040 マニュアルとサービス、どちらが目的?~JR東日本の車内アナウンス [May 16 ,2014]

最近通勤していて思うことは、JRの車内放送が煩わしいくらいにしつこいことである。

ほとんど毎駅ごとに、「本日は具合の悪いお客様の救護を行ったため、ただいま5分ほど遅れて運転しております」「前の電車でドアに荷物がはさまったため、現在△△駅に停車中です。この電車はホームが空き次第、運転を再開いたします」そして最後は、「お急ぎのところご迷惑をおかけいたしまして、大変申し訳ございません」としめくくる。

毎駅こんな放送をするものだから、長く乗っている人は乗っている間ずっと同じことを聞かされる。朝の通勤電車で10分未満の遅れなど、いちいち説明されるほどのことではない。救護活動だのドア挟まりだの、ときどき非常停止装置を押す奴もいるのだが、理由が分かったからといってどうすればいいのか。まして途中から乗った人は、遅れていることなど説明されなければ分からないのである。

いつも同じ口調なのにアナウンスしている車掌は別人だから、おそらくそうするようにマニュアルに載っているのだろう。1時間近く乗っている北総線、京成線、都営浅草線ではそんなことをいちいち放送していないから、これはJR東日本だけのマニュアルだと思われる。しゃべっている本人はマニュアルに決められていることなのでしない訳にはいかない。乗客がいらつくだけである。

マニュアルというものはもともとサービスの質を均一化させるために作られたもので、高度成長期以降アメリカの経営学がもてはやされる中で一般的になった。それ以前にはどこの企業も組合の力が強くて、労働強化だの何だのでマニュアルはそんなに細かくなかったし、あったとしても執務上の参考という位置づけであった。それが今日では、理屈はどうあれ、マニュアルを守らない奴はけしからんという風潮になってしまった。

だから、日本の企業は上から下まで、みんなマニュアル漬けである。最初はサービス向上が目的でマニュアルは手段だったのに、いつの間にかマニュアルを守ることが目的でサービスはどうでもいいことになってしまった。おそらく自分の頭で考える人は、マニュアルを守れない不良社員とスポイルされてしまったのだろう。

小田嶋隆氏言うところの、「無能であることをシステム化」しているということである。こういう組織、社会がこのまま持つのかどうか、数年後に定年を迎える私が口出しすべきではないのかもしれない。あるいは、車内放送がしつこいことを怒っても仕方ないのかもしれない。ただ現実に、同じJR東日本がこんなことをしている。いずれも、おそらくマニュアルには載っていない。

先日、平日の昼間に浅草橋駅で電車を待っていると、5分待ち10分待っても、来るはずの電車が来ない。ホームは乗客でいっぱいなのに、何の構内放送もない。ようやく電車が来て昼間なのに満員のぎゅうぎゅう詰めである。何とか乗ることができて車内放送の言うことには、「ただいま東京駅で人身事故があり、各駅に電車が止まっているため遅れております」なのだそうだ。

東京駅で事故があって山手線・京浜東北線が止まるのはともかく、東京を通らない総武線が止まるのもよく分からないが、それはまあ仕方ないとして、なぜ、事故が起こった第一報を浅草橋駅の構内放送で流さないのかと思う。総武線が動かなければ、すぐ地下を通っている都営浅草線を通ってほとんどどこへでも行けるのである。

それを言うと、振替乗車票を出さなければならないからだろうか。あるいは、いま乗った客がすぐに出ようとすると降車処理があって(いまはほとんどsuicaだから)手間がかかるからだろうか。だとすれば、交通機関が目先の少々のカネとか手間のために、乗客へのサービスの質を落として平気だということである。

その前にもこんなことがあった。休日の奥多摩からの帰りホリデー快速奥多摩号に乗っていた時のことである。この電車は東京方面まで直通なのが便利なのでよく使うが、拝島駅を出発して次の瞬間、「中央線で人身事故のため、この電車は立川止まりとなります。ご迷惑をおかけして大変申し訳ありません」という車内放送である。

タイミングからみて、この放送は発車する前に入ってきた情報を、発車してから放送したことは間違いない。まして、拝島駅では武蔵五日市からのホリデー快速と連結するため、5分以上の停車時間があるのである。そして、都心方向に向かう乗客にとって、拝島ならば同じ駅から出ている西武線で都心に向かえるが、立川まで運ばれても中央線が止まっていてはその先に進めないのである。

おそらくマニュアルでは、停車中のアナウンスは駅員の仕事で、車掌のアナウンスは発車してからと決まっているのであろう。あるいは、西武線に乗せずにJRに運賃を落としてもらえば売上が上がるということかもしれない。いずれにしても、乗客が不便だろうとか、約束の時間に遅れてしまうだろうとか、そういう観点が抜け落ちていることは確かである。

大事なのはサービスの質を保つないし上げることであって、マニュアルを守ることではない。自分の頭でそう考える人が、いよいよ少なくなっていると思う。それはJRだけの話ではなく、ほとんどすべての組織に言えることではないだろうか。かといって、マニュアルを守らないと組織からスポイルされる。難しい世の中である。

[May 16 ,2014]