054 IR法案(カジノ法案)成立について技術的なこと [Dec 15, 2016]

会期末ぎりぎりの段階で、どさくさにまぎれてIR法案が成立した。まあ、与党も野党も身内に反対意見もあれば賛成意見もあり、正面切って議論もしたくなかっただろうから、こういう結末は仕方なかったのかもしれない。

ただ、今回の議論をみているとTVではブラックジャックやルーレットの画面ばかり映すし(なぜバカラ卓を映さない?)、依存症や治安の悪化ばかり問題にしているのだけれど、もっと技術的なことを議論してほしいと思うのは私だけではあるまいと思う。そこで、私が言ったところでどうなるものでもないが、いくつか問題点を指摘しておきたい。

本当をいうと、第一に議論すべきは賭博を認めていいのかどうかということなのだろうが、これについては深く立ち入らない。諸外国で認めている以上「絶対に認めてはならないもの」でないことは確かではあるが、かといって刑法で定めているから犯罪になるだけという見方もうなずけない。すべて自己責任でいいのなら、薬物だって禁止しなくてもいいことになる。

私が気になる技術的なこととは、カジノで何をすることができて、どこまで裁量(営業努力)が認められるかということである。もちろん、バカラは絞れるのかとかコンプはあるのか、VIPフロアはあるのか、カードはBeeなのかNintendoが復活するのかとかも気になるのだが、こういうことを言うとふざけていると思われるので、あえて言わないのである。

法案を読む限り(反対意見の人も含めて、みんな法案は読んでいるのだろうか?)、ゲーム賭博とスロットマシンは想定されているようなのだが、その範囲はあやふやだし、内容によってはかなり刺激的なものとなるかもしれない(話は変わるが、「カジノ」なんて日本でしか通用しないカタカナ言葉を法案に使うセンスはいかがなものであろうか)。

まず、ゲームができないカジノはないだろうから、ルーレットやBJ、バカラなど「客対カジノ」のゲームは認められるとして、同様に「客対客」のゲームを認めるかどうかである。というのは、例えば富貴三公や牌九、トーナメントポーカーを認めるとすると、それらと手本引き、賭け麻雀の違いはどこにあるんですかということである。

「客対客」が認められれば、ゲームの種目は国ごとに違うから、私が「カシノ・オーストリア」のマーケティング担当なら、日本人になじみの深い「麻雀」の導入を考えるだろう。同じ賭け麻雀も、カジノに行けば合法で街の雀荘ならお縄になる。結構難しい問題である。でも、「客対客」が認められないと、カジノの魅力は半減する。

カジノでおおっぴらに賭け麻雀ができるようになると、全国の雀荘が壊滅するかもしれない(麻雀人口の激減により、もうすでに壊滅しているかもしれないが)。同様に、スロットマシンが合法化されると全国のパチンコ店はかなりの打撃を受ける。警察は黙っているのだろうか。もちろんカジノができればOBの天下り先になるが、IRは全国各地にはできないだろう。

個人的にたいへん興味があるのは、スポーツブックとキノが認められるかということである。スポーツブックが認められると、これまで非合法賭博の代名詞だった相撲とプロ野球(甲子園も!)に賭けることができるようになるかもしれない。個人的には大相撲のハンデが出たら面白いと思うが、きっと無理なんだろうなあ。せいぜい競馬や競輪、ボートの場外売場が併設されるくらいだろう。

宝くじの売場は当然できるとして、抽選が週に2回位しかないとなるとカジノには向かない(それまでに外国人観光客は帰ってしまう)。2時間に1回くらい抽選のあるキノを導入すればライトファンは食いつくだろう。しかし、商品内容が宝くじと同じだし、totoやBIGとも競合するから、総務省や文科省から文句が出ることは避けられない。

そういった懸念材料を除いていくと、初期のテニアンのように、スロットマシンとルーレット、ブラックジャック、バカラ、カリビアンスタッド(テニアンではパシフィックポーカーと呼んだ)だけということになるのかもしれない。それでも多くの日本人には目新しいだろうし大陸客は来るだろうけれど、長い目でみれば飽きられるだろう。

もし数年後に売上が伸び悩んだとして、私が「カシノ・オーストリア」のマーケティング担当なら(しつこいw)、何を売るかに制限をつけるな、対面だけでなくネットで売らせろと言うだろう。そして、ついに日本のカシノで手本引きが導入され、ネットでスポーツブックが買える時代が来るのである。

IR法案では、こういった点をすべて「別に法律で定める」としているのであるが、どうせ別に定める法律だって「別に政令で定める」だろうし、結局は省令になり担当課を通り越して担当者がオールマイティになるのだろう。個人的にはそういった点がたいへん気になるのだけれど、多くの人達は決まってしまえば後は御上がよきに計らうと考えているのだから、仕方がないことなのである。

[Dec 15, 2016]