033 気になるCM [Mar 6, 2013]

アメフトやボクシングを除いては、あまりTVを見ない。WOWOWは基本的に番宣以外のCMは入らないが、G+やGAORAは有料放送なので一般的なCMはそれほど入らないものの全くない訳ではない。G+などは現地映像のCMはこまめに消す割に、自分のところの番宣はうるさいくらいに入れる。読売グループの体質的なものだろうか。

さて、今回の本題はそういうことではなく、ごくたまにTVを見ているときに出てくる気になるCMについてである。

かつてバブル末期に、「武富士ダンサーズ」というCMがあった。サラ金業者の最大手である武富士が、業務内容の説明もセールスも全くせずに、ただひたすらレオタード姿のダンサー20名ほどがダンスエクササイズをしているのを流すというものである。これが、まさに四六時中といっていいほどTVに流れたのであるが、非常にうさんくさかった。

企業イメージ向上のためのCM製作というのはあっていいと思うし、視聴者の興味を引くアイテムを提供して企業名を浸透させるというのもありうる作戦である。しかし、その当時、全国的に駅前や大通りにサラ金ビルが進出し、サラ金、特に武富士の名前を知らない者はいなかったのである。

おそらくこのCMは、ワンマンオーナーとして有名な同社の社長が主導して作ったものと思われた。受け手不在の、オーナーの趣味である。その後どうなったかはご存じのとおり。一つ補足しておくと、利息制限法と出資法の最高利息に差があり、その間の利息を取っていいかどうかはグレーゾーンであるというのは、当時すでに知られていた。青天の霹靂で利息返還訴訟が出てきた訳ではない。

その後かなり時間が経過して、私のセンサーに響いてきたのは「安愚楽牧場」である。最初は、牧場で牛が放牧されている映像や、結果としてステーキになった(涙)映像など、ごくありふれたものだったが、徐々に変質して、最後は着ぐるみの牛が温泉に入ったりゴルフをしたりするイメージCMとなった。これも、非常にうさんくさかった。

なぜうさんくささを感じたのかというと、牧場の製品を利用してほしい、おいしいのでぜひお買い上げ下さいというのであれば前段のありふれたCMで十分だし、そもそもおいしくて安全なお肉を、できるだけ安価かつコンスタントに提供することが最大の宣伝のはずである。それなのに、なぜわざわざ多額の宣伝費用をかける必要があるのか。

それは、この宣伝の目的が、牧場のおいしい肉をより多くの人に知ってもらいたいという意図から発したものではなく、預託金制度といって、牧場におカネを投資してもらいそれに利息を付けますという、いってみれば投資の勧誘、おカネ集めの宣伝だったからなのである。

安愚楽牧場の直接の破たん理由は大震災によるものだが、牛をかくれみのにした投資勧誘が事業の実態だったことからして、遅かれ早かれ問題となったことは間違いない。ちなみに、このCMを見るたびに、「またインチキ牧場のCMだ」と奥さんに言っていた。

それではごく最近にセンサーに引っかかってきたのはどのCMかというと、長くなったので続きは次回に。

 

そのCMとは、「家庭教師のトライ」である。

このCMはしばらく前から古い映画やアニメのアテレコで宣伝していたのだが、このところ「アルプスの少女ハイジ」に特化している。アニメの中にセールスマンのような人物を登場させたり、おじいさんに変なセリフを言わせたり、やりたい放題である。著作権者はおカネをもらえば作品に何をされてもいいのだろうかと思うが、なにしろ品がなさすぎるのである。

同じアテレコでも、auの「巨人の星」はそれほど下品だとは思わない。その違いがどこから出てくるのか考えると、やはりトライには武富士や安愚楽牧場とも共通するうさんくささがあるからだと気がついた。その共通さは言ってみれば、「商品の優れたところを宣伝するのではなく、それ以外に何か目論見がある」という点に集約される。

教育産業、受験産業が産業として成り立つのか、まっとうなのかという議論はここでは置く。相対的に上位のポジションをおカネを出してでも得たいというニーズがあり、それに応えるだけのノウハウが提供されるのであれば、市場経済としてそれ以上どうこうは言えない。あとは個人個人の思想信条の世界である。

ここで、教育産業、受験産業に求められるニーズ、つまり、「他の受験生よりも相対的に優位でありたい」という要請に応えるサービスについて考えると、例えばそれは、「画期的な教育プログラム」なり、「優れたノウハウを持つ教師」といったものであろう。そしてそれは、安価で多くの人に提供されるものであってはならない。なぜかというと、ニーズそのものが「相対的な優位」にあるからである。

例えばその会社が画期的な教育プログラムを持っていて、そのプログラムによりテストの得点が10点上がるとする。ところがこの教育プログラムをすべての受験生が習得したとすれば、平均点が10点上がるだけのことであって、受験生がその教育プログラムを習得するメリットはあまりない。習得しないことによるデメリットはあるかもしれないが。

その受験生にとっては、そうした優れた教育プログラムがあるならば、できるだけ少ない人数、可能ならば自分だけが習得することで最大のメリットが得られる。したがって、教育産業、受験産業の仁義としては、「単価を高くとってできるだけ少ない人数を対象とする」のがまっとうなやり方である。(これが産業のあり方としてまっとうかどうかの議論とは別である。さきに前提を置いたとおり)

それならば、「格安で優れた教育プログラムを提供します」と宣伝しているこの会社の目的は何なのか。少なくとも、自分たちが教えた生徒たちが優れたパフォーマンスを残すことではないのは確かである。察するところ、分母(生徒)の数を増やして、有名私立や有名大学の合格者数を多く見せよう(割合は減るが絶対数は増える)ということなのは見当がつく。

最近の少子化傾向と軌を一にして、かつては集合学習(塾)が中心であった受験産業は、個別学習(家庭教師ないし個人指導)に中心が移りつつある。一方で、塾の教師や家庭教師の時給は、外食産業の時給と大差なくなっている。時給に差がないということは、「優れたノウハウを持つ教師」に当たる確率も低いということである。

言葉で述べようとするとなかなかしっくりこないのだが、私が「トライ」に感じるうさんくささの源はそういうところにある。他にも、「あなたも1億円貯められる。○○投資銀行」みたいなCMも見かけるが、ああいうのは騙される方も騙される方なのでどうぞご自由にという感じ。ちなみに、100円ずつ積み立てたとしてもいつかは1億円になる。

[Mar 6 ,2013]