043 アイヌ民族はいない?と彼が言っていいかどうか [Oct 16, 2014]

「アイヌ民族はいない」とネット上で発言して騒ぎになっている札幌市議会議員がいる前にも書いたように北海道には格別の思い入れがあるものだから気になって調べてみたら、件の議員は私の高校の後輩だった(12年ほど下だが)。野田佳彦が泣くぞ!

ホームページでご本人の主張を読むと、民族という言葉の定義にかみつき、アイヌを先住民族と認めた国会決議にかみつき、アイヌ系の人々に道・市が行っている貸付のほとんどが焦げ付いていることにかみついている。

気持ちは分からないでもないが、この議員に欠けているのはおそらく「自分が正しいと思うことはすべて主張していい」と思っているところで、本来、社会人の最初の段階で身に付かなければならないことなのである。

ご本人の議論の流れをかいつまんで述べると、以下のようになる。(本人HPから転載)
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① 私がいないといったのは、アイヌ「民族」です。
② 「民族」とは言葉や宗教、文化、生活習慣などを共有し独自の権利を求める集団を指す言葉です。
③ 「民族」には「紛争」「対立」ということばがつきもの。
④ おとなりの中国ではチベット族やウイグル族への弾圧が問題となっていますが、
⑤ 日本でアイヌ族への弾圧などあるでしょうか?
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ということになるが、①は本人のステートメント、②は彼がそう思っているだけで客観的に認められた事実ではないし、③は彼独自の思い込み。④だって中国政府はそう思っていないだろうし、⑤は当のアイヌの人達がそう思っているから問題になっているのだ。いずれも、政治家のはしくれとしては慎重に使うべき言葉であった(今更遅いが)。

本人としては客観的な事実を積み上げて主張しているつもりなのだろうけれど、実際は「私はアイヌ人だけを優遇する制度は認めない」「彼らだけ税金を使ってけしからんじゃないですか!」と言っているだけなのである。昔なら「薄っぺらな正義感」と言われてしまうだろうし、おそらく地元では「よそ者が事情も知らずに余計なことを言うんじゃない」と思われているだろう。

また、国会決議では「日本の先住民族」とは言っていないと得意気に主張しているのだが(確かに「日本列島北部、とりわけ北海道」と書いてある)、だったら「すべて国民の税金が使われています」ではなく、道民・市民の税金と言わないと主張が一貫しない。

まあ、枝葉末節について言っても仕方ないのだけれど、要は、「その土地土地でデリケートな案件というものがあり、自分だけの浅い了見で声高に主張すべきではない」ということである。この人は、大学卒業後北海道に渡り、AIR DO(先代)の破たんで失業、地元マスコミで働いた後、みんなの党ブームで市議会議員となったがそこをやめて、現在は自民党会派に所属している。

この発言を受けて、所属会派からは脱退勧告を、市議会からは辞職勧告を受けている。当たり前である。本人は、「正しいことを述べると抹殺される札幌市議会。『差別』とレッテルを貼られて言論の自由さえ奪われる状況は、まさに民主主義の危機ではないでしょうか。」と言っているが、問題の本質が分かっていない。公職にある人間、税金でごはんを食べている人間には、言っていいことと悪いことがあるのだ。

プロフィールをみると生まれは兵庫県ということだが、兵庫県にだって言ってはいけないことがあり、そのことに使われている税金も札幌市とは桁が違う。京都や大阪もしかり。私自身がそうだったから分かるが、船橋を含む東京近辺は例外的にそういうタブーが少ないところなのだ。

あまり批判すると、かつてブログで叩いた永田議員のようになっても気の毒なので、最後に一つだけ。日本政府が北方領土を自国領と主張する根拠は1855年の日露通好条約であるが、それ以降も、アイヌの人達が狩りや漁をして暮らしていた北海道の山野を切り開き、生活の手段を奪ってきたのは明治政府である。北方領土とアイヌ民族問題は、いまだに北海道の現実の問題なのだ。

[Oct 16 ,2014]