道も合流していて、おじさん達が話しているのを聞いたところでは東荒川ダムの方から登ってくる道のようだった。

鶏頂山はもちろん、日光連山や男体山がさらに近くに見える。一方で、八海山神社では近くに見えていた矢板カントリーは遠くなっていて、なるほどかなり歩いてきたんだなあと思った。間近に見える山々は頂上が少しだけ白くなっているだけだが、その向こう、おそらく尾瀬と思われるあたりは、山全体が白く雪をかぶっていた。

ということで少しは景色を楽しむことはできたのだけれど、相当バテていたのと、南側は逆光で見えづらかったので、ろくに写真も撮らなかったのはもったいないことであった。帰り時間と水のことが心配で、半分残していたお昼のパンを食べて、12時35分そそくさと出発する。

ここまででテルモスのお湯は飲みきってしまい、ペットボトルの水は200mlくらいしか残っていない。これであのきつい登り返しをクリアできるだろうか。なんで今回に限って予備の水を持たなかったのだろう。お遍路の時でさえ、手つかずのペットボトルを1本、必ず持って歩いていたというのに。

おまけに、治療中の歯が痛くなり、その痛みが移って目も痛い。こういう時に限って、目薬も痛み止めも置いてきてしまっている。奥さんにそう言うと、「ここでロキソニン飲んだら、眠くなるよ」と指摘されてしまった。確かにそうかもしれない。ともかく、あるものでやって行くしかない。車に戻れば、水はあるのだから。

釈迦ヶ岳からの急傾斜をなんとか下り切ったが、その頃から全くペースが上がらなくなった。お昼を食べた1543mピークに戻ってきたのが午後1時45分。普段は下りは2/3くらいの時間で飛ばせるのに、むしろ下りの方が時間がかかっている。これは尋常でないバテ方であった。ここから後は、完全に奥さんのペースについていけず、離れて歩くことになってしまった。

1543mピークでは奥さんの水を分けてもらう。もう自分の水は100mlくらいしか残っていない。お遍路では500mlを何度も一気飲みしていたことと比べると、天の地ほど違いがある。あと2時間以上かかるのは間違いないのに、これだけの水でやっていけるのだろうか。

下って登る大きな登り返しが、ここから3つくらいある。飲んだらなくなってしまうので、1つ大きな登りをこなすごとに1口だけ口に含むようにする。最初は舌が乾いてきて、それが喉に達して、最後の方は喉の奥の方まで乾燥しきってしまった。「のどが渇く」というのは本当に喉が乾くのだなあと変なところで感心する。

帰ってからGPSのデータを見ると、釈迦ヶ岳から1543mピークまで65分、1543mピークからさらに70分かかって八海山神社だから、帰りの計画時間2時間では八海山神社にさえ着けないという状況であった。奥さんは八海山神社で待っていて、「あんまり来ないから、車に戻って水持ってきてあげようかと思ったよ」と言われてしまった。

ただ、奥さんによると、釈迦ヶ岳に登っていた人達はみんな「思ったより遠かった」と言っていたということだから、地図で見るよりタフなコースであることは確かなようである。もう日が傾いているので、早々に下り始める。

帰りは林間コースを選んだのだけれど、行きと同じ見晴コースの方が良かったようだ。少なくとも、最後の数百mは砂利道の方が早く歩けたと思う。最後は脱水症状さえ心配したくらいだったが、何とかうがい1杯くらいの水を残して大間々駐車場へ。車の中に置いてあったペットボトルでようやく水分を補給したのであった。

駐車場に着いたのは4時10分過ぎ。朝はほぼ満杯だった駐車場も残っていたのは3台だけ。それも帰りの準備をしていたので、麓に着いた最後のグループだったようである。

山の4時過ぎはもう暗くなりかけていて、これ以上遅くなったらヘッデンが必要になるほどであった。今日のコースだと、もう少し早く出なければいけないということである(実際、朝の駐車場は我々より早い人達ばかりだった訳だし)。それよりも、どんなに楽そうに見えても、山で油断してはいけないということが改めて身にしみた一日であった。

すでにこの時間「山の駅たかはら」も閉まっていて、追加の水を補給できたのは十数km下った県道沿いのローソンだった。楽しみにしていた日帰り温泉も行けず、ゆば直売も閉まっていて、日光市内のココスで夕飯を食べて高速で帰った。ただ、疲れていてお腹も空いていたので、ココスのハンバーグはたいへんおいしかった。

 


釈迦ヶ岳直下は、かなりの急傾斜が続く。1/25000図で見当はついていたのだが。


釈迦ヶ岳頂上の、三角点、八海山神社、釈迦如来像の3点セット。周囲は360度のパノラマですが、バテすぎていい写真が撮れませんでした。


迦ヶ岳の登山道途中からみた、剣ヶ峰と矢板市最高点ピーク。ここを回って戻らなければならない。しかも水不足。

 

この日の経過
大間々駐車場 8:30
9:30 八海山神社 9:40
10:10 剣ヶ峰 10:15
11:00 1543p(昼食) 11:15
12:15 釈迦ヶ岳 12:35
13:45 1543p 13:50
15:05 八海山神社 15:05
16:10 駐車場
(GPS測定距離 10.3km)

[Jun 20, 2016]