053 Underdogのトランプ氏、逆転勝利の考察 [Nov 10, 2016]

昨日11月8日(日本時間9日)は、アメリカ大統領選挙の開票速報TVを午前中から見ていた。仕事があればそんなことをしていられないが、リタイアしたので思う存分見ることができる。開票速報が出るたびに、トランプ善戦からトランプ優勢に変わり、株式市場は大暴落、アメリカABCの選挙速報でも、誰も予想してなかったじゃないかと責任のなすりつけ合いをしているのが面白かった。

中継を見ながら、2つのことを考えていた。大統領選挙の総括についてこれからいろいろな人が言ったり書いたりするだろうけれど、それを読まないうちに、また忘れないうちに私の感想を書いておきたい。

ひとつは技術的なことで、なぜ事前の世論調査では2ポイントから5ポイント、クリントンリードだったのに、こういう結果となったかということである。

まず疑わなければならないのはそもそも世論調査の結果そのものが操作されていたということだが、ブックメーカーのオッズが1対5でクリントン有利であったので、それはありえない。ブックメーカーがオッズを出すということは、賭けが正当であったこととニアリーイコールである。

だとすれば、可能性は大きく2つ考えられる。ひとつは、世論調査の結果をみて、有権者の投票行動が変わったということである。日本ではそういう考え方をする人が多くて、おそらく今日(11/10)の新聞でもそういう主張をする記事があるだろうと思う。例えば、クリントン有利と思った人は油断して投票に行かず、現状に不満を持つ層がトランプに投票したというような考え方である。

しかし、世論調査を見て投票行動を変える人が最大5ポイントをひっくり返すことができたかというと、それはどうかと思う。日本でもそうだが、死票を投じることを嫌がる人というのは必ずいて、油断して行かなかったクリントン票がある一方で有利な方に入れるというクリントン票もあり、結果としてオフセットされてしまうからである。

だから私が考えたのは、ランダムサンプリングの方法に問題があったのではないかということである。日本でも世論調査や選挙の出口調査はランダムサンプリングにより行っているが、私はいまだかつて調査を受けたことがない。サンプリングの数というのは統計的に証明されていて、1%も調べれば、全体とそう変わることはない(理論的にはもっとずっと少ない)。

だから視聴率の数字も、数千、せいぜい2、3万のサンプルで数百万世帯の傾向を推定している訳であるが、それが正しいといえるのはあくまでランダム(無作為)にサンプリングが行われている場合だけである。

つまり、アンケートをしづらい人の集団がいるとして、それらをサンプルに含めていなければ、結果は当然違ってくる。今回もABCの出口調査で、大卒でない白人男性(よくそこまで聞けたものだが)の60%以上がトランプ氏に投票していた。これだけ偏るということは、そもそもそういう人達は世論調査の対象となっていなかったのではないかということである。

選挙速報を見ながら考えたもう一つのことは、Political Correctにはみんなうんざりしているんだなということである。

高学歴で若い時から専門職に就き、政府の公職を歴任してディベートも巧み、差別に敏感で民族・宗教間の融和を主張する候補者を選ばずに、女性や移民の人達への差別意識を隠さず、過去にいろいろな問題を起こした候補者を選ぶということは、有権者がそんなことを基準に投票しなかったということである。

つまり自分達を代表する指導者としては、金持ちで、恰幅が良く、女房が美人で、どでかいビルを持っている男が望ましいということである。あるいは、Political Correctなオバマ大統領の理想論は耳に快かったが、われわれの生活はちっとも楽にならないじゃないかということかもしれない。いずれにせよ、これからのアメリカが国内重視な内向きの方向性を持つことは間違いなさそうだ。

[Nov 10, 2016]