001 二百十日 [Aug 26, 2005]

今朝未明、台風11号がちょうどわが家の上空を通過した。幸いに、いまのところ大きな被害が出ていないのは何よりであるが、そういえばそろそろ二百十日である。

いまは9月1日の防災の日というと、関東大震災が起こった日ということで地震を想定して防災意識を高めようという意味合いが強くなっているが、以前は地震予知などそれほど現実的でなかったし、かたや台風は毎年来るものだから、もっと台風を想定したものだったように思う。二百十日(立春から210日目、大体9月1日)、二百二十日(同220日目、大体9月11日)は昔から台風の来る頃合として用心されてきたからである。

二百十日、二百二十日とも旧暦(太陽太陰暦)でいうところの雑節で、旧暦は農業と密接なつながりがあるから、現在よりもずっと、台風の脅威というものが切実に感じられていたことは想像に難くない。私の子供の頃ちょうど「明治百年」であったから、そうした空気はまだ色濃く残っていた。くじら尺(尺貫法のものさし)もあったし、干支も今よりかなり身近なものだったように思う。

話を戻すと、台風が来そうだという時には、「雨戸を補強してください」とか「飛びそうなもの(植木鉢など)は軒下に」とか、今ではあまり耳にしないようなことがよく言われていた。その中でも特に覚えているのが、「ろうそくを用意してください」ということである。昔はなにかというとすぐに停電した。台風が直撃すると、ほぼ間違いなく停電した。そして台風が過ぎ去るまで復旧工事はできないので、そのまま停電が続くことが多かった。

だから、ろうそくというのはその頃は必需品であった。停電になるととりあえず懐中電灯をつけてろうそくを探し、ろうそくに火を灯して何時間が過ごすことがしばしばだった。電気が来ていないのだから、当然TVは見ることができない。だが、ラジオをずっとつけていたという記憶もない。きっと、がたがた鳴る雨戸や吹き付ける風雨の音を聞きながら、早く行ってしまわないかなあ、とぼんやりしていたのだろう。

いつの間にか停電することがほとんどなくなり、仮に停電してもすぐに復旧するのが当たり前になった。ろうそくなど、誕生日にケーキの上に刺す以外の用途で使ったことは二十年以上ない。電気どころかエアコンが効かないだけで困ってしまう今日この頃であるが、そんな昔のことをちょっと思い出した台風であった。

[Aug 26, 2005]